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◎パネルディスカッション「問題鑑定にどう打ち勝つか!~具体的事例をもとに~」   [2]パネリストの報告     ③2審で私的鑑定書提出、現地検証・完全勝利和解 風呂橋誠(広島・弁護士)

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パネルディスカッション
問題鑑定にどう打ち勝つか! ~具体的事例をもとに~

[2]パネリストの報告

③ 2審で私的鑑定書提出、現地検証・完全勝利和解
弁護士 風呂橋 誠(広島・弁護士)

1、本件は昭和63年に広島地裁に提訴され、平成11年2月24日の1審判決を経て、広島高裁において平成15年3月27日に和解が成立した事案であり、提訴から最終解決までに約15年もかかった。

2、事案の概要は、まず建設業者が施主に対して約3800万円の請負残代金請求訴訟を提起し(第1事件)、次に、施主と契約していた設計監理建築士が 290万円の報酬残金請求訴訟を提起した(第2事件)。これに対し、施主は建物の構造・意匠・設備に関する126項目の瑕疵を主張して、相殺の抗弁や建築 士に対する損害賠償請求反訴を提起したものである。1審判決は、総額約528万円の瑕疵修補相当額を第1事件の未払残額3034万円から控除した約 2500万円と第2事件の290万円全額の支払を施主に命じた。しかも第1事件では請負残代金に「1日につき1000分の1」の約定違約金が、昭和63年 12月20日(施主側が相殺主張した日の翌日)から付されたのである。

3、本件では、瑕疵の有無とその補修費用をめぐって、1審で2度の裁判鑑定が実施された。いずれも瑕疵を主張した施主側が申し立て、費用も施主負担であった。
1度目の鑑定は、裁判所の職員である建築士が鑑定人として選任されたが、意匠面中心の鑑定のとどまり、構造面はほとんど触れられていなかった。このた め、施主側が構造面の専門家としてA大学の教授を指名して2度目の鑑定申請をしたが、それには建設業者側が反対したため、裁判所は別の鑑定人を探すことに した。そして、建設業者側の同意が得られたB大学の名誉教授が裁判所から鑑定人として選任された。しかし、その鑑定人は、いわゆる「もつ」「もたない」の 観点から、本件建物の構造安全性について「概ね問題ない」という判断を下した。例えば、設計図書では直径10ミリのJIS規格鉄筋が使用されるべきところ に鉄筋8ミリの再生鉄筋が使われていても、鉄筋の引っ張り試験の結果のみをもって、「両者の強度は大差ないから、再生D8鉄筋が混入していても構造的には 問題ないと思われる」などという鑑定手法であった。

4、1審判決は、B大学の教授の鑑定をほぼ採用し、控訴審でも、裁判官は施主側に対して「主張整理と立証がこれ以上できないのであれば結審します」と冷た い対応であった。この段階で、施主側から相談を受けた広島欠陥住宅研究会が弁護士・建築士でチームを作り、構造面を中心とした主張・立証を行うことになっ た。特に、前述の使用鉄筋の違いに着目し、D10鉄筋を前提としたピッチのままD8鉄筋が使用されていれば構造計算上「OUT」になる旨の私的鑑定書を提 出した。
これに対し、施工業者は、「再生8ミリ鉄筋が一部混入しただけ」と言い、高裁裁判官も、裁判鑑定に影響され、「8㎜の鉄筋でも強度的にさほど変わら ず、一部で構造計算上アウトになっても建物全体としては安全性に問題はないのでは?」と発言する始末であった。
そのような裁判官に対し、粘り強く建築基準法の歴史的意義(「最低限の基準」であること)や欠陥の判断基準(「もつ」「もたない」ではなく、客観的で なければならないこと)について繰り返し説明したところ、本件建物に使用されている鉄筋の直径が10㎜か8㎜か、そのピッチはどうなっているのか、につい て裁判所が現地で検証することになった。さらに、検証当日、建物の1部屋分の天井コンクリートをはつり取り、縦横の鉄筋をむき出しにした上で、その直径を 施主側と施工業者側の技術者が交互に測定したが、その測定数値がかなり違ったため、突然、裁判官が自ら脚立にのぼって鉄筋の直径を実測し始め、「すべて8 ㎜鉄筋である」と確認する、と一幕もあった。

5、本件では、施主側の主張・立証の結果、裁判所から「良くここまで立証されました。裁判所としては心証をとれましたので和解を勧めます」という言葉を頂いた。
本件では、反訴の当事者適格に問題があり、施主側の反訴請求認容は困難という事情があったため、裁判所の勧めで、両事件とも「ゼロ和解」という和解が成立したが、これは実質的には、施主側の主張が認められた完全勝利和解といえるものであった。

6、本件では、①1度目の鑑定で構造の専門でない鑑定人が選定された点、②裁判鑑定と言いながら、その瑕疵判断の基準が鑑定人の「もつ」「もたない」とい う主観的・恣意的判断に陥った点、③相手方の同意が得られなければ鑑定人が決められなかった点、④鑑定のための調査事項が削減されても鑑定費用は当初見積 のままであった点など、様々な問題点があった。
本件が、今後の課題として、①真に「適切な鑑定人」をどうやって裁判所に供給するか、②裁判鑑定の判断基準をいかに明確かつ客観的なものにするか、③鑑定費用の公正さをどうやって担保するかなどを検討する契機となれば幸いである。
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