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◆第4回欠陥住宅110番の結果について 神崎 哲(京都・弁護士)

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第4回欠陥住宅110番の結果について
弁護士 神崎 哲(京都)

1 はじめに
2005年6月30日~7月3日(長野は8月31日)、恒例の欠陥住宅ネット主催の第4回欠陥住宅110番が実施されました。
折しも、訪販リフォーム被害がマスコミを賑わしていたこともあり、「悪質リフォーム・欠陥住宅110番」というテーマで行われたところ、例年になく大きな反響がありました。
対象地域は南九州地域を除く全国43都道府県で、今回も多数の弁護士・建築士の方々にご協力頂きました。

2 全般的特徴
一般相談が180件(前回264件)、シックハウス相談が7件(前回16件)と減少しているのに対し、リフォームが376件(前回集計なし。前々回の 「欠陥住宅・シックハウス・リフォーム110番」では計299件中リフォームが31件)と驚くほど多く、合計件数は563件と前回(280件)から倍増し ており、欠陥住宅ネット主催110番としては最多の件数となりました。
以下では、件数の多かったリフォームと一般相談を中心に分析を試みたいと思います。

3 リフォーム相談の分析・特徴
注)括弧内数値はリフォーム相談中での占める割合
(1) 契約概要
【勧誘形態】は、訪問207件、電話1件、広告7件、その他44件と、予想どおり訪問勧誘が圧倒的に多いことが明らかになりました。
【契約内容】は、耐震補強110件、換気・防湿98件、屋根70件、害虫駆除29件、外壁24件、その他71件と、震災・腐朽等の対策を口実にしていると思しき類型が多数を占めています。
【契約時期】は、H17年93件、H16年60件、H15年45件、H14年35件、H13年18件、H12年10件、H11年7件、H10年5件と 最近の契約ほど多い傾向にあります。古い契約は相談を諦めることも考えられますが、近年のリフォームブームに乗って契約件数が増えているということもある でしょう。
【契約金額】は、50万円以下62件、50~100万円54件、100~150万円35件、150~200万円20件、200~300万円25件、 300~400万円21件、400~500万円11件、500万円以上37件と、150万円までの価格帯が多いわけですが、500万円以上の高額代金も決 して少なくありません。なお、「契約金額」とした関係上、次々商法の場合に金額が1契約毎か全契約計か、という問題もありそうです。
【支払方法】は、現金159件、クレジット42件と、クレジット利用が少ないことは意外でした。

(2) 契約書記載
【契約書記載事項】で欠如の多い項目を見ると、役務提供時期25%、代金支払方法等20%、担当者氏名12%となっており、クーリング・オフに関する各事項は25~50%程度となっています(%は記載の有無が判明している中での無記載の割合)。
必要的記載事項の欠如は、法定書面交付と認められずにクーリング・オフ期間が進行(開始)しないので、極めて重要な事項です。

4 一般相談の分析・特徴
注)括弧内数値は断りない限り昨年集計データの引用
(1) 相談対象建物
【建物種類】は戸建住宅77%(78%)、分譲マンション13%(12%)で9割を占め、【階数】では2階建が65%(63%)、3階建以上が28%(33%)で大多数を占めました。
【工法】としては、在来木造が54%(56%)、鉄骨造17%(17%)、RC造・SRC造が15%(11%)、ツーバイフォー7%(7%)、プレファブ・パネル工法5%(4%)でした。

(2) 契約概要
【契約形態】は、請負契約62%(53%)、新築売買契約32%(35%)、中古購入6%(7%)となっています。   【契約書】の存否は「なし」が10%(6%)と比較的低水準でした。
【設計】は、施工業者の設計82%、別の建築士の設計18%であり、【監理】では、施工業者の監理87%、別の建築士の監理13%で、独立した建築士の関与が低水準であることがわかります。

(3) 被害の具体的内容
【訴えている不具合】としては、雨漏り29件(61件)が相変わらず多く、壁の亀裂12件(31件)、床鳴り12件(18件)、建具の開閉不良11件 (22件)、床・壁の傾斜8件(21件)、結露・カビ8件(11件)、揺れ・振動7件(11件)、内外装の違約6件(8件)、上下水の不良6件(5件)と 続いています。
不具合現象が欠陥原因を正確に示すわけではありませんが、取得者ないし居住者が不満・苦痛を感じている現象として、雨漏り・クラック等が多いことは確かでしょう。

5 相談全般
(1) 事後フォロー
「電話相談のみ」で終わらせている割合はリフォーム相談49%、一般相談50%(61%)、シックハウス相談40%(38%)で、「継続相談」はリフォーム相談30%、一般相談36%(30%)、シックハウス相談0%(25%)です。
シックハウス相談は母数が少ないので必ずしも有意的な数値とは言えませんが、他については3割程度は引き続き対応を要する事案であったと言えるでしょう。

(2) アンケート
「110番をどうやって知ったか」については、テレビ131件、新聞116件、ホームページ3件、その他32件でした。やはり、マスメディアの効果は大きいと言えます。

6 総 括
(1) 今回は「悪質リフォーム110番」としての位置づけの110番と言ってよく、リフォーム業者の逮捕や高齢者をターゲットにした詐欺性等がマスコミで大々的 に報じられる中、心配になって相談された方が多かったようです。タイムリーなテーマということで110番自体もマスコミで取り上げられ、そのPR効果が絶 大であったことは、リフォーム相談のみで376件もの相談が寄せられたことに端的に表れています。

(2) 高齢者をターゲットにした詐欺リフォームは、潜在的被害が莫大な数に及ぶものと思われます。被害者が認知症等の場合に限らず、独居や高齢夫婦のみの世帯が 狙われる傾向にあり、点検商法・次々商法によって数千万円という新築住宅でも取得できるほどの巨額の被害事案も各地で報告されています。
築年数が古くなっているところに、地震による倒壊や蟻害・腐朽による朽廃の危険性で不安感を煽り、「『終の棲家』を守りたい」「我が家を残したい」と いった心理につけこんで、老後の蓄えを奪い去る卑劣な犯罪ですが、被害に気づいていないケースや、気づいていても他に相談できないといったケースが多いよ うです。その意味では、耐震診断・改修の施策の立ち後れも一因と言えるでしょう。
悪質リフォームは、今後も継続的に取り組むべき大きな課題の1つと言えるでしょう。

(3) 最後に、テーマ設定の重要性はもちろんですが、テーマを端的に示すタイトルの工夫も必要でしょう。
あくまでも推測ですが、今回リフォーム相談が多かったことは、タイトルの付け方の影響も少なからずあるのではないでしょうか。すなわち、2年前のリ フォーム110番では、「欠陥住宅・シックハウス・リフォーム110番」と最後に付け足しの感がありますが、今回は「悪質リフォーム・欠陥住宅110番」 と先頭で前面に打ち出しています。やはりリフォームに特化した相談という印象は後者の方が強いでしょう。このことは、「欠陥住宅・悪質リフォーム110 番」と後ろに回したタイトルで行った関西ネットで、一般相談47件、リフォーム相談37件という相談件数が逆転していることにも現れています。

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