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◎震災時の専門家の役割 津久井進(神戸・弁護士)

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震災時の専門家の役割
弁護士 津久井 進(兵庫)

1 阪神・淡路大震災は、平成7年1月17日午前5時46分に発生しました。一瞬にして、6433名の尊い人命が失われ、約20万棟を越える建物が全半壊・全半焼しました。

2 被災後に直面する災害復興にかかわる問題は多種多様です。また、未知の問題も多数あります。
とりわけ、建物や土地にかかわる問題は、法律問題だけでなく、建築土木技術、登記、測量、税務、不動産の評価といった多くの専門知識が必要になりま す。また、被災した建物の欠陥の有無を調査するだけでなく、そこからいかに復興をしていくかというプランニングも必要になってきます。
これらは、到底、ひとつの専門家で対応できるものではありません。被災地のニーズに十分応えるためには、弁護士、建築士、司法書士、土地家屋調査士、税理士、不動産鑑定士といった専門家の連携がどうしても必要となります。

3 被災地の混乱の例を一つ挙げてみましょう。
被災建物の危険度を示す基準があります。実際の被災地の現場では、「応急危険度判定」、「行政の被災度認定(いわゆる罹災証明)」、「被災度区分判 定」、「滅失・損傷」といった、制度の目的の違いから生じる様々な危険判定があります。さらに「欠陥の有無」という指標も加わって、概念が複雑に錯綜しま す。その結果、一日も早い立ち直りを切望する被災者に対し、大きな混乱と不安をもたらすことになります。
これらを正しく区分けし、今後の道標を示す役割は、士業専門家を置いてほかにありません。

4 現実になされた専門家連携の例を挙げてみましょう。
たとえば「マンションの再建・復興の支援」というのがあります。被災マンションをめぐっては、法律そのものに内在する問題や、再建方針をめぐる合意形 成の難しさが存在しています。建築士がマンションの被災程度を診断し、不動産鑑定士が法律適用上の鑑定作業を行い、弁護士らが再建組合等における合意形成 の手順を説明し、土地家屋調査士・司法書士が再建後のマンションの登記事務等を支援しました。

5 こうした経験を踏まえて、専門家の縦割りによる“たらい回し”の弊を無くし、専門家が垣根を越えてワンパックで対応できる組織が必要だと思うようにな りました。また、行政と市民の無用の対立を防ぐために、誰からも信頼される専門家が調整役に乗り出す必要性を感じるようになりました。
阪神淡路では、弁護士や建築士を含めた6職種・9団体が横断的に連携する「阪神・淡路まちづくり支援機構」が設立されて活動を行っています。
また、東京では昨年、「災害復興まちづくり支援機構」が設立され、静岡や仙台では災害復興に対する専門士業連絡会が発足しています。
このような専門士業による連携のネットワークが全国的に広がっていくことが必要です。そして、その核となるべき専門職種は、やはり弁護士・建築士で す。欠陥ネットで形成された信頼関係を基礎にして、このような取り組みを呼びかけていくべきだと強く思っています。
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