阪神・淡路大震災10年目の検証 ② パネルディスカッション [6]著しい完了検査率の向上 |
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堺市建築都市局開発調整部指導監察課 石黒一郎(大阪) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||
阪神大震災以降10年を経て、確認検査の状況は大きく変化した。とりわけ、完了検査率の向上は大きなものがある(次ページ表、グラフ参照)。 この要因は、平成10年の建築基準法改正を契機に、「安全安心計画の策定」が国土交通省より通知されたことにあると思う。 この通知は、阪神大震災の被害や欠陥住宅の実態に、建築基準法の実効性が確保されていないことが大きくかかわっていることを指摘したものであり、法の実効性の確保に向け、目標値の設定など具体的な指示もしたものである。 この通知を踏まえ、各都道府県や政令市などでは「違反建築防止推進会議」などが業界関係者を含めて結成され、「安全安心推進計画」が策定されるなど取 り組みがすすめられてきた。当日には言及できなかったが、こういう行政の姿勢によって状況が大きく変わるのが建築業界の実態ではないだろうか。 こういう変化の担い手として、民間確認機関が存在することは間違いない。その存在を前提に、大阪では中間検査対象建築物の拡大などがすすめられてきている。 しかし、こういったいわば「量的な変化」が、工事監理の実施など「質的な変化」をうみだしているかというと、はなはだ疑問である。 「工事施工の実態を踏まえない確認を取るためだけの図面」「数字あわせの図面」「規制の最低限をぎりぎりクリアするだけの図面」は未だに存在するし、工 事監理とは名ばかりの「検査立ち会い」「代願」も多く存在している(「検査立ち会い」が加わっただけでも大きな変化だが)。 現在の状況が続けば、今後も完了検査率は上昇するだろうが、一方で検査が形式的通過儀礼になっていく危険性に注意を払う必要があるのではないだろう か。また、建築行政においては、検査の現場が減っていく中で、現場を知らない職員が増えてきている。その中で形式的行政が進められる可能性を危惧するので ある。 何よりも「住まい手」が安心できる、安全で快適な建築物が競い合って提供される状況をどうすれば作っていけるのか残された課題は未だ多いといわざるを得ない。 6,000名を超える人命を失った阪神淡路大震災から10年を迎えました。 この震災では、建築物の安全の面から様々な問題が提起されました。その問題から建築行政は何を学び、そして、その問題に対しどう対策をたて、どう実践してきたのか振り返り検証しようと思います。
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②パネルディスカッション [6]著しい完了検査率の向上 石黒一郎(大阪・堺市建築都市局)
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