勝訴判決・和解の報告 [2]解体・建て替えの必要を認めたものの 一部被告との関係では過失相殺を認めた事例 (大阪地方裁判所平成15年5月16日判決) |
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弁護士 鳥川慎吾(大阪) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ⅳ コメント 1 判決分析(意義・射程・問題点等) ① 過失相殺について 施工業者は、当初工事を請け負っていた設計会社から依頼されて請負工事を結んだ。その段階で、設計会社は、原告との間で設計監理契約を締結した。設計 会社と原告との間では、必ずしも建築確認どおりの施工としないことが合意されており、工事も、その合意どおり、設計会社主導のもとに進められたようであ る。その結果、判決は、設計会社代表者の関係を除き、5割の過失相殺を認めている。 しかし、確認申請と異なる施工となった項目のうち、原告が認識していたのは、基礎の杭打ち工法を採用しないこと、建ぺい率違反の問題が生じることだけ であり、そのような問題がなくても結論は変わらなかったはずである。判決自身も、補修を認めた理由の中ではこれらの点を重視していない。一般論としても、 建築基準法が最低限の基準を定めたものである以上、発注者が法令違反を承諾していたからといって、施工業者等の責任軽減を認めるべきではなく、特に本件で は過失相殺を認めるべきではなかったと思われる。 ② 名義貸し建築士 判決は、名義貸し建築士の責任を認めていないが、当初請負契約を結んでいた設計会社が自ら工事を行わないことになった段階で原告と設計監理契約を締結 しており、提出はされなかったものの設計監理者の変更届を作成して施工業者に手渡すことまではしていたので、やむを得ない判断だと思われる。 2 主張・立証上の工夫 瑕疵の主張・立証については、木津田建築士の鑑定意見書で十分であり、特に苦労した点はなかった。 ただ、請負人が変更されたり、設計変更の合意がされていたため、被告の責任を整理するのに苦労した。 3 所 感 和解を試みたところ、買取の話も出たが、時価で買い取るという話のため原告が納得せず決裂した。判決が出た後も交渉したが金額が折り合わなかった。判決は確定したが、損害額の回収ができておらず、今後の課題である。 |
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