本文へ


◎アメリカにおける建築被害予防の手法 亀井トム敏彦(元カリフォルニア州構造エンジニア協会副会長)

トップ > 欠陥住宅に関する情報 > ふぉあ・すまいる > ◎アメリカにおける建築被害予防の手法 亀井トム敏彦(元カリフォルニア州構造エンジニア協会副会長)

アメリカにおける建築被害予防の手法
亀井トム敏彦(元カリフォルニア州構造エンジニア協会副会長)

1996年に私が日弁連の米国インスペクター視察団の皆さんから伺った日本における欠陥住宅とその救済の実情は意外で信じられないようなことばかりでし た。あれから8年経過した今日、私の限られた観察ですが随分事情が改善されたように見うけられます。消費者、被害者の救済の方策もだんだん整備され定着し てきたことが見うけられ、更に進んで欠陥住宅の予防対策に目が向けられるようになってきたことは大変悦ばしいことであります。

アメリカには「欠陥住宅」という表現はありませんが、不具合の多い住宅は勿論多く存在します。しかし、欠陥の是正や修理が不可能なために住宅の建て直し を余儀なくされた事例は殆ど聞きませんが、地震のために建物が倒壊し、欠陥や手抜き工事が暴露された例はよく耳にします。アメリカには日本のような「欠陥 住宅」が少ないのは下記のような理由によるのではないかと考えられます。

先ずアメリカ(カリフォルニア)の住宅の構造は一般的に外壁はモルタル仕上のツーバイフォー工法で建てられ(中西部から東部にかけては煉瓦造の住宅が多 い)形状は箱型かその変形の型のものが多いため風や地震に対しては安定した構造になっています(最近では合板を取りつけた上に仕上をすることも要求されて いる)。またツーバイフォー工法では間柱の数が多く屋根や床による荷重に対しても余裕があります。そのため、開口部の量が限られた設計の場合には構造計算 をする必要がなく、ビルディング・コードによって定められた仕様に従い工事が進められるのであれば、木造2階戸建て住宅は建築士に依頼して設計図書を作成 しパーミットを取得してもらう必要もありません。但し、設計が複雑で不規則な形状になっているとか、梁のスパンが25フィートを超える場合とか、木材以外 の建材が混用されている場合(基礎のコンクリートを除く)には建築士の関与が必要になります。このような建築士の関与しない住宅の場合でも中間検査が徹底 しているので施工業者の経験や熟練の程度にかかわりなく充分な耐力が期待できるわけです。中間検査の内容とか回数はビルディング・コードによって定められ ており、検査官のOKがないと次の作業に取り掛かれない仕組みになっています。中間検査は建築主事かインスペクターが行い、適正地盤の確認、コンクリート の調合、水/セメント比、鉄筋量や被覆、木材の材質、緊結部の部品や釘のサイズや数に至るまでチェックされます。地盤に関してはボーリングや地質調査報告 書が用意されて居ればそれに従い、ない場合には簡単な器具を利用して検査官の経験に基づき不同沈下発生の可能性を判断します(ロスアンゼルス市では軟弱地 盤や地滑りなどに関する過去の経験資料が纏められておりそれを参考にする)。

上記木造2階戸建以上の規模の住宅でしかも鉄骨やコンクリートも設計に取り入れられるような建物は建築士に設計や監理を依頼することになりますが、不具 合が発見された時のライアビリティー(保証責任)のことを考慮して地質、構造、電気、設備などの専門知識と経験のあるコンサルタントを雇用するのが普通で あります。この場合には設計上専門家の知識や技量に頼ることになりますので、お互いに職業倫理を守ることが重要な要素となります。
例えば
イ)コンフリクト・オブ・イントレスト(各関係者同志の利害関係)
ロ)インテグリティー(誠実性)
ハ)プロフェショナリズム(プロ根性)
などの趣旨が各コンサルタントによって尊重されないとトラブルが発生し、欠陥住宅につながりかねません。そこでものを言うのは協会(下記を参照)の制裁とか訴訟の可能性でそれが無言の圧力となって秩序を保つことになります。

アメリカでは各職業または専門別に会員相互の親睦、技術の向上、職業倫理の徹底、社会的地位の向上などを目的とした協会が地域ごとに存在します。大抵の 協会では月例会が開かれ新しい技術の紹介をしたり、未経験者の為の技術の手ほどきをする多くのセミナーも開かれます。倫理規定の作成徹底も大事な機能の一 つであります。特に倫理規定の徹底には気を配り、とりわけ上記3項目の趣旨に従わないものは除名処分をうけることもあります。

私はよく「アメリカと日本とでは土壌が違う」と言うことを耳にします。確かにキリスト教やユダヤ教の考えが基本になっているアメリカの倫理観に基づいた 各システムと儒教や仏教の教えから生まれた日本の倫理観や生活習慣に相違のあるのは当然であり、上記のようなアメリカの方式は日本人には馴染めないと思わ れます。しかしそういう事情はさておき消費者、建築主が安心して快適な生活が出来るよう建築士や施工業者が良心的に工事を進めるのは当然のことであり今更 言うまでもありません。この数年間に欠陥住宅全国ネット会員各位の絶えざる努力のお陰で一般の理解も深まり欠陥住宅問題はこれからもますます改善されて行 くものと信じます。

ふぉあ・すまいる
ふぉあ・すまいる新着
新着情報
2021.10.05
第50回大阪大会開催のご案内(2021/10/16)
2021.08.20
【2021(令和3)年8月28日(土)】「欠陥住宅110番」開催のご案内
2021.04.15
消費者のための欠陥住宅判例[第8集]─住宅・宅地被害の根絶へ向けて─
2021.03.04
第49回仙台大会開催のご案内(2021/03/20)
2020.11.27
第48回奈良大会開催のご案内(2020/11/28)