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ロスアンゼルス市のインスペクション制度の調査

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弁護士 齋藤拓生(仙台)

1 はじめに
本年5月7日から10日にかけて、吉岡さん、加藤哲夫さんと私の3人で、ロス市を訪問して、同市のインスペクション制度の調査を行いました。1996年にも、日弁連土地住宅部会の有志で同様の調査を行っています(その成果をまとめたのが、民事法研究会から出版された「今、日本の住宅が危ない」です)。
今回の調査は、耐震偽装事件に接して、「どうしてこうような前代未聞の事件が発生してしまったのか。やはり検査確認機関の民間開放に大きな問題があったのではないか。行政の役割を重視するロス市のインスベクション制度の実情をもう一度自分たちの目で確かめてみよう。そこから、制度改革の契機が見えてくるのではないか」という問題意識に基づいて企画されました。
調査にあたっては、996年と同様、全国ネットの会員でもあるトム亀井さんに何から何までお世話になりました。トム亀井さんのご配慮により大変充実した調査を行うことができました。トム亀井さんに心より感謝申し上げます。

2 調査結果
訪問先は、ロス市建築安全局(DBA)、インスベクションの現場、SMITH-EMERY COMPANY(ロスで最大の民間検査会社)、ICC(国際建築基準協会)でした。各訪問先でのヒヤリングした結果の概要は、次のとおりです。
① ロス市では、市のインスペクションと民間検査機関によるスペシャルインスペクションが行われる。
②  インスペクションは、あくまでも行政(建築安全局=DBA)の責任で行う。民間検査機関は、市の代理人として、特定の工事についての検査(スペシャルインスペクション)を行う。
③ スペシャルインスペクションが必要な特定の工事は、UBC(全米建築基準)で定められている(詳しくは、「今、日本の住宅が危ない」243~245頁)。 
④ 市のインスペクターは、要所要所で必ず現場に来る。細かいチェックは、スペシャルインスペクターが行う。
⑤ DBAには、プラン(図面)チェック担当者が、200人いる(ロス市の人口は、約355万人)。
⑥ 市のインスペクションの内容としては、木造戸建住宅の場合であれば、1人のインスペクターが担当し、基礎・骨組・屋根等6回程度のインスペクションを行う。費用は、建築費の3~4%程度である。
⑦ 学校と病院についてのプランチェックとインスペクションは、一般の建物よりも、格段に厳しい。
⑧ インスペクターについては、ICC(国際建築基準協会)のテストに合格することが必要である。場経験が重視される。学歴は問わない。
⑨  アメリカでは、インスペクションによって市民の生命・身体、財産を守ることは、あくまでも行政の責任であるという揺るぎない信念がある。  
インスぺクションを民間に委託することもあるが、行政は強力なコントロール権限を留保する。日本のように民間機関への丸投げはあり得ない。980年代に、アメリカでも、行政のインスペクショが必要なのかという意見があったが、多数意見とはならなかった。

3 若干の感想
日本では、確認・検査の民間開放が行われましたが、アメリカでは(少なくともロス市では)、「インスペクションによって市民の生命・身体、財産を守ることは、あくまでも行政の責任である。」との信念に基づいて、「プランチェックは、行政のみが行う。インスペクションについて、スペシャルインスペクターを活用するが、あくまでも行政の責任において行う」という体制が堅持されています。
たしかに、行政が何もかも行うことは不可能であり、民間機関を活用することは、必要かつ有益といえます。しかしながら、民間会社は、営利追求との関係で、どうしても「早く甘い」確認・検査の誘惑に陥りがちです。検査・確認業務は、本来、市場原理になじまない分野といえます。
それゆえ、検査・確認業務について民間機関を活用するとしても、ロス市のように、あくまでも行政を責任主体とする制度を再構築すべきであり、現在の民間開放は根本的に見直しが必要ではないでしょうか。これが、今回の調査に参加した3人の一致した感想です。

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