勝訴判決・和解の報告 [2]基礎底部のかぶり厚不足などの欠陥がある住宅について 基礎の取り壊し再施工の補修費用等の損害賠償を認めた事例 (仙台地方裁判所平成17年3月24日判決) |
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弁護士 鈴木 覚(仙台) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ⅳ コメント 1 判決分析(意義・射程・問題点等) ① 瑕疵の判断基準については、「被告は、本件建物は、平成15年5月26日の三陸南地震及び同年7月26日の宮城県北部地震に遭遇しても、基礎部分にひ び割れや沈下も生じなかったと主張するが、本件建物の欠陥の有無は、建築基準法及び同法施行令等の規定が定める要件を満たしているか、当事者が契約で定め た内容、具体的には、設計図書等に定められた要件を満たしているか、公庫融資対象の建築物では、公庫仕様書が定める基準を満たしているか、建築確認時にお ける我が国の標準的な技術水準を満たしているか、という見地から判断されるべきであり、仮に被告主張のとおり地震による被害が生じなかったとしても、これ により前記技術水準に違反した欠陥がないと判断することはできない」と判示しており、評価できる。 ② 本件建物の基礎にはクラックや不同沈下等の具体的な欠陥現象は生じておらず、被告も、上記のとおり平成15年の大きな地震でも不具合を生じなかったこ とを強調したが、裁判所は、そのような被告の主張を排斥して基礎底盤の厚さ・幅の不足及びかぶり厚さ不足、捨てコンクリート不施工の欠陥を認定したもので あり、極めて正当な判示である。 加えて、かかる基礎の欠陥に対する補修方法について、被告から依頼を受けた私的鑑定人の建築士が、耐震補強方法の例を引用して「べた基礎」化する方法 を提示したのに対し、本判決は、原告の主張する補修方法を採用し、「証拠並びに弁論の全趣旨を総合すれば、本件建物を基礎上部から持ち上げて移動させ、作 業空間を確保した後、既存の基礎部分を解体し、地盤を十分締め固めた上、新たに布基礎を再施工するのが相当であり、その基礎の再施工時に、併せて防湿処理 の施工も可能となり、その意味でも前記の方法を採用するのが相当である」、「被告側建築士は、既存の基礎をべた基礎にする方法を提案するが、この方法自体 に十分な実績があるとは認められないし、建物の基礎自体の本来の構造耐力を回復するには、新たに基礎を造り直すのが相当である」と判示した。 本判決における欠陥の認定と補修方法に関する判示内容は、基礎底盤のかぶり厚さ不足等の欠陥がある同種の被害事案において参考になろうかと思われる。 ③ 床下防湿処理の不施工の欠陥について、平成13年ころにシロアリが発生したことによるシロアリ駆除費用と床下換気扇設置費用の損害(いわば拡大損害である)を一部について、相当因果関係を認めてもらった点にやや特徴がある。 2 主張・立証上の工夫 ① 「消費者のための欠陥住宅判例」をフル活用し、被告の様々な主張に対して、そのような主張を排斥した判例を書証にて提出して反論した。 ② 裁判所の意向があって、裁判上の検証を実施。 検証時には、検証の順番等を記載した実施要領と原告の指示説明内容についての書面を用意し、指示説明の漏れがないように工夫した。 3 所 感 被告から控訴がなされている。 |
◎勝訴判決・和解の報告 [2]基礎底部のかぶり厚不足などの欠陥がある住宅について、基礎の取り壊し再施工の補修費用等の損害賠償を認めた事例(仙台地方裁判所石巻支部平成17年3月24日判決) 鈴木 覚(仙台・弁護士)
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