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「日弁連家づくり約款」の解説 河合敏男(東京・弁護士)

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河合敏男(東京・弁護士)

この度、 日弁連の消費者問題対策委員会土地住宅部会のメンバーが中心となって 「消費者のための家づくりモデル約款の解説」 を執筆し、 出版の運びとなりました。 今の建設業界は消費者保護の視点からは極めて憂うべき状況にあります。 私たちがこの本の執筆を思い立った理由については、 この本の第1章 「はじめに」 に詳しく書いておきましたので、 そちらをご覧ください。
以下、 この本の特色と使い方についてご説明いたします。

本約款の大きな特色の一つは、 監理者の地位と責任を明確にするとともに、 必ず監理者を契約の当事者として参加させることを前提としていることです。 民間の庶民住宅の半分以上は、 設計・監理とは名ばかりの代願や名義貸しが当たり前のように行なわれ、 確認申請書の工事監理者覧の明記も形式化しています。 建築基準法が必須の機関として求めている工事監理が実質的に機能していれば、 多くの欠陥住宅被害、 特に阪神・淡路大震災で亡くなった方の数も激減したに違いありません。 我々はこのような問題意識をもって、 この約款の起草に着手しました。
まず、 契約書部分に監理者欄を設け、 必ず監理者の署名捺印を求める体裁としました。 本来、 「建築工事請負約款」 というものは、 建築主と施工者間で締結される契約ですから、 原則としてここに当事者として監理者が入ってくるということはありません。 つまり、 監理契約は建築主と監理者との間で別途締結されるべきものです。 しかしながら、 監理が形骸化し、 建築関係者も消費者も監理の重要性を忘れてしまっている現状にあっては、 建築工事請負契約の中でも監理者の署名を必須のものとして、 請負契約の中で当事者として登場させることが必要なのです。 本約款が 「建築工事請負約款」 という名称ではなく、 「家づくり約款」 としたのもそうした理由によるものです。 このような形をとることによって、 監理者は建築主に対して契約上の責任を負わなければならないことが明確となるわけです。
第2の特色として、 本約款は、 施工現場で行なわれてきた悪しき慣行や悪習を禁止して欠陥住宅建築の予防を企てていることです。 例えば、 施工の一括下請 (丸なげ) について、 これを許容する文言を入れている市販の建築請負約款が多い中で、 本約款はこれを禁止したり (第6条)、 現場で直接工事を指揮し監督すべき立場の主任技術者 (現場監督) が、 10件以上もの現場を掛け持ちで仕事をしているという悪しき慣行を改めるべく、 現場管理の掛け持ちに限定を加える (第12条) などの規定をおきました。
第3に、 本約款は、 市販されている他の建築工事請負約款において消費者側に著しく不公平な内容となっている条項を改め、 施工者と建築主が対等、 公平な関係となるようにしました。 例えば、 他の約款では、 欠陥住宅被害者が最終代金の支払を留保して争っている場合に発生する可能性のある、 遅延損害金 (遅延利息) について、 年率36. 5%も発生するような暴利を定めていたり、 瑕疵担保期間 (欠陥が見つかった場合に業者が無償で補修または損害金支払に応じなければならない期間) について、 民法の原則を変更して1年~2年程度に短縮しているものがありますが、 本約款では、 遅延損害金の定めを年6%という常識的な数字とし (第27条)、 瑕疵担保期間については、 10年乃至15年と定めています (第24条)。

本書は、 そのまま実際の契約で使えるように、 末尾に 「そのまま使えるひな形」 として、 建築工事請負契約書、 約款、 工事内訳書を添付しましたので、 これから実際に契約を締結しようとする場合は、 そのまま切り取ってい使用するか若しくは適宜コピーして使用してください。 契約書と約款とは一体となってその合意内容を具体的に特定するものですから、 契約締結にあたっては、 契約書綴りの中にこれらを一体として綴りこんで使用してください。 請負代金内訳明細書は、 一例として紹介したものです。 見積書や内訳内訳書は、 工事の具体的施工内容、 材料の種類やグレード、 設備機器のメーカーや品番、 単価などを特定するものであり、 契約内容の一部となる重要な書類です。 これを参考にして、 詳細な請負代金内訳明細書を契約前に施工業者に作成させ、 納得した上で契約してください。 見積書でも詳細なものは内訳明細書を兼ねているものもありますので、 詳細な見積書であれば内訳明細書に代えてこれを契約書綴りに綴りこめばよいと思います。

私たちは、 消費者はもちろん建設業関係者の方たちも積極的に本書を利用して頂けることを望んでおります。 しかし、 もしこの契約約款による契約締結を施工業者から断られたときは、 消費者としてはむしろこちらから契約を断るべきでしょう。 本約款は、 決して施工業者にとって不公平な内容ではなく、 誠実な業者にとっては当たり前の内容が記載されたものだからです。 本約款の各条項とその解説は、 消費者保護の視点に立って実際の契約実務に役立つだけでなく、 我が国の建築業界の問題点、 改善すべき点を浮き彫りにしており、 一つの読み物として通読しても価値のあるものと考えています。 消費者及び建築関係者の多くの方が本書を利用されることを願っております。
本約款 (第二版) をお持ちでない方は、 日弁連の人権第2課宛てに直接申込んで頂ければ、 書籍代1000円プラス郵送料で手に入れることができます。 なお、 本約款は、 消費者だけでなく建築関係者の方からの引き合いも多いことから、 書籍として出版することになりました。 今年の5月頃までには、 書籍としての体裁に整えて、 一般の書店で販売される予定です。

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