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◎勝訴判決・和解の報告    [6]「建築事務所協会」名義の被告側鑑定意見書が出た和解事例(大津地裁平成16年12月24日和解) 小原健司(京都・弁護士)

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勝訴判決・和解の報告
[6]「建築事務所協会」名義の被告側鑑定意見書が出た和解事例
大津地方裁判所平成16年12月24日和解
弁護士 小原健司(京都)

Ⅰ 事件の表示(通称事件名:「建築事務所協会」名義の被告側鑑定意見書が出たI氏宅事件)
判決日 大津地方裁判所平成16年12月24日和解
事件番号 平成13年(ワ)第489号 損害賠償請求事件
裁判官 同地裁合議部(受命裁判官 本多智子)
代理人 加藤進一郎、小原健司、木内哲郎
Ⅱ 事案の概要
建物概要 所在 滋賀県甲賀市水口町(提訴時点では甲賀郡水口町)
構造 木造(在来軸組工法)2階建 規模 敷地69.44㎡、延面積129.06㎡
備考 もともと盆地内の住宅街に既存自宅があったのを取り壊し新築した戸建住宅。
入手経緯 契約 平成12年6月16日 請負契約 引渡 平成12年12月18日
代金 建物2000万円(追加工事代金含む)、土地0万円(原告所有宅地)
備考 ① 広告で知った被告i工務店に推薦トイレ対応リフォームだけを依頼する気だったが、取壊建替をしつこく勧誘されて根負けし、2,050万円で上記建物新築+旧建物(原告I氏夫妻所有)解体を依頼した(契約当日と上棟日・造作中間日・公庫融資実施日との分割支払約定)。
② その後施工途中で(1) 被告iの経営難が噂され、iの完成保証保険加入も保険会社に断られ入れず、代わりに請負契約書上の「管理者」として被告e工務店が記名押印されて入ったり、(2) 基礎施工の様子がI氏の素人目に見ても杜撰だと不安を感じるもんだったり、(3) 設計図・仕様書交付が遅れ、登記手続をする11月まで確認済証や図面をI氏に渡さなかったり、(4) 造作完成日支払だった一部代金を、上記トラブル発生から遠慮したiがいったんは完成時支払に変更しようと申し入れてきたのに、再度、やはり支払ってもらえないと苦しいと要求してきて、結局その一部を支払ったり、(5) 引渡しの際も上記日に急きょすると未完成部分があり最終的に一応の完成が12月末までずれ込むというトラブルが続いた。
③ そこで数多くのトラブルに配慮し、最終的には引渡前日に代金額を上記額に減額合意した。
相談(不具合現象) ① 2階床に体感やビー玉転がし実験によっても明確なほどの沈下発生(提訴時最大22㎜)。しかも訴訟中も傾斜拡大)。また2階バルコニーの排水勾配も傾斜の高い法が沈下し高低差が失われたため、水が溜まりだした。
② 歩くと音が鳴る。
③ 扉・建具の建付不備等が非常に多数で、しかも訴訟中にも拡大していた。
Ⅲ 主張と判決の結果(○:認定、×:否定、△:判断せず)
争点
(相手方の反論)
① 本件建物の欠陥の存否(構造安全性欠落について)
② 補修工事提案内容の妥当性
③ 損害論(②との関連で)
欠陥 ○ 梁のめりこみ・たわみ(田舎造民家で1階バルコニーに開口部で柱 間隔が大きい箇所があったのに、105×360㎜という太梁を105×330㎜という小梁が受けるなど荷重を考えない架橋がなされたため、①めりこみが生 じ金物が抜けかけ、②たわみも施工令・告示・学会基準を超過(梁有効長さ4,550㎜に対し20.5㎜)
○ 柱の座屈許容応力度超過(計算上)
○ 小屋裏及び小屋組の水平剛性不足(火打材配置不足・振れ止め配置なし)
○ 基礎の曲がり(基礎・安価ボルトが曲がっているのをモルタル補修で埋めてあった)及び破損(構造クラック)・捨てコン及びベース型枠無施工、フック・鉄筋間隔不遵守
→特に、杜撰な基礎施工+梁の問題が重なった結果か、梁のめりこみの直下付近=最も荷重を受ける近くの基礎にクラックがあった。
そこでこの点は訴訟途中段階で気になり追加調査したところ構造クラック発生まで判明したので、欠陥主張のもう一つの柱として強調するようにした。そして裁判所鑑定意見書で確認されたのがトドメとなった。
○ 土台の偏心
○ その他施工精度の悪さ等々
損害 合計 400万円/3526万3352円(認容額/請求額)
(注)ただし、この額は、被告iに不安を感じていた原告が約定請負代金の中の600万円を支払留保していたのを考慮しその残代金支払を不要とした上でのものである。ゆえに経済的には1000万円以上が肯定・認容されたのと同様の結果であった。
代金
補修費用 /2769万8370円(解体再築費用)
転居費用 /40万円
仮住賃料 /70万円(月額10万程度×7か月)
慰謝料 /200万円
調査鑑定費 /61万4200円
弁護士費用 /300万円
その他 /85万0782円(確認申請、公庫手数料、登記手数料、住宅保証機構登録料等)
責任主体と法律構成 売主
施工業者 請負人iの瑕疵担保責任(修補に代わる損害賠償請求)・不法行為(予備的主張)
建築士
その他 (1) i代表者i’の不法行為・商法商法266の3責任
(2) 請負契約書の「管理者」欄に記名押印した業者eの債務不履行責任

Ⅳ コメント
1 被告反論内容
(1) 平成13年10月11日提訴。後に被告Iらも原告I氏夫妻らの未払(支払留保)代金600万円に対し提訴・併合となった。
(2) 被告らはその後、次のように争ってきたので、一々は省略するが、それぞれ、粛々・毅然と反論した。
① 梁のめりこみ発生・柱・小屋裏の瑕疵は一応認めるに至ったが、金物使用等で補修可能だと主張した。
具体的には、反論の建築士私的鑑定意見書にて、小梁を受ける鉄骨梁を室内に設ける補修案を提案した(ただし、空間が変わる・つぎはぎだらけの補修提案に過ぎなかった)。
また、使用上支障ある程度ではない(と強弁)・多額費用が必要で契約額減額解決が妥当(これも根拠無し)・さらにバルコニーも勾配だけを直せばいいとも主張した(これも対症療法にすぎぬ提案だった)。
② 基礎は仕様書どおり施工した・破損していない・その他基準は満たしていると主張した(結局否定された)。
③ 損害額・損害論に関し、民法635条但書(完成後解除制限文言)を根拠に建替費用賠償額制限主張。

2 審理経過
(1) 被告代理人・被告側建築士を現場見分させた(必要ないと言ったが裁判所が促したのであえて逆らわず)。すると後出のように内容・測定方法に問題がある上に作成名義が大問題の私的反論鑑定意見書が出てきた。
(2) 裁判所に「瑕疵一覧表」を作成されたいと言われ、その提出・被告意見・再訂正を何回か反復するやりとりをした。

(3) そのうち、基礎の破損=構造クラックが疑われてきたので、追加調査し、主張を追加し梁のめりこみと並ぶ2大欠陥として強調するようにした。

(4) この一覧表をめぐる争点整理や、被告側鑑定意見書に対する徹底的批判に、今から思うと時間を結構使い過ぎたかもしれない。訴訟進行の上では反省点であった。
※ 被告側鑑定意見書は、内容面のみならず体裁面でも、ビジュアル的に工夫するとか説明をわかりやすく書くと言う点では、およそ全くやる気の感じられな いもので、いったいどういう補修内容を提案したいのかすら判読できない箇所もあり、つい求釈明を繰り返してしまった。

(5) 裁判所も、最初の担当裁判官(単独→途中から合議へ)はあまり積極的・意欲的に思えなかったが、次のような事情で変わっていった。
① 原告本人が「ビー玉が転がる傾斜」「訴訟中も勾配が無くなり水が溜まりっぱなし状態に陥った2階バルコニー」「1階梁めりこみ箇所直下=居間ど真ん 中に聳える応急措置柱」(本記事右側写真参照)を巧妙に映したビデオを撮られたのでそれを証拠提出したところ、かなり印象として原告へ理解ある対応に変 わった。
② 受命裁判官(左陪席)の判事補が弁論準備・進行協議を仕切るようになってから以後、特に同判事補が後記裁判所鑑定人の現地見分に自ら立ち会い、傾斜や応急補修箇所を実際に見学された以降は、やる気を見せてくれるようになった。
③ 相手方鑑定意見書批判については、担当建築士の川端眞先生・石黒恵之先生から、懇切丁寧な補充意見書を作成いただき、裁判官の理解もそれにより高まったと思われる。

(6) 最終的に、裁判所鑑定を入れることに反対しきれず、この鑑定関係で余計に時間を要したが、幸いにも①構造系の建築士さんに鑑定・現地見分をいただき、②基 礎についても追加調査(一部破壊検査)を頂いた結果、③補修可能とは判断したものの、概ね当方主張に沿った「高額の基礎・梁掛け替え補修必要」「損害額 1100万円以上」という内容の意見を提出してくれた。

(7) そして裁判所鑑定に基づいた和解協議中に、被告iが資力難であるという情報が入ったこと、間取りを犠牲にすれば何とか事実上補修する方法が考えられたことなどから、前記のように即刻一時金(銀行保証小切手)での和解にこぎ着けることを選択した。
なお、原告はその後、当初の間取り空間は断念した上で、加重箇所に柱を新設する形での補修工事を先日無事終えられた。

3 主張・立証上の工夫
(1) 欠陥主張は、完全に当方私的鑑定意見書に則り展開し、相手方代理人も間もなく元の欠陥自体はほぼ白旗状態になり争ってこなかった。しかし補修の方法・可否については前記のとおり争いが残った。

(2) 相手方鑑定意見書批判や、途中から追加的に強調しだした基礎欠陥については、前述のとおり当方建築士の川端先生&石黒先生からその都度、詳細な補充意見書 を作成してもらった。 その内容は、①被告提案補修案に対する一問一答式での問題点あぶり出しや、②図面・写真をいかにわかりやすく見せて解説するかに気を配られたビジュアル面 (上記写真は一例)など、欠陥に対する指摘のみならずその表現方法・体裁の面でも、本当に強く賞賛したい。本職としては「鑑定書を分かりやすく理解しやす くする工夫の比較競争勉強会」などの行事を企画したいとの思いにも駆られた。

4 所 感(とくに被告鑑定意見書について)
(1) 既に京都・全国のメーリングリストや、京都や神戸や全国ネット(鹿児島)大会でも報告したとおり、今回の被告側指摘鑑定意見書は、内容も杜撰だった上に、作成者にも問題があった。

(2) すなわち、作成のy建築士は、某府県の建築事務所協会から推薦紹介されたらしく、同協会の役員であった。しかるにその意見書内容は非常に杜撰であったし (そもそも現場での測定に際しても、下げ振りではなく、外構用にしか用いない・精度の粗い水泡式の水平器をしかも頓珍漢な方向に当てて使っていたという状 態であった)、のみならず提出された時点の作成名義が、事務所協会名義だった。
⇒ この点を本職らは大問題にし、準備書面上の批判、作成名義人は誰か(協会か建築士個人なのか)という点の求釈明、そして事務所協会宛の弁護士法第 23条の2照会まで敢行し、「yによる無断の協会名義冒用だ」と協会に回答させ、被告側にも「当該建築士個人・y名義に過ぎない」旨認めさせた。

(3) ところが、後日、協会のホームページを見ると、このy建築士が現在、筆頭格副会長に昇格していることが判明し、唖然としか言いようがなかった。
(弁護士照会までされ、協会にとっても無断名義冒用問題がとっくに既知の問題だったのにである。事務所協会は本当に何を考えているのか、呆れてしまった)
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