阪神・淡路大震災10年目の検証 ② パネルディスカッション [2]欠陥住宅問題に関する成果と課題 |
一級建築士 萩尾利雄(神戸) |
■ 住宅相談に関する概要 ① 大震災直後 宅地に関する相談が多くありました。隣地境界線問題、擁壁の安全性、道路の再建。 借家の権利に関する問題。滅失鑑定、裁判。 私道整備助成制度を活用した道路の再建問題と2項道路の中心後退違反。 震災直前の建売住宅の鑑定=解体撤去後の依頼。写真による鑑定作業。 木造3階建て住宅のゆれ問題。 粗製濫造とも思える住宅建設が行われ、内外装仕上げに関する問題が発生。 ② 3~6年後 工務店の倒産に関する相談が発生。工期の遅れ、契約内容。 粗製濫造の結果か、震災以降に建った建物の構造躯体に関する相談が増えた。 この頃から相談件数が増えた。 ③ 最近 大震災以降に建てられた建物の相談が大半を占める。 鉄筋コンクリート造の耐震3方スリット問題に代表される新たな問題の発生。 土壌汚染問題。 大震災被害の修繕工事に関する瑕疵工事。 中古住宅に関する相談。 ■ 法律の整備(社会背景と相談内容) 大震災後に建設された建物の不具合が顕在化しつつあります。免振構造、耐震スリット等の新しい工法に関する不具合。リフォーム工事に関する不具合、悪徳 訪問リフォーム、耐震補強工事等過去には経験していない問題が発生しています。対応策が研究課題としてあげられます。 予防的処置を目指して神戸NETは様々な提案をしておりますが、効果が期待できるには時間がかかります。行政との連携でその効果波及を模索しております。 ■ 反省 急ぎすぎた解体と再建。 大震災直後の公費解体が、補強で再建できる建物まで解体してしまったと考えています。 各地からの応援工務店の仕事にも問題は発生しました。発覚した瑕疵工事に対する対応の悪さには問題があります。 本来住宅建設は地場産業であるべきものと考えます。ハウスメーカーも全国均一の設計と地元のフランチャイズ工務店制度が欠陥を生む要因の一つであるように、他の都市からの応援工務店の工事には、無責任な点もあります。 地元に密着出来ていなかった。 コミュニティーアーキテクトの立ち上げ時の反省です。 建築士は、地元に足を置くことから始めなくてはならない。 応急危険度判定。 阪神淡路大震災の反省から、判定基準は整備されていますが、当時は基準が不明確で混乱しました。証明書がその後の再建のあらゆる分野で活用され、不公平を生んだ可能性があります。 大震災直後の混乱の中での活動を通じての反省をもとに様々な取り組みをしてきました。 欠陥住宅の相談に関しては、建築士・弁護士の実体験の情報を集約し、勉強会を通じて相談を受けれる人材の裾野を広げることが課題であると思っています。 又、相談を業務と考え、事務所の経営が可能な報酬が得られるような環境を作ることが今後の課題とも考えています。 |
②パネルディスカッション [2]欠陥住宅問題に関する成果と課題 萩尾利雄(神戸・建築士)
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