勝訴判決・和解の報告 [6]基礎コンクリートの設計圧縮強度不足を認めた事例 (広島高等裁判所平成17年10月27日判決) |
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弁護士 風呂橋 誠(広島) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ⅳ コメント 1 判決分析(意義・射程・問題点等) (1)控訴審での基礎コンクリート強度に関する鑑定結果の信用性について 原審までに当事者双方がコンクリート・コアの圧縮強度を検査した結果がまちまちであったため、控訴人がシュミットハンマー検査を実施し、推定圧縮強度 のばらつきを根拠に、控訴審で鑑定嘱託を実施することになった。鑑定嘱託の結果は、控訴人主張どおり強度不足であったが、その後、嘱託先の第三者機関が、 「検査手続にミスがあったため鑑定結果は不正確である」旨裁判所に申し出て、被控訴人も「鑑定結果は信用できない」と主張した。しかし、裁判所は、鑑定嘱 託に至る経緯で厳格な手続条件を付したことや、シュミットハンマー検査の結果と鑑定嘱託の結果が、概ね近似し、かつ、比例していたことから、「2つの異な る手法で得られた科学的データであり、その信用性は頗る高い」として、鑑定結果を信用できると認定した。 (2)建替えの必要性を否定した場合の損害額の算定について 控訴人が建替えを前提とした損害賠償請求をしたのに対し、控訴審では、「建替えを要するとの主張には、修補で足りる瑕疵の主張を含むものと解すること ができ」るとして、耐久設計基準強度と大規模補修不要予定期間や供用限界期間の相関関係を証拠として、本件基礎コンクリートの設計基準強度が不足している 瑕疵によって、建物の耐用期間が合意内容よりも、少なくとも約10年間は短くなる、として建物の寿命が約4分の1程度短くなることをもって、民事訴訟法 248条の趣旨により損害額を1000万円と認定した。 2 主張・立証上の工夫 控訴審での鑑定については、充分に協議を重ね、コンクリート・コア採取から、試験機関への持ち込み、さらには圧縮強度測定の際の手順についてまで、事 細かく鑑定嘱託の条件に明記した上、いずれの段階にも双方が立ち会うなど、慎重を期した。にもかかわらず、第三者機関である嘱託先が「コンクリート・コア のカッティングを忘れていたから不正確」などと裁判所に申し出たため、「世にも奇妙な鑑定物語」となってしまった。しかし、嘱託先を交えた協議の中で、当 方が、「なぜ、鑑定結果を提出した後になって、供試体を再度チェックし直したのか?」と質問すると、嘱託先が「余りにもおかしな数値だったので……」と回 答したため、当方が「こちらにとっては予想どおりの数値であり、『おかしな数値』と判断すること自体おかしいのではないか」と追及した。すると、裁判官か ら「人間の体温測定で20度とか100度という結果が出れば体温計を調べ直すが、35度や39度ならそのまま結果を報告するのではないか。今回の数値は控 訴人の主張に近いだけでなく、シュミットハンマー検査の結果にも合致しており、充分あり得る範囲の結果ではないのか」との意見が出された。 シュミットハンマー検査のデータを鑑定前に証拠で出し、さらに、そのデータの中で、強度が特に低いところ、高いところ、標準程度のところの3箇所を鑑 定の場所に設定したことが、2つの異なる手法のデータの比例していることを証明する決め手となったようである。 3 所感 裁判鑑定の場合、裁判所にお任せというケースも多いが、今回のように、第三者機関である鑑定嘱託先が自らの鑑定ミスを裁判所に報告して、施工業者に不 利な鑑定結果の信用性を否定しようとする場合も充分あり得る。そのような場合に備えて、消費者側は、適正な裁判鑑定を実現するための努力と注意を怠っては ならないという教訓になった。 |
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