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パネルディスカッション「建築基準法はザル法か─建築基準法違反の設計・施工を許容する土壌を問う─」     (3) 徹底討論・建築基準法を遵守させるために何をなすべきか

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① 藤島茂夫(東京・建築士)

1. 建築専門家の認識と評価
各地で行われている欠陥建物訴訟の場において、 建築基準法令がどのように認識されているか、 関心をもって建築の専門家の説明を聞いていると、 非常に疑問を持つことが多い。
最近、 大きな社会問題となっている、 食品業界をはじめ、 数年前の自動車業界では、 法律違反が表面化しただけでも、 会社が破綻に追い込まれることもあるのに、 我々の属している建設業界にいたっては、 建築基準法違反の箇所の存在を立証しても、 施工した当事者をはじめ、 設計した建築士も一向に驚かず、 平然として、 司法の場へ出席してきて、 法令違反箇所はあるが、 「現時点でも、 建物が建っているから問題はない」 と云って、 分厚い構造計算書を提出し、 説明をする。 そして違反に対する反省もなく、 開き直りの説明しか聞かれないのが現状です。 テレビで見る光景 (平身低頭で謝罪する会社の代表) とは、 大きな違いです。
更に、 驚くことは、 司法側の立場で出てくる調停委員迄が、 「調査報告書を読んで、 建築基準法令違反の箇所について、 判明していることは事実と考えられますが」、 ところで、 この欠陥事項によって、 本件建物がどれだけ危険なのかを証明してくれませんか (どの位の大きさの地震で壊れるかについて)。 と発言されては、 おそらく誰も説明はできないことは明らかです。
そして、 その瞬間施工した業者は心の中で、 勝ったと思っているでしょう。
これで、 この件は、 膠着状態になり、 解決の道が遠くなってしまいます。 その上、 この中へ、 学者が入ってきて独自の考えを論じてくると、 更に深い迷路に突入して、 解決はいっそう困難になります。
この様な状況について、 他の業界との差異はどこにあるのかが、 大変疑問に感じています。
その理由は、 二つあると思います。
一つは、 建築基準法という土俵 (枠組) をでてしまい、 ボーダレスにしていることです。
二つ目は、 建築基準法で云う最低基準は、 建物に大きな地震力が作用しても、 歪みは残るが倒壊はさせないことを最低として、 仕様及び性能を政令等で決められています。 即ち、 倒壊とか崩壊については、 論外としているこを、 専門家が認識していないことです。
その他、 欠陥についての客観的評価基準が、 現時点では確立されていないことです。
そして、 判事は調停委員の意見を鵜呑みにしているのではないかと思われます。
以上のような事実を、 専門家が調停室及び法廷で発言した内容の一部をまとめましたので、 検証してみてください。

2. 発言事例   ○印が発言 (説明) 内容
1) 建築基準法違反について。 (法第1条)
○基準法違反箇所が存在しても、 現に建っているから安全である。
○既に、 震度4程度の地震を経験しているが、 被害はない。
○建物のほとんどが違反している。
2) コンクリートのひび割れについて。 (令第36条3、 第75条)
○乾燥収縮だから避けられない (当然)。
○ヘアークラックだから問題ない。
○構造クラックではないので心配はない。
○ひび割れのないコンクリートは存在し ない。
○ひび割れではなく、 隙間ではないのか。  (大学教授)
3) コンクリートの打込み不良 (令第72条、  74条) ジャンカ、 コールドジョイントに対して。  ○一部であるから問題はない。
○除去して補修できるので心配はない。
○構造部材ではないので問題はない (指 摘箇所が)。
4) 鉄筋のかぶり厚さ不足について。 (令第79条)
○測定個所の平均値が適合しているので問題はない。
○測定の方法に問題がある。
○1㎝2㎝を取り上げていたら、 社会問題だ。 建物は建てられない。
○床の場合、 鉄筋が露出していても崩壊はしない。 (大学教授)
5) 帯筋及び肋筋の間隔について。 (令第77条)
○測定個所の平均値が適合しているので問題はない。
6) 規模、 形態の変更について。
○建売住宅なので仕方がない。
○消費者に安く提供するためには、 変更も仕方がない。
7) 重大な欠陥に対して。
○地球資源確保のためには、 取壊さないほうが良い。
○宮大工が埋め木等で補修すれば、 補修が可能である。
8) 木造建物の基礎欠陥について。
○施行令第42条2では、 無筋コンクリート造でも良いと書いてある。
○この建物は木造であるので、 鉄筋コンクリート造の基準は摘要されない。

3. 結論
上記に記載した内容をみれば明らかなように、 専門家の発言とは思えないようなひどい内容であり、 これが現実です。                 
『建築基準法をザル法にしている調停委員や鑑定人、 広くは建築の専門家です』。 故に、 専門家の質を如何に高めていくかになると思います。
ネットの皆さん頑張って、 問題解決に向けて勉強してください。


② 山本正道(京都・建築士)

現在の建築基準法は中間検査制度ができてからは中間検査の行われたものについては、 構造安全性が飛躍的に但保されるようになり専門家的立場からはザル法ではなくなったといえる。 むしろ、 今迄の 「仕様規定」 だけの状態から 「性能規定」 が包含された事により、 安全性の検証作業が複雑、 高度化した所に鑑定作業等の困難が予想される。
加えて、 今回の吉良判決は安全で良好な建築物を設計しようとしている善良な建築士にとっては、 「欠陥は認めるが、 損害は認めない」 という暴論は建築基準法の目的をも理解していない裁判官そのものが建築基準法をザル法化しているものと映るのである。
建築基準法は第1条 (目的) において、 「この法律は建築物の敷地、 構造、 設備及び用途に関する最低の基準を定めて、 国民の生命、 健康及び財産の保護を図り、 もって公共の福祉の増進に資することを目的とする。」 としており、 第20条で 「建築物は、 自重、 積載荷重、 積雪、 風圧、 土圧及び水圧並びに地震その他震動及び衝撃に対して安全な構造のものとして、 次に定める基準に適合するものでなければならない」 と定義されている。 そのうち一般には暴風とか地震が無い状態で建っている時に発生しているのが自重と積載荷重である。 自重と積載荷重を常時荷重というのであるが、 常時荷重時に建物を安全なように設計したり、 建てるのは容易である。 まず、 常時荷重時に崩壊する建物は誰も造らないだろう。
もし、 造ったらすぐに崩壊し、 生命の問題になり、 その業界での活動はしていられなくなるだろう。 重要なのは地震、 台風が頻発する日本においては当該水平力に対して安全性が十分に検討されなければ建築物としての機能が満たされないという事である。
今回の福本先生の耐震、 耐風安全性に関わる単体規定の由来のお話は、 如何に学者や専門家が国民の生命を守る為に地震や暴風に対して危険を予防し、 損害の発生を最小限にくい止めようと努力してきた変遷の歴史であり、 建築士も弁護士、 もちろん裁判官もこの法の根底に流れる安全性というものに対する基本的認識を一にしたいものである。


③ 福本和正(滋賀・滋賀県立大学助教授)

数年前までは、 自宅の3階の窓から毎年8月16日の大文字の送り火が見えていましたが、 すぐ近くに4階建の個人住宅ができて以来、 ベランダに置いた椅子の上に上がらなければ見えなくなりました。 前面道路の斜線制限から、 本来3階までしか建てられないのに、 工事の終わり頃に急いで4階目が造られ、 不審に思い、 京都市の建築課に駆け込みました。 関連部署の係員が調べに行くということで、 帰ってきましたが、 その後どうなったのかは不明で、 そのまま4階建ての住宅は建っています。 忙しさと2方面の意見により、 追及をやめたからです。 いわゆる、 泣き寝入りです。
一つは家の者の意見で、 どのような人が入居し、 今後どのような危害を加えられるかわからないから、 余計なことはしなさんなということでした。 もう一つは、 ある一級建築士の意見ですが、 日本では地価が高いから見逃しておいたら良いのではないか、 ということでした。
それまでは私もぼんやりと、 建築基準法にも罰則規定があるにはあるけれども、 軽いものなので、 違反をする人が減らないのではないかという程度に考えていました。 今回、 建築基準法に罰則規定があるのかどうか調べてみましたところ、 違反建築物に対する措置の第9条があるものの、 それは原状に復帰させるために、 公告・開示の手続きが何段階も取られており、 時間ばかりかかって、 あれよあれよと言っている内に工事が終ってしまう怖れがあるという思いをしました。
昭和56 (1981) 年に、 建築基準法施行令中の耐震基準が改訂追加されて、 いわゆる 「新耐震設計法」 になり、 1次、 2次設計法の2段階で耐震設計をすることになっています。 この2次設計では、 数10年から100年に1度程度の確率で起こる比較的大規模な地震に対して、 ひび割れ等の損傷を受けても建築物を崩壊させず、 人命を保護するという重要な使命を帯びています。 構造の分野では、 ニュートンの運動の法則に従って、 物理的・客観的に力が加わり、 自然の法則によって裁断を受け、 人命が奪われることを最も怖れます。 したがって、 ごまかしがきかず、 罰則により違反をさせないというようなことは不要で、 人命を奪うような建物を造ってはならないということが、 至上命令の世界と考えています。
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