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パネルディスカッション 「シックハウス問題の本格的解決をめざして」 (4) シックハウスをつくらない建築士としての役割 木津田秀雄 (兵庫・建築士)

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パネルディスカッション
「シックハウス問題の本格的解決をめざして」


(4) シックハウスをつくらない建築士としての役割
木津田秀雄 (兵庫・建築士)

※シックハウス問題の経緯
私はシックハウス被害者の救済という面からではなく、 シックハウスにならない住宅づくりという面から96年頃から仲間と勉強会を行いながら進めてきました。 当初は施工会社にF1の合板で施工して欲しいと言っても、 それは防水の等級か?と聞かれたりしたり、 問屋に問い合わせてもそんな合板は扱っていないと言われたりしていました。 またJAS規格外の輸入合板も市場には大量に流通しているような時期もあったのです。 (海外の工場でもJAS規格合板を製造できるのだが、 無印の方が安いのは世の常である)

96~97年頃にもシックハウスがマスコミに取り上げられた時期がありましたが、 実際にはビニールクロスの施工糊に含まれるホルムアルデヒドが悪いということで、 ホルムアルデヒドを含まないノンホルム糊の開発により沈静化しました。 しかしながら合板やパーティクルボードなどについては、 JIS,JAS規格製品であれば問題ないような使用方法がまかり通り、 またF1であればシックハウス対応をしているような宣伝も見受けられました。

そんな中で97年に厚生省がホルムアルデヒドの室内空気汚染濃度の指針値を出したものの、 私たちの中では遅いのではと思われたほどでした。 また翌98年に健康住宅研究会がガイドラインを出し優先取り組み物質として、 ホルムアルデヒド、 トルエン、 キシレン、 木材保存剤、 防蟻剤、 可塑剤を取り上げたものの、 その後法的な規制が行われるのは2003年にホルムアルデヒドがやっとという状態です。 実際にホルムアルデヒド規制は、 業界が対応できるようになるのを待って規制をかけるという状態だったと思われます。 その間にも化学物質による健康被害は拡大していったのは間違いありません。

ここ数年でシックハウス問題が社会現象化してきたのと、 合わせて被害者の報道なども増えてきており、 ある意味やるべき事をやってこなかったつけが回ってきているのではないかと考えています。

※基本的な考え方
シックハウス対策の基本的な考え方は、 以下のようなことになります。
・ 化学物質の放散システムが解明されていないため、 基本的には問題のある化学物質の含有されていないものを使用する。
・ 建材の使用部位の違いを考慮する。
・ 化学物質の毒性の強さを考慮する。

これらについて、 化学物質について4ランク、 使用部位についても4ランクをカテゴリー毎に分けて、 それぞれについて、 どの部位にどの化学物質を含む建材を使用して良いのかを検討しました。 その結果、 室内に面する建材については、 ホルムアルデヒドを含め、 トルエン、 キシレン等の溶剤だけでなく、 その他の溶剤についても使用しない方が良いとの判断をしています。
これらの考え方は、 特に現在アレルギーや化学物質過敏症になっていない人にとっての基準であり、 既に化学物質過敏症になっている人にとっては、 この手法でも負担が大きいと思われます。 (表参照)

ホルムアルデヒド トルエン
キシレン
有機リン系防虫剤
可塑剤
トルエン・キシレン以外の溶剤
有機リン系以外の防虫剤
難燃材
防かび・防腐剤
樹脂成分(モノマー)
抗菌剤
天然系有毒物質(ヒバ
油,α-ピネン,木酢液)
内装材
家具・建具
床下用薬剤
接着剤
ゼロをめざす ゼロをめざす ゼロをめざす できる限り少なくする
<2/3まで>
内装下地材
(天井裏等に
該当する部位)
ゼロをめざす ゼロをめざす できる限り少なくする
<2/5まで>
できる限り少なくする
<2/3まで>
構造材
断熱材
その他壁構成材
外壁材
ゼロをめざす できる限り少なくする
<1/3まで>
できる限り少なくする
<2/5まで>
可能な範囲で少なく
外壁下地材
屋根材
できる限り少なくする
<F☆☆☆程度>
できる限り少なくする
<1/3まで>
可能な範囲で少なく 可能な範囲で少なく

この表が作成されたのは、 99年ころで、 既にこのときに先進的に取り組んでいた建築士の間では、 内装材にホルムアルデヒドを含んだ (放散量の大小ではなく) 建材を使用するのは危険であるという認識がありました。 しかしながら先にも書いたように、 F1という一番下のランクであれば、 問題ないだろうというのが建築業界全体の状況でした。

※具体的な建材の選定
実際に建材を選定する際に、 注意しておきたいのは、 予めその建材にどのような化学物質が含まれているのかを確認しておくことです。 さらに問題がありそうな建材はメーカーがたとえ 「健康対応」 とうたっていても、 本人や家族にその臭いなどを確認してもらうことが大切になります。
例えば、 現場施工する塗料については、 必ず30cm角程度の塗装サンプルを作成し、 就寝時に枕元においてもらい確認しておく必要があります。 特に自然系の塗料に使用されている天然の溶剤 (テレピン油や亜麻仁油) に反応する人は以外に多いので、 「自然系」 「天然」 「健康対応」 などに惑わされないように注意が必要です。 またアルコール系の溶剤に反応する人もいます。 自然に返る塗料というような宣伝をしているメーカーもありますが、 自然に返ることと健康被害がでないことにはイコールではありませんので、 本人の確認を得ない限り判断はできないと考えた方が良いでしょう。
またフローリングは、 全て無垢材を使用するのが前提ですが、 特に臭いに過敏な人やアレルギーも持った人にはフローリングを削ったサンプルを密閉容器に入れて、 その臭いを確認してもらうべきです。 杉や桧に反応する人は多く、 ナラや栗などの広葉樹系の木材でないと使用が難しい場合があります。
コストの問題があり、 どのにでも無垢材が使用できない場合に、 家具などに集成材や合板を使用する場合には、 F☆☆☆☆を使用するようにします。 しかしながらできるだけ合板類は使用しないことが大切です。 集成材より合板の方が、 多く接着剤を使用していますので、 無垢材→集成材→合板の順での検討が必要です。

※ダニ・カビ対策
アレルギーを持った方には、 ダニやカビに対する対応も必要になります。 もちろんアレルギーがないからと言って、 ダニやカビが発生しても良いわけではありません。
ダニカビの発生は、 餌と水分のどちらかを無くす必要があります。 餌は人間が生活している以上ゼロにはできませんので、 いかに水分補給を絶つのかを考える必要があります。 見えないところでの 結露は最も問題が起きる部分です。 それを考慮して、 結露を防止するために外壁の断熱材の内側に防湿シートを施工するというのも一つの方法ですが、 まず室内に吸放湿性のある建材を使用することも大切になります。 ビニールクロスと合板の床材で囲まれた部屋には湿気を吸放湿する部分がありませんので、 冷たい空気が当たる窓ガラスには直ぐに結露が生じてしまいます。 場合によっては壁内にも結露が生じることになります。

こまかな部分では、 まだまだ対策はありますが、 建築基準法が改正されたからといって、 化学物質汚染に対して完全に安全な状態になったわけではありません。 建築に携わる専門家それぞれが、 建材に対して注意を行い、 その建物に住む人の健康を預かるという気持ちで対処する必要があると思います。

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