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②パネルディスカッション    [3]阪神大震災で欠陥が露呈し勝訴した事例 岩城 穣(大阪・弁護士)

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阪神・淡路大震災10年目の検証
② パネルディスカッション
[3]阪神・淡路大震災で欠陥が露呈し勝訴した事例
(神戸地判平成9年8月26日・消費者のための欠陥住宅判例第1集38頁)
弁護士 岩城 穣(大阪)

1 本件は、全国ネットの第4回大会(東京・平成9年11月)で、大阪の秋山謙二郎弁護士が報告した事例である。阪神・淡路大震災では6000人もの人が 亡くなり、その大部分が建物の倒壊によるものであったにもかかわらず、戸建て住宅で裁判になった事例は、これしか見当たらなかった。

2 原告は、完了検査も経ていたこの住宅(木造瓦葺き2階建て)を、平成5年11月に8750万円で購入したが、大震災で倒壊した。倒壊状況は、建物の1 階部分が平行四辺形状に北西方向に30~40センチ傾き、1階部分が倒壊。特に北西の隅柱と土台の仕口が大きく破壊され、他の全ての柱が土台から引き抜か れ、耐力壁を構成する筋交いが有効に働かず倒壊した。

3 判決は、倒壊の原因は、1階部分の「柱と横架材の仕口の結合」及び「筋交いと横架材の結合」が、「施行令を具体化」した公庫仕様に反し性能不足であ り、これに1階の東西の間仕切り壁の不足及び配置のバランスの悪さが加わったことにあると認定し、約5200万円の請求に対し、建物代金相当額、仲介手数 料、弁護士費用の損害として約4500万円を認容した。

4 被告は、①公庫仕様書は住宅金融公庫が融資の条件として設定している独自の基準であり、一般家屋に対し、何ら法的規制力を有しない、②阪神大震災は震 度7という未曾有の大地震であり、本件建物の倒壊は建築工事の不備に起因するものではないなどと主張したが、判決は、①につき、「一般的には、木造建物を 建築する場合、公庫仕様に基づいて精度を確保するという手法がとられている」、公庫仕様は「施行令を具体化」したものであるとし、また②につき、倒壊の原 因は上記のような欠陥にあるとして、被告の主張を採用しなかった。

5 本件では、倒壊した建物が片づけられる前に一級建築士が「倒壊調査報告書」(平成7年7月16日付)を作成しており、裁判ではこれが決定的な役割を果 たした。震災後の火事や避難生活、復興優先の中で、このような原因調査や証拠保全がなされる例は極めて少なかったのではないかと思われる。それでも、倒壊 した設備や家具等については、証拠がないとして排斥されているのである。

6 秋山弁護士によれば、本件は控訴審で、被告に金がないことを理由に、わずか1000万円で和解に応じざるを得なかったとのことである。裁判で認められた正当な賠償さえ得られないというのは、震災の二次被害といっても過言でないであろう。
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