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◎勝訴判決・和解の報告    [3]仲介業者の責任を認めた事例(大阪地裁平成15年11月26日判決) 鳥居玲子(福岡・弁護士)

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勝訴判決・和解の報告
[3]仲介業者の責任を認めた事例
(大阪地方裁判所平成15年11月26日判決)
弁護士 鳥居玲子(福岡)

Ⅰ 事件の表示(通称事件名:   )
1審判決
判決日 大阪地方裁判所 平成15年11月26日判決
事件番号 平成14年(ワ)第10035号 損害賠償等請求事件
裁判官 徳岡由美子
代理人 重村達郎、鳥居玲子
2審和解
和解日 大阪高等裁判所 平成16年3月5日
事件番号 平成15年(ネ)第3838号 損害賠償等請求控訴事件
裁判官 大阪高裁第2民事部
代理人 重村達郎、鳥居玲子
Ⅱ 事案の概要
建物概要 所在 大阪市旭区
構造 鉄骨造4階建 規模 敷地敷地85.78㎡、延面積163.79㎡
備考 中古住宅
入手経緯 契約 平成13年10月16日 売買契約 引渡 平成13年11月20日
代金 建物・土地併せて金2389万円
備考
相談(不具合現象) 建物の傾斜、排水の不具合
Ⅲ 主張と判決の結果(○:認定、×:否定、△:判断せず)
争点
(相手方の反論も)
(相手方の反論)
① 建物の傾斜が隠れた瑕疵に該当するか ×
② 売主が不法行為責任〔告知・説明義務違反〕を負うか ○
③ 仲介業者の注意義務の内容と注意義務違反の存否 ○
欠陥 建物の傾斜、排水の不具合のいずれも瑕疵であり、アンダーピニング工法による補修が必要であると認めた。
損害 合計 498万円/2380万円   (認容額/請求額)
A 代金 0万円/2380万円  瑕疵担保責任を認めなかった
B 補修費用 670万円/ 700万円  -30万円は買主が当初予定していた補修費用
C 転居費用
D 仮住賃料
E 慰謝料 0万円/100万円
F 調査鑑定費 10万円/10万円  相当因果関係あり
G 弁護士費用 45万円/80万円  相当因果関係あり
H その他 過失相殺として3分の1減額(B・Fにつき)
責任主体と法律構成 売主 瑕疵担保責任に基づく売買契約解除ないし損害賠償
不法行為(告知・説明義務違反)に基づく損害賠償請求
施工業者
建築士
その他
仲介業者
買主側:債務不履行責任(仲介契約)に基づく損害賠償
売主側:不法行為に基づく損害賠償

Ⅳ コメント
大阪地裁建築専門部で、仲介業者の説明義務違反を認める勝訴判決がありました。欠陥住宅判例第3集にも掲載されておりますので、併せて参考にしていただければ幸いです。
事案は、築後10数年を経過した鉄骨造り4階建ての中古住宅を購入後、住宅自体が著しく傾いていることが判明したというものです。売主側仲介業者の担当 者は、本件建物の床の傾斜を感じ取っており、建物そのものの傾きを指摘して購入を断る客がいたことを知りながら、床の傾斜の原因について調査を一切してい ませんでした。それにもかかわらず、担当者は、買主に対してその事実を一切告知せず重要事項説明書に曖昧な記載をし、買主側仲介業者の担当者に対し「水回 りの根太が腐っているために床がへこんだのではないか」と誤った憶測に基づいた説明をしていました。買主側仲介業者は、売主側仲介業者の誤った説明を鵜呑 みにし、買主に対して「おそらく、台所の水周りの床が、根太が腐って落ち込んだんでしょう」「根太をとって直せば直ります」との説明をし、これを信じた買 主は、売買契約を締結してしまいました。実際には、建物には1000分の20を超える傾斜がありましたが、買主がそのことに気づいたのは、購入して引渡し を受け、数ヶ月が経過してからでした。
買主は、売主と売主側、買主側それぞれの仲介業者を相手に訴訟を提起しました。売主がほぼ無資力であることから、仲介業者の責任を追及すべく、仲介業者 の調査義務違反、告知義務違反を強く主張しましたが、これまで、仲介業者の調査義務違反・告知義務違反を認めた裁判例は少なく、裁判所の判断が待たれまし た。
大阪地裁は、売主及び各仲介業者の告知・説明義務違反を認め、損害として約500万円の賠償を命じました。
売主側仲介業者については、建物の傾斜について疑わしい状況にあったものと認められ、このような場合、担当者としては少なくとも売主に対し、床の傾斜の 原因を尋ねたり、外観を目視したり、ボールを転がしてみるなどの簡易な手段により、建物自体が傾斜している事実を容易に認識できる可能性があり、かつその ようにすべきであったにも関わらず、これをしなかったとして、不法行為責任を認めました。
買主側仲介業者については、その担当者が、売主側担当者の憶測による意見を補強し、原告が建物傾斜に関する事実について客観的に正確に認識するのを妨げたとして、仲介契約上の注意義務違反を認めました。
しかし、買主にも、床の傾きについて売主本人に直接確認しなかった点において一定の落ち度があるとして、売主、各仲介業者らのそれぞれに対し、3分の1の過失相殺を行いました。
この判決は、売主の瑕疵担保責任を認めず、買主の過失とはいえないような落ち度をもって大幅な過失相殺を行っている点で問題がありますが、仲介業者の責 任については、仲介業の実情に配慮しながらも、きめ細かな事実認定の上で不動産のプロである仲介業者の責任を認めており、大きく評価できる判決といえま す。全体的に、売主、買主、仲介業者らの痛み分けともいえる内容となっており、各当事者の利益衡量を重視した法律構成になっています。

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