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パネルディスカッション「裁判所における欠陥住宅鑑定のあり方」 (3) 鑑定人協議会の報告と建築訴訟改革の方向 重村達郎 (大阪・弁護士)

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重村達郎 (大阪・弁護士)

昨秋、 全国の各主要地方裁判所の主催により、 裁判官・弁護士・建築士を交えた鑑定人等協議会が開催された。
既に、 最高裁は、 知的所有権・医療過誤・建築・労働各事件について、 その専門性・技術性と訴訟当事者の専門的知識の不足故に争点整理や鑑定に時間を費し、 ひいては裁判が長期化して国民の司法に対する信頼を損なっているとの認識のもとに、 改革の方向を打ち出している。
建築訴訟においては、 大阪地裁裁判官グループによる 「建築関係訴訟の存り方について」 及び 「大阪地裁での不調停事件への取組み」 と題する司法研究報告が公表されており (判タ 1029号、 同 1035号)、 詳細は同報告に譲るが (前者は大会参加者には配布済み)、 そこに、 裁判所が考えている建築訴訟改革の方向が集約されている。
その要点は、 建築訴訟の早期解決のためには充実した争点整理を迅速に行うことが肝要であり (もっとも、 これは何も建築訴訟に限ったことではない)、 そのために、 ①争点整理の初期の段階から証拠調べとしての鑑定を採用し、 建築士等専門家の協力をえて、 重大な瑕疵に重点をおいた争点整理手続により早期に争点を確定したうえで鑑定を実施すること、 また、 ②鑑定と不調停とを適宜振り分け、 付調停の積極的活用をすすめること、 である。
そして、 東京や大阪では建築専門部や専門家による参審制も視野に入れて、 建築士や弁護士の理解と協力をえたいというねらいのもとに上記協議会が開かれ、 各地域ネットに所属する弁護士も各弁護士会代表として意見を述べたわけである。
承知のとおり、 建設工事紛争審査会や簡裁での調停委員による調停や裁判所の選任による鑑定人の鑑定については、 総じて、 欠陥住宅被害者側の弁護士には評判が悪い。 それは、 これらについて各建築士団体推薦による名誉職的な選任がなされるとともに、 構造や設備等その専門性が十分考慮されず、 また、 明確な建築基準法違反があっても安全率を見込んでいるので瑕疵とは認定しないなど、 建築業者側にたった判断がなされることが多いからである。 また、 とりわけ、 東京地裁などでは訴訟当事者の意向を無視して裁判官が強引に付調停に回そうとするなどの意見も会員から寄せられている (付調停については沢田和也弁護士による報告 (消費者法ニュース最新号 「付調停における欠陥住宅紛争処理の実態」 を参照)。
我々は、 長期化している建築訴訟の改革の必要性を否定するものではないし、 欠陥現象とその補修の経緯等についてだらだらと書面のやりとりをするのではなく、 欠陥現象の背後にある原因を突き止め、 瑕疵一覧表を作成するなどして、 耐火性能や構造上の重大な瑕疵に重点をおいた効率的な争点整理をするよう心がけるべきことに異論はない。 もっといえば、 ネット会員は、 予め、 建築士の協力をえて十分な調査をして私的鑑定書を作成し、 その中で、 具体的な瑕疵の内容と法違反の有無、 その欠陥原因とそれにみあった補修方法・金額も提示して、 これらをふまえた訴状にしているのが通常であるが、 残念ながら、 建築訴訟の大部分はそこまでいっていないのが実情である。 また、 裁判所は、 私的鑑定書については、 一方当事者の手になるものとして基本的に信頼を置いていない一方、 裁判所が任命した 「公正な」 鑑定人による鑑定結果に対しては、 その内容がずさんなものであっても、 それに無批判にのっかって判決を書く傾向が厳然として存在することは否定できない。  それだけに、 裁判所による鑑定を実施し判決まで想定される事件と不調停に回し当事者の互譲による解決をめざす事件との適正な振り分けが肝要であるとともに、 当事者への十分な説明とその同意をえて付調停に回した事件でも、 不調で訴訟に戻った場合、 調停での現地調査結果や調停委員の意見が当事者に開示されるよう保証すること、 また、 鑑定人の選任も、 その専門性に配慮し、 名誉職的な選任を排して、 住宅取得者が泣き寝入りを強いられることのないようにすることが必要である。
新聞報道によれば、 この4月から東京・大阪地裁には、 医療過誤訴訟とともに、 建築訴訟を専門に扱う専門部ができ、 新件の建築訴訟はすべて、 そこで審理することになるようである。 今後とも、 この改革の動きを注視し、 対応したい。

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