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◎マンションごと建て替え請求事件の続報 幸田雅弘(福岡・弁護士)

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マンションごと建て替え請求事件の続報
弁護士 幸田雅弘(福岡)

1 事件の概要
本件は、福岡県の開発会社が販売した2棟建てのマンションについて、構造計算のミスを理由にマンションごと建て替えを求める事件である(請求の内容や構成は第18回金沢大会の報告を参照されたい)。
本件マンションの構造計算書では、建物荷重を計算する際に、パラペット・バルコニー・階段などの荷重を落としたり、仕上げ荷重を軽く見たりして、荷重 を15%ほど少なめに計算している。それだけではない。2次設計段階の地震用荷重が1次設計段階の数値より意図的に11%削減されている。これは、構造計 算書の前半と後半が別の計算書であり、途中で二つの構造計算書がつなぎ合わされているのである。
適正な荷重計算をして構造計算をしたところ、1次設計段階(許容応力度計算)でほぼ全ての梁と柱でNGが出た。2次設計(保有水平耐力)でも、X方向で必要保有水平耐力を満たしていないし、X方向の揺れで柱にヒンジが発生するなどの欠陥が見つかった。

2 訴訟の進行状況
裁判では、構造計算が争点である。現在までに、住民が1級建築士に依頼して作成した構造計算検討書と、建設会社が販売会社に提出した構造計算検討書、 設計会社が第三者(実は、構造計算の実務を担当した会社の後継会社)に依頼して作った構造計算検討書、販売会社が独自に作成した構造計算検討書の4通の構 造計算検討書が提出された。
設計会社の構造計算書は、荷重の拾い落としを若干修正したものであるが、逆に屋根荷重を0にしたり、階段やEV壁を別構造のものとして荷重計算から外 すなど様々な工夫をしている。しかも、地震用層せん断力を1.25倍に割増をすることについて「割増を求めている東京都条例はあくまで行政上の運用指針で あり、法令上の基準ではない」と主張して、層せん断力係数を1.25から1に変更し、その結果、「構造計算上問題はない」という結論を出している。
販売会社の構造計算書は、さすがに荷重計算は適正計算に近づいた。しかし、設計会社の構造計算と同じように層せん断力係数は1を採用。結果として、大 梁で許容応力度を超えてNGが出る部材があることを認めたが、「許容応力度不足は最大で21%、平均で5%程度であり、梁から1m程度のスラブ筋の存在を 考慮すれば、配筋が不足することはない」などと反論している。

3 訴訟の課題
本件マンションは東京都の指針に適合している一般的なマンションとして設計され、一般的なマンションとして売られていたのであるから、後になって「あ れは基準ではありませんでした」という言い訳はおかしい。この点を裁判所によく理解させることが必要であると考えている。販売会社と設計会社は、「全面建 て替えではなく床と小梁を補修すれば足りる」という作戦である。基準を引き下げ、不完全な補修で責任軽減を図ることを許さず、早期に判決を求める戦いをす る予定である。

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