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住宅品質確保の促進等に関する法律案 齋藤拓生(宮城・弁護士)

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住宅品質確保の促進等に関する法律案
斎藤 拓生(宮城・弁護士)

一 法律案の目的
建設省では、平成11年4月、住宅品質確保の促進等に関する法律案を国会に上程しました。
同法案は、①性能表示制度、②瑕疵保証制度、③紛争処理機関を創設し、「住宅の品質確保の促進、住宅購入者等の利益の保護及び住宅に係る紛争の迅速か つ適切な解決を図り、もって国民生活の安定向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」です。

二 各制度の概略と問題点
1 性能表示制度
性能表示制度は、遮音生や耐久性等の性能に関する判定方法、それらの性能を広告や契約書等に表示する際の共通ルールを設定し、消費者が住宅の取得にあたって的確な選択を行えるようにするものです。
性能評価機関を設置し、性能評価機関の検査に合格した場合に限り、性能表示を行うことを許されます。
性能表示の具体的内容等については、法律成立後に、政省令で定めることになりますが、消費者保護の観点からは、性能表示の内容自体が理解しやすいものであること、性能の有無についての判断基準が客観的かつ明確なものであることが必要不可欠となります。

2 瑕疵保証制度
新築住宅の基本構造部分(基礎、柱、床等)については、請負契約と売買契約とを問わず、完成引渡しから10年間の瑕疵担保責任の規定が新設されます。
瑕疵担保責任の内容としては①修補請求(現行法上、売買契約については、明文上、修補請求は認められていませんが、今後は、建売住宅についても、修 補請求が可能となります。)、②損害賠償請求、③解除(売買契約についてのみ、修補不可能な場合に限って認められます。)。
当初、瑕疵保証制度については、一定の欠陥現象が発生した場合に、構造上の瑕疵の存在を推定し、請負人ないし売主が瑕疵の不存在を立証しない限り、 瑕疵担保責任を負わせるという瑕疵推定制度の創設が予定されていました。しかしながら、住宅建設業界からの強力な反対があり、制度の創設は見送られてしま いました。
これまで、欠陥住宅被害者が欠陥を立証することが困難であるがゆえに、十分救済されないでいただけに、瑕疵推定制度の創設が見送られてしまったことは極めて残念であり、制度の価値が半減してしまったといっても過言ではありません。
今後、瑕疵推定制度の実現のための国民的運動の構築が望まれます。

3 住宅紛争審査会
性能表示制度を利用した住宅についての紛争については、専門的な紛争処理機関として、住宅紛争審査会が創設されます。
住宅紛争審査会を利用することができるのは、性能表示住宅に限られます。性能表示を行わなかった住宅は、建築紛争審査会を利用することはできません。
建設省としては、弁護士会の同意を前提として、弁護士会に住宅紛争審査会を設置することを構想していますが、弁護士会が、欠陥住宅被害者の救済のた めに不十分な住宅性能表示・保証制度を前提とする住宅紛争審査会の主体となることによって、弁護士会が、欠陥住宅被害を結果的に追認するという事態になる ことが懸念されます。
住宅紛争審査会の主体となる弁護士会には、欠陥住宅問題が業者と施主ないし買主との知識・情報についての力量の格差に起因する消費者問題であることを強く自覚したうえでの取り組みが求められます。

三 今後の課題
住宅品質確保の促進等に関する法律案については、瑕疵推定制度が削除されており、欠陥住宅被害救済のためにどの程度昨日するか全くの未知数です。しか し、欠陥住宅問題に正面から取り組もうとする我国初の法律であり、われわれとしても、欠陥住宅被害根絶のための制度として機能するよう、今後の制度の運 用、政省令制定作業について、積極的に発言していくことが必要と考えます。  以上

(欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第1号〔1999年5月20日発行〕より)
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