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勝訴判決の報告   (3) 宅地の売主である市に賠償責任認定(前橋地裁沼田支部平成13年3月14日判決) 樋口和彦(群馬・弁護士)

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樋口和彦(群馬・弁護士)

原告の建物所有目的借地が市道新設用地として買収されたため、 原告は代替地として被告N市から本件土地を2445万円で買い受けた。 その際、 被告は本件土地が地耐力8tであるとの説明をした。 原告はここに木造建物を新築したが、 その後、 床の揺れ、 建具の不具合等が発生し、 その原因として地盤沈下が発見され、 その後も沈下が続き平成11年10月時点で最大で21㎝の不同沈下が確認され、 さらに進行中であった。
原告は被告に対処を求めたが、 被告は束と束石の間に楔を入れて隙間を埋めたり、 U字溝の蓋を束石として設置するなどの対処療法をするばかりであった。 原告は根気強く交渉を求めたが、 被告は 「家を建てれば沈むのは当たり前」 等と言い、 被告の実施した地耐力調査は 「サービスで行ったもので受けた本人が調査して対処するべきで」 あるから地耐力に関する被告の説明を信じた原告に責任がある、 あるいは建築業者の責任であって被告には責任がないと言い放った。 それでも漸く住宅補修の議題にまで行き着いたが、 建物をジャッキアップし杭基礎等による地盤補強策の採用が必要との原告の主張に対し、 被告はジャッキアップし基礎と土台との隙間をモルタルで補填するという、 不同沈下進行が停止したことを前提としなければ役に立たない案に固執した。 最後には、 「地盤の改良が必要である事を推定し設計を行いまして金額を出しましたのでその金額を提示」 するとして約420万円の支払を申し出た。 この金額の根拠を聞くと、 「原点に戻る」 ということであり、 「原点に戻る」 とは土地の売買時点、 すなわち家を建てる前に戻って、 地盤を補強するに必要な金額、 つまり更地だとした場合の地盤補強費用だというのである。
このようなやり取りを実に4年間も強いられて、 遂に原告は地盤補修工事費用等2552万円及び慰謝料1000万円を請求して訴えを提起した。

判決は、 本件土地が城の堀の埋立地であったことを知っていた被告としては、 事前地質調査を十分に行い、 その結果を買主に説明すべき信義則上の義務があったのにこれを尽くさなかったとして、 債務不履行ないし不法行為による賠償義務を肯定した。 被告N市は、 試掘調査での1地点調査終了時に、 原告が 「もう、 いい。」 と言ったとか、 被告職員が原告に対し、 「建築に際しては施工業者等に相談して下さい。」 と言ったのだから被告に責任はないと主張したが、 判決はそのような発言の存在を否定し、 仮にそのような発言があったとしても被告の説明義務違反に影響はないとした。 施工業者等に過失があるのだから被告に過失がないとか因果関係がないとの被告の主張も、 被告の義務は施工業者等の負う義務に左右されず、 仮に施工業者等に過失があったとしても被告の過失と原告の損害の因果関係は否定されないとした。
原告は被告による証拠捏造ないし証拠隠しを指摘し、 「恐ろしいばかりの不誠実かつ大胆不敵な応訴態度」 と批判したが、 判決はこれには直接触れず、 交渉時の被告の誠意の無さも考慮して慰謝料につき請求額1000万の1部200万円を認容し、 かつ、 訴訟費用は全額被告負担とした。
本件は、 判決が控訴されずに確定し、 市長が原告方に赴いて謝罪し、 終了した。
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