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パネルディスカッション「裁判所における欠陥住宅鑑定のあり方」 パネルディスカッションの概要 木内哲郎(京都・弁護士)

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木内 哲郎(京都・弁護士)

大会1日目上記をテーマにパネルディスカッションが行われた。
建築関係訴訟の審理のあり方について、 裁判所サイドから判例雑誌を通して、 一定の見解が示され、 さらには、 全国の地方裁判所単位で、 鑑定人協議会が次々と開催され、 各地の全国ネット会員が協議員として参加しているという状況下で行われたもので、 誠にタイムリーな企画であった。 パネラーは国民生活センター顧問の伊藤學建築士 (東京)、 地元九州から山上知裕弁護士と簑原信樹建築士、 そして関西ネットの雄、 重村達郎弁護士である。 司会は、 京都ネットの私。
~なお、 この原稿は大会後2ヶ月以上経過した後、 当時の私の手控えをもとに書いたもので、 各パネラーの発言内容については想像も混じっています。 正確には各人の記事をご参照下さい~

まず、 伊藤建築士から裁判所における鑑定人選任の実情の報告がなされた。 鑑定人予備軍となる調停委員が、 定年退職時に後任を紹介するという個人的なつながりのみで選任され、 審査制度もなく、 個々の建築士の専門分野・知識等が考慮されていないという問題点を指摘された。
続いて、 山上弁護士から実に深刻かつ問題のある裁判所鑑定例が紹介された。 裁判所が1審・2審と2度にわたって選任した鑑定人の鑑定につき、 その判断方法が恣意的かつ判断基準が不明であるうえ、 しかも鑑定費用について訴額との兼ね合いを全く考えず、 私的鑑定の3~4倍と非常に高額を請求されたとのことである。 裁判所が選任する鑑定人がいかにいいかげんであることか!
次に、 私的鑑定で裁判鑑定を批判してきた立場から、 簑原建築士が裁判所鑑定の問題点を指摘された。 裁判所鑑定では鑑定人の経験的、 恣意的判断が優先し、 法体系的、 分析的判断に欠けている。 また、 私的鑑定と違い、 鑑定事項の絞り込みが難しく、 その結果、 調査がどうしても網羅的なものとなり鑑定費用が増大するうえ、 専門分野外の鑑定まで行わざるをえないといった問題点を指摘された。
最後に重村弁護士が既に行われた全国各地での鑑定人協議会での議論の状況を報告された。
そして、 各パネラーによる討論となり、 会場からも、 熱心な意見が出された。 東京地裁では 50%ちかい建築紛争が調停に回付されている実情があり、 争点整理段階からも法的素養のない建築士が関与するのは問題であるとの意見。 建築士を選任する際、 各建築士の専門分野を考慮されていないのが最も問題で、 とりわけ構造についての専門知識のない者が選任されている例が非常に多いとの意見。 さらに、 とりわけ地方の裁判所では裁判所鑑定にしろ私的鑑定にしろ協力建築士がそもそも見つからないとの切実な意見。 裁判所鑑定は屋上屋を重ねるだけで不要であり、 私的鑑定の応酬のなかで、 裁判官の心証が形成されれば足りる筈で、 裁判所鑑定の採用は断固反対すべきという極めて説得力に富む意見など出され、 会場からの意見が白熱しました。

以上のようなパネルディスカッションは、 全国ネットの大会としては初めての経験ではなかったかと思いますが、 全国各地の実情や問題点が報告され、 全国大会ならではの醍醐味が存分に発揮されたものと思います。 これからはこの議論を発展させ、 全国ネット会員の血となり肉とするかが今度の課題でしょう。

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