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パネルディスカッション報告

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木内哲郎


1 基調報告 
河合敏男事務局長から,リフォーム問題の現状が報告された。国民生活センターに寄せられた相談件数は07年度以降も5500件前後もあるそうである。内容的には詐欺的リフォームと破壊的リフォームとの大きく2つに分類できるとのことです。どちらも規制や監督など事前予防の方策がとれるが,現状では,例えば弁護士会に委託されたリフォーム相談や紛争解決のADR設置のような事後的救済しか考えていないところがある。国交省は,現状の登録業者さえ監督ができない状況にあるのだから,まして無登録業者などまで監督は不可能だと言って,リフォーム問題の対策は投げてしまっている状況がある。しかし,本当にそれでよいのか,やろうとしないだけなのではないか。現在,政府は住宅の新規供給からストック重視への政策転換をはかっており,リフォーム工事が増加しているので,早急な消費者保護対策が必要でないかと問題提起をされた。
2 パネルディスカッション
    パネラーは,河合さんの外,平泉憲一弁護士,石黒一郎さん,木津田秀雄建築士,そして,司会は私であった。
  (1)  まず,河合さんから,破壊的リフォーム工事での被害事例報告があった。続いて,平泉さんからは,詐欺的リフォーム工事での被害事例の報告があった。高齢者がターゲットにされた次々リフォームの事案である。被害金額も大きく,訴訟にも発展し,クーリングオフ,不法行為など認められたものの,相手方の資力の関係で被害救済は一部にとどまったとのことである。この種のリフォーム被害では,事前規制が何より実効的である。リフォーム瑕疵担保保険による救済も考えられるが,これだと一部欠陥リフォームにはある有効な面はあっても,詐欺的なリフォーム工事ではカバーは難しいとの報告であった。
  (2) 木津田さんからの被害事例報告は,パワーポイントを使ったビジュアルなものであった。耐震補強になると言われてリフォーム工事をしたところ,あるべき所に筋交いがなく,不信に思った依頼者が弁護士を入れて交渉しようとしたところ,途中で業者がいなくなったという救われないお気の毒な事案であった。
  (3) 石黒さんからはレジュメが用意され,リフォーム工事が必要とされれる既存の建物の現状報告がなされた。統計上,耐震改修の必要な建物が多い。国や各市の統計上の数字よりも棟単位で考えると改修必要な建物はずっと多くなると言う。また,住宅土地基本調査によれば住宅所有者による現状建物に対する不満を持つ人が多いとのことである。木造戸建て住宅については,人口急増期に乱造された粗悪な建物がたくさん存在しおり,①壁の配置バランスや壁量が少ない建物が多い。②壁があっても柱の引き抜き防止措置(金物など)が行われておらず壁の力を最期まで発揮しないおそれがある。③梁せいの極端に小さく鉛直加重に対して問題があるもののある。④雨水浸入やシロアリなどにより土台が腐っているものがある。等々,耐震改修する建物で問題がないものはまずないそうである。
  (4) 木津田さんから,日経ホームビルダーのアンケートで,50%以上の工務店が新築物件についてゼロワン状態(年間0もしくは1棟)になっており,業界全体がリフォーム工事へシフトしている。が,リフォーム工事は新築工事にない難しさがあり,きちんとやる業者といいかげんな業者が混在しているとの指摘があった。多くの業者のリフォーム工事の取組み部品交換型リフォーム工事ととらえるのがメインだそうです。
  (5) リフォーム工事の問題として,見積書がいいかげんなケースもよく見られる。石黒さんからは,大手業者(○○そっくりさん)で,一式見積もりしか出さない事例が報告された。「めくってみないと分からない。」というのが業者の殺し文句になっているが,何をどれだけ工事するのか最善の調査をし,説明するのが業者としての義務というのが木津田さんの指摘である。平泉さんからは被害者の無知につけ込む業者がいるので,消費者保護の強化が必要との指摘があった。
  (6) 建築制度からリフォーム工事をみた場合,現行制度は,建築確認が不要で第三者の目が入らないるのが現状。耐震改修補助がなされる場合にかろうじてチェック出来る程度。木津田さんは建築士によるチェックが行われるようにすべきとの意見。規模の大小を問わず,建築士の関与(設計・監理)を義務付けるべきだと言う。
  (7) 他に,予防のための方策として,監督官庁による積極的な関与が必要との意見が多かった。小規模リフォーム工事でも建設業の許可を必要とするとか,建築確認ないしはリフォーム工事の届け出を義務づけるべきとの意見が出された。同時に設計が有料であるとの消費者自身の意識改革も必要との指摘もあった。
  (8)  会場からは,詐欺,恐喝事案も多く,予防のための方策には警察の取り締まり強化を入れるべきとの意見,そもそもリフォーム工事の定義をきちんとすべきとの意見,建築士でリフォーム工事のことを分かっている人はごく一部なので,建築士による関与がどこまで期待出来るのかとの意見,裁判所による救済も期待出来ないとの意見等々出された。
  (9)  吉岡幹事長からはアピール案の意見の趣旨と理由が噛み合ってないとの心温まる意見も出て,当日はアピール案採択までいかず,意見の趣旨は幹事会等で練り直すということになった。

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