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パネルディスカッション「裁判所における欠陥住宅鑑定のあり方」 (1) 裁判所における鑑定人選任の実情 伊藤 学(東京・建築士)

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伊藤 学(東京・建築士)

【鑑定人、 調停委員の概況】
最近は建築関係の訴訟事件が激増しており、 東京地裁の調停事件を管理している民事22部では、 過半の事件が建築問題とのことである。
裁判も増加していると思われ、 最近の情報では東京地裁民事22部、 大阪地裁でも建築関係事件の専門部化が進んでいるようである。
建築の鑑定人も不足し、 この度は最高裁からの要請で、 社団法人・日本建築学会から200人程度の鑑定人候補者が選出されている。
今までは、 東京地方裁判所を例にとれば、 建築関係の鑑定人の予備軍である調停委員の建築士は、 平成12年8月1日現在、 本庁調停委員総数239名のうち、 兼業2名を加えれば50名で、 弁護士83名に次いで2番目であった。 調停委員をしている友人の話では現時点では55名になっているとの事である。
ちなみに、 その他は不動産鑑定士40名、 9~1名の、 弁理士・大学教授・医師・公認会計士・税理士・会社役員・団体理事・団体職員・教員・会社員・土地家屋調査士・歯科医師・団体顧問・コンピユーター関連専門学校講師・コンピユーター関連・会社役員兼業者・その他である。
また、 調停委員をしている友人の話では、 調停委員建築士の過半が建築行政役人の停年退職者であり、 彼らは設計や工事監理の経験が無いか又は少ない者が殆どとの事である。
さすれば設計・工事監理・施工に付いて総合的に評価能力のある者は極めて少ないと思われる。

【調停委員の選定の問題と資質】
調停委員の停年は70才であるので、 停年退職者が事務局に後任者を推薦している様である。
委員の増員補充も、 現職調停委員の推薦 (現に私も推薦された経験がある。) に依っている。
平成8年当時の建築関係調停委員は19名であったが、 その時知人の調停委員は4人、 調停委員の増員があるとの理由で私に勧誘があった。 履歴書記載の年齢69才、 停年まで数ヶ月しかない事で結局は丁重な断りがあったが、 調停委員の知人という程度で採用されるのは問題である。 この様な調停委員体制の中から選定される鑑定人、 および、 この様な鑑定人が事件を左右するようなシステムには問題がある。
この度、 日本建築学会から選任された鑑定人候補者についても疑問がある。 何故ならば、 「学会」 の名称が付けられてはいるが、 必ずしも学者の集団ではなく、 建築に何らかの関係を持つ者であれば誰でも加入できる (筆者も加入している) のも一つである。
大手建設業の技術研究所の学際的な技術者も加入しているが、 建設業関係の設計、 又は工事関係技術者も多い。 また、 役員も建設業関係から推薦された者も多い。
このような態勢が消費者と建設業者との争いに、 建設業の立場から離れた第三者として鑑定できる候補者がどの程度かわはなはだ疑問である。
また、 その鑑定人が学者であった場合、 自らの狭い専門以外は素人同様である事も念頭に置かなければならない。
私が遭遇した鑑定人、 および公的評価人には全て問題があったが、 その事例を紹介する。
①ミスキャストの調停委員
同窓の2年先輩の教授で、 人格的には尊敬する生え抜きの材料学者。 設計や工事監理などした事は無いはずである。
建設省中央建築工事紛争審査会での事件。 木造軸組 (在来) 構法で雨漏りや構造の瑕疵であったが、 調停委員として現地調査をしたらしく、 鑑定書があったが、 木材と腐蝕の関係のみの論文で事件には直接役に立つ内容ではなく、 筆者の調査報告書を基に審議されたようであった。
② 学者らしくない構造学者の調停委員
建設省中央建築工事紛争審査会での鉄筋コンクリート構造の事件。
配筋が疑わしく、 レントゲン調査をし、 8ヶ所中6ヶ所に鉄筋欠落と、 目視で床版の鉄筋露出を確認した。 しかし、 よくある例でその大学教授はちまたの構造計算をしているらしく、 「この位は大丈夫」 と目視の鉄筋露出のみを瑕疵とした。
計算式には安全率が仕組まれており、 現実の構造計算では端数を切り上げるので、 その考慮を加味したらしいが、 異常な施工を是認した判定であった。

【学者ではないが問題のあった事例】
①体裁を繕う調査官
東京高等裁判所に建築関係の調査官 (裁判所法57条) がいた。 もし、 建築関係の調査官が一人だけであれば判事は当人の資質の優劣を判断できないであろう。
私が関係した事件で、 裁判官が地裁に、 その調査官を同伴したが、 体面を保つだけの発言しかしなく低級であった。
円卓の法廷で、 筆者は裁判長から白板に住宅の布基礎の断面図を画く事を命じられ、 裁判長はその是非を調査官に尋ねた。 彼曰く 「土木では、 捨コンクリートを打設しない」 と。 審査中の問題は建築の問題であり土木の問題ではない。 彼は筆者の画いた図の評価ができなかったらしい。
②無知で体裁を繕う元役人
建設省中央建築工事紛争審査会専門委員で県の建築関係の部長経験停年退職者。
コンクリート強度も問題の一つになった事件で、 建築士なら知っているはずのシュミットハンマー試験を知らず、 頓珍漢な反論となり、 体面を取り繕う言動に終始。
③鑑定人の法廷証言忌避
裁判長が鑑定人を反対尋問から庇って法廷証言を避け、 文書による質疑応答とした。
結果的に、 基礎関して無知な鑑定人であった事もあって、 最終文書は被害者には有利なものとなったが、 裁判官宛の非公式意見書であった。
④劣等意識のある調停委員
八王子支所の調停委員 (土地家屋調査士) は建築士の同伴におどおどし発言はなかった。
⑤調停委員の恣意的発言
東京地裁調停委員、 裁判官でもないのに、 根拠もなく 「修補に要する費用の満額は認めない」 と恣意的発言があった。
⑥調停委員の恣意的発言
東京地裁調停委員、 隣接工事の被害で裁判官でもないのに、 根拠もなく一部 「工事被害を認めない」 と恣意的発言があった。
⑦無知な鑑定人
東京地裁鑑定人、 基礎底盤の鉄筋かぶり厚さ不足 (建築基準法施行令違反) であるにも拘らず、 敷地が高台である事を理由に瑕疵と認めなかった。 しかし、 高裁では認めた。
⑧愚かな鑑定人
建設業者推薦の鑑定人、 恣意的判断に対する尋問に立ち往生。

【筆者が推定している鑑定人の指名方法】
双方異論が無い人と言う事で双方から条件を聞き、 団体の推薦者、 または裁判所が建築の専門調停委員の中から選任される事が多いようである。
①一方から推薦、 相手側の合意。
②裁判所に一任。
①②何れか不明であるが一年に3件程度 (昭和53年以来14件、 平成10年は5件、 前後年間1~2件) は (社)日本建築家協会 (JIA) 関東甲信越支部に鑑定人推薦依頼がある。
事例=私が関係した事例であるが、 ある事件で双方からそれぞれ推薦した鑑定人の何れも合意されず、 一方の代理人からの助言で、 筆者に被害者から相談があった例で、 「公益性のある〇〇団体が推薦する人」 とする助言で、 裁判所に申請、 それが採用された。 それが結局、 筆者に廻ってきたが、 それは事前に 「その団体が推薦する人」 と申請すれば相手は拒否する理由がないはず。 その地方のブランチには受け皿がないので結局、 団体本部に回送されるはずである。 そうすれば私が関与できるからと話してあった。 その団体で鑑定人の経験者は当時、 筆者だけであったので、 他のメンバーに私が黒子になる事を条件に体験させた事もある。
その立候補した鑑定人は劣悪で、 その上、 費用だけは高額に求め、 鑑定の内容は悪く、 代理人からの話しでは余り役に立たなかったとの事であった。

【建築士の現状】
建築士人口 (登録者数:平成12年3月31日現在、 財団法人:建築技術教育普及センター調べ)
1級・2級は昭和25年以来、 木造建築士は昭和59年以来の通算登録者。 20数年前、 年次報告制度が廃止されたので現状の人数ではない。
・1級建築士:292,620
・2級建築士:625,719
・木造建築士: 13,103
(社)日本建築士会連合会が行った 「建築士実態調査」 の報告書に依れば、 調査期間・平成2年9月1日~平成5年5月27日迄のサンプル調査からの推定 (国政調査の生存率) 生存者は以下に示す。
平成2年時点の推定生存者
・1級建築士:205,631
・2級建築士:463,858
・木造建築士:11,584
2年ほど前の話しであるが、 友人の都庁の役人に建築士資格の有無の調査を依頼したが、 「昭和46年以降の登録建築士は名前だけでは、 資格の有無は判明しない。 登録番号が判らなければ」 との事でできなかった。 そうだとすれば、 資格を詐称しても判明し難い事になる。

【建築士とは】
(1) 建築士 (建築士法:第1条)
建築物の設計、 工事監理を行う技術者の資格。
以下の業務を行うことができる (建築士法:第21条)。
・建築工事契約に関する事務
・建築工事の指導監督  (建設業の業務)
・建築物に関する調査又は鑑定
・建築に関する法令又は条例に基く手続の代理。 (代願業の業務)
(2) 建築士の業務は、 設計と工事監理業務 (総括設計〈意匠設計〉、  設計・監理) の他、 専門化した以下の業務を行っている。
(日本建築士会連合会調べ)
構造、 設備 (電気・給排水衛生・空気調和等)、  積算、 工事指導監督、 現場管理、 技能労務、 調査鑑定、 手続代理、  敷地選定等の企画、 研究・教育、 行政、 その他。

【建築士、 および事務所の団体と特質】
(1) 各地方の 「建築士会」
建築士であれば誰でも任意に加入できる。 独立した設計・工事監理業、 ばかりでなく、 建設業者、 不動産関
連業者、 その他の建築士が加入している。
「(社)日本建築士会連合会」 が各地の建築士会をまとめている。
(2) 「(社)日本建築家協会」 各地方支部
設計・監理 (法令上の業務〈工事監理〉ばかりでなく、 民事契約上の監理業務) を専業としている、 経過3年以上の1級建築士の団体。
(3) 各地方の 「建築士事務所協会」
建設業者の設計部も建築士事務所の登録をし加入している。
設計・監理専業事務所も加入している、 専兼混在団体。
「社団法人・日本建築士事務所協会連合会」 がまとめている。

【建築士の業態】
ごく大まかに言って、 約三分の一しか、 本来の業務である 「設計」 「工事監理」 をしていない。
更に、 確認申請の二分の一が建設業の中の登録事務所の申請との話しもあるので、 六分の一が独立した設計事務所の業務となる。 それも代理者専業、 および、 建設業や不動産業に隷属した設計事務所を含めてであるので、 純粋に自由独立しているのは十分の一以下と推定される。   以上   

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