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住宅品質確保促進法の成立と今後の課題 

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重村 達郎(大阪・弁護士)

昨年の通常国会で成立した住宅品質確保・促進法案により、 住宅性能表示制度が創設された。 これは、 契約に際し住宅性能を事前に相互比較できるよう新たに性能の表示基準を設定すると共に、 客観的に性能を評価できる検査能力をもった建設大臣指定の機関による住宅性能評価書の交付を通して、 住宅の品質の確保を図ろうとするものである。 評価される住宅性能には、 構造耐力や遮音性・耐火性などの他、 建築基準法では定めのない省エネルギー性や高齢者対応、 シックハウスーホルムアルデヒド対策なども含まれている。 逆に言えば、 今後、 住宅メーカーは、 各住宅の特質をウリにして、 宣伝し、 請負又は販売することが可能になるのである。
また、 住宅性能評価機関は、 設計・引渡の2段階で住宅性能評価書を作成することとなっており、 これらを添付して契約を交わした場合には、 その記載が契約内容となるから、 引き渡された住宅が性能をみたしていなければ、 契約責任を追及できる。 更に、 この制度を、 利用するか否かは住宅供給者又は取得者の選択に任されているが、 大体、 建物価格の0・5%強の登録料が想定されており、 事実上住宅取得価格にオンされることになろう。
無論、 この制度を利用することによって、 建物の最低基準 (1条) を定めた建築基準法の規定を潜脱することは認められないから、 最低ランクが建築基準法の基準とほぼ等しくなり、 完成検査済証をとることは、 当然評価書交付の前提となる。 また、 性能評価住宅においては、 基礎、 屋根、 内装の各工程及び竣工時と4回、 性能評価機関による現場検査が予定されており、 工事司監理報告書のチェックもなされるから、 通常よりもグレードの高い住宅になることが予想される。
建設省では、 この制度を利用する住宅は、 初年度全新築住宅戸数の10%前後、 5年目の制度安定期で40%程度と想定している。 新築住宅から出発し、 個々の建物の検査・修補履歴等を整備することによって安心して買える中古住宅売買市場を整備・活性化させ、 高齢化社会において量から質の時代に対応した住宅全体の良好な社会資本としての確保をねらっているのである。
既に、 建設大臣告示として、 性能表示基準と評価方法基準が定められ、 その後指定をうけた性能評価機関の研修等を経て、 以後締結した契約に適用される性能評価住宅が実際に出廻るのは今年の秋から冬以降になろう。
しかし、 右基準において、 既にいくつかの問題点を指摘できる。 例えば耐火性能について、 大都市の防火・準防火地域にある3階建て住宅等においては建築基準法施行令や条例の規定の下限であっても全体のランクの中では相対的に上位になる等全国一律の規制に無理がある点、 ホルムアルデヒド等の対策についても、 材料のみの放散量によるランク付けが主で部屋自体のホルムアルデヒド等濃度の総量規制になっていない点などである。
また、 同法では、 規格化住宅などの標準設計書があるものについては、 性能評価を効率化-簡素化する措置が講じられるから、 基礎工事など現場での施行如何では問題が出てくることも十分ありうる。 結局、 建築基準法が本来予定している日常的な工事監理がいかにきちんとなされているかが、 欠陥住宅を防止するためのポイントになろう。
更に、 従来からある住宅保証機構の住宅性能保証制度は、 保険制度とリンクすることにより、 定められた住宅性能を担保する役割を果たすであろうし、 建築途上での業者の倒産に対処するための完成保証制度の活用など付加的なサービスの影響・選択も今後の課題となろう。
いずれにせよ、 これらの性能表示に耐えうるためには、 一定の技術や商品開発力が前提となる。 建築業界も、 大手ゼネコン・中小工務店を問わず、 勝ち組と負け組とに別れていくであろうが、 この制度にのらない住宅にこそ欠陥住宅が多発する潜在的可能性が高く、 問題は依然として残されている。

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