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◆特集その2・耐震偽装問題  2.緊急シンポジウム「耐震偽装問題と被害救済」の報告 河合敏男(東京・弁護士)

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【特集その2・耐震偽装問題】
2.緊急シンポジウム
「耐震偽装問題と被害救済」の報告
弁護士 河合敏男(東京)

平成18年2月18日、東京の建築家会館で、「耐震偽装問題と被害救済」のテーマで、ヒューザー物件であるグランドステージマンションの住民を中心と した緊急シンポが開催された。当日は、首都圏の計15棟から131人の住民が参加し、会場からも多くの意見が出され被害救済の具体策について活発な議論が 行われた。

パネルディスカッションは、被害者代表としてGS稲城とGS藤沢から各1名、本田純一氏(中央大学大学院教授・専攻民法)、松沢陽明氏(弁護士・日弁 連行政訴訟センター委員)、藤島茂夫氏(建築士・関東ネット幹事)の外、私河合も加わって6名で行なわれ、吉岡和弘全国ネット幹事長(弁護士)がコーディ ネーターとなって進められた。

まず、GS稲城とGS藤沢の被害者住民代表からそれぞれ現状と問題点について紹介がなされた。GS稲城は、耐震強度0.33で、建替えを余儀なくされ ている。使用禁止命令に基づき、2月下旬には全24戸の転居が完了した。しかし、稲城市は、特定行政庁でないことを理由に財政支出を拒否し、最近漸く東京 都が代わって支援する旨の通知が来たところであって出遅れている。警察の告発対象物件として、証拠保全のため警察から住民による強度検証等にストップをか けられている。一方、マンション管理は原則住民の責任であると行政より通告されており、敷地内の不正浸入や事故防止対策の支出を余儀なくされている。GS 藤沢は、耐震強度0.15で、使用禁止命令に基づき退去した。全30戸中販売済み17戸(内入居者15戸)で、残る13戸の所有権はヒューザーであり、権 利関係を複雑にしている。建替えについて、専有面積を80%に縮小、追加負担2000万円との案が提示されているが、到底受け入れ不能である。どちらのマ ンションも住民達は先が見えない状態で、精神的、経済的に大きな負担を強いられている、とのことであった。

次に、行政訴訟に詳しい松澤弁護士から、国家賠償の可能性について意見が述べられた。国や県が確認検査機関を指定したことによって、国家賠償責任を負 うか否かは「指定」の意味が問題となる。「指定=行政権限の委任」と考えれば、委任した者が選任監督責任を果たしていない場合に限り、国家賠償責任を負 う。「指定=公権力を行使する公務員への任命」と考えると、確認検査機関の過失が認められるだけで国家賠償請求をする余地がある。公権力行使の「委任」は 国や地方公共団体といった行政機関内部で行われるもので、行政機関を構成していない民間に公権力の行使を「委任」するということは、「公務員への任命」の 意味を含むと考えてよいのではないか、との見解であった。

次に、ヒューザーの起こした国家賠償請求訴訟について、次の指摘があった。確認申請者(ヒューザー)の申請内容が偽りか否かは本来的に申請者の責任範 囲である。もちろん、申請内容が正しいか否かも建築確認でチェックされるが、これは申請者(建築主)のために行われるのではなく、建物使用者や近隣住民の 利益を守るためになされるものである。喩えて言うならば「自動車の運転者が自らスピード違反をしておいて、これを取り締まらなかった警察が悪い」と言って いるのと同じであり、申請内容の真偽はもともと申請者自身がチェックすべき事柄である。故に、ヒューザーは敗訴となる可能性が高い。

中央大学大学院教授本田純一氏は、銀行の責任について意見を述べられた。同教授によれば、ドイツの判例で、銀行が不動産購入者に融資するにあたり、購 入者が依頼した不動産鑑定士の「問題無し」との不動産鑑定評価を信用して融資を実行したが、同鑑定に大きな誤りがあり担保価値がなかったというケースで、 銀行の不動産鑑定士に対する損害賠償請求を認めたものがある。これは、「損害の原因を作り出した者は責任をとれ」との原則である。今回は銀行自身が担保価 値の鑑定を行っているケースであり、鑑定者に責任があるということならば、自ら鑑定した銀行に責任があるということになる。銀行は、担保評価義務を負って いるというべきであり、自ら担保価値の鑑定を怠っておきながら、その担保価値に問題があったときに、債務履行だけ請求して利益を取るのは信義に反するので はないか。このような考え方は、クレジット契約の抗弁権の接続の理論的根拠ともなっている。本田教授からは以上のような意見が述べられ、今後検討すべき重 要論点が提起されたといえよう。

藤島茂夫氏は、構造専門の建築士の立場から、構造設計の基本的なチェックポイントの説明とともに偽装された構造計算書の一例について解説された。藤島 氏によれば、壁付きラーメン構造の鉄筋の向きが常識では考えられない向きになっており、確認検査機関は、よく見れば見抜くことはできたはずだとの指摘がな された。

これまで「公的支援」という言葉が国や自治体の責任を曖昧にさせてきた。今後は国や自治体、更に銀行も相手として、「損害賠償」という観点から訴訟も視 野に入れた積極的な行動が必要となってくるのはないか。この緊急シンポは、そのような方向で住民が結束する大きなきっかけとなったと思われる。

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