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勝訴判決の紹介と獲得のポイント   (4) 鉄骨造3階建て建売住宅で取壊建替を認めた事例(東京地裁平成14年6月17日判決) 河合敏男 (東京・弁護士)

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弁護士 河合 敏男(東京)

1 事案
本件は, 鉄骨ラーメン構造3階建ての建物として売り出された建売住宅ですが, 柱, 梁に使用されている鉄骨の断面寸法が, 確認図面上の寸法の半分以下の材料 (例えば200㎜×200㎜の角形鋼管が使用されるべきところ100㎜×100㎜が使われている。) が使用されており, 当然のことながら剛接合もなされておらず, 柱梁で囲まれたフレーム内に木製の枠を作りそこに木製の筋かいを入れるという, 信じがたい構造の建築物の事案です。 また防火地域内の建物であるにもかかわらず耐火建築物になっていません。 最初は, 「揺れる」 という相談からきたものですが, 偶々工事中に近所の人が撮っていた鉄骨フレームの写真が手に入ったことから, 上記構造欠陥が明らかとなりました。

2 判決
裁判所は, 建売販売業者に対しては瑕疵担保責任に基づき, 建築施工業者に対しては不法行為責任に基づき, 連帯して, 取壊建替費用相当の損害金等として約3000万円の損害賠償の支払いを命ずる判決を下しました。

3 感想
本件は, 取壊建替費用の損害賠償が認められるべきことは当然でしょう。 しかし, 本件に限らないことですが, いつも経験することは, どんなにひどい欠陥建築物であっても, 必ずこれを擁護する業者側の建築士が登場し, とんでもない証言を行うことです。 本件では, さすがにそのままで安全だとは言わなかったのですが, 補修案を提案し, これに構造計算書を証拠につけて, 補修によって安全性を回復できると主張してきました。 ところが, その構造計算書を見ると5つもエラーメッセージが出ており, むしろ危険性を立証しているような証拠であって, 首をかしげていました。 その訳は同建築士の証人尋問で判明しました。 同構造計算書は, 最終頁に, 「№」, 「エラーメッセージ」 という項目名の表示があり, その下に5行にわたって, 1~5の番号とエラーメッセージの内容とが記載されているのですが, 同建築士は, 項目名の 「№」 (ナンバー) を 「NO」 (ノー) と読み違えて, 「ノーエラーメッセージ」 と読んでいたのです。 この程度の建築士でも, 一級建築士の資格をもって実務に携わっているのですから恐ろしい限りです。
証人尋問後, 同建築士は弁解の陳述書を出してきて, 構造計算上はアウトになっているが, 保有水平耐力の計算では最低基準の90%の耐力は出ており, この程度の耐力不足ならば十分安全域の範囲内であるとの意見を出してきました。 滅茶苦茶な意見ですが, こんな意見でも万一裁判官が信じてしまったら大変なことになるので, 反論は必要なのです。 しかし, この 「滅茶苦茶」 を, 理論的かつ客観的に, しかも素人である裁判官 (物理学の素養は中学生程度と思えば間違いありません。) にも分かるように説明するというのは, かなり大変な作業です。 このような馬鹿馬鹿しい技術論に対しても真正面から反論していかなければならないということが, 欠陥住宅紛争が難しいとか大変だとか言われる理由の一つのように思われます。

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