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判決紹介   ・施工途中において工事の瑕疵を理由とする解除が認められた事例(仙台地裁平成14年12月3日判決) 鈴木覚 (宮城・弁護士)

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施工途中において工事の瑕疵を理由とする解除が認められた事例
(仙台地裁平成14年12月3日判決)
鈴木 覚 (宮城・弁護士)

1 本件は, 木造2階建ての注文住宅に関する請負契約を締結し, 工事着工後間もなく, 基礎工事の施工に基礎コンクリートの施工不良が見られため, 不審を感じた施主が業者に改善を求めていたにもかかわらず業者が瑕疵を認めず工事を続行する態度に出ていたことから, 施主において工事を解除したという事案である。
仙台の斉藤睦男弁護士及び小野寺義象弁護士が担当された事件である。

2 訴訟においては, ①基礎立ち上がりの幅寸法不足, ②施工された基礎コンクリートの強度不足等の瑕疵があり, 契約条項における 「契約の目的を達成することができないとき」 に該当するものとして同条項の解除を主張し, 施工された基礎コンクリートの撤去と, 既払い金の返還及び転居中の賃料, 慰謝料等の損害賠償を求めた。 ②は, 公庫基準上, 布基礎のコンクリート強度については, レディーミクストコンクリートの場合の設計基準強度は特記がなければ180キログラムとされ, 設計基準強度180キログラムを得るため, JIS規格品を用いる場合の発注時の呼び強度は, コンクリートの打ち込みから28日後までの期間の予想平均気温が15度以上の場合は180キログラム, 10度以上15度未満の場合は210キログラム, 5度以上10度未満の場合は225キログラム等と定められていたにもかかわらず, 施工業者として気温等 (当時は冬期間であり平均気温が5~7度程度であった) に配慮して, 225キログラムの呼び強度を有するレディーミクストコンクリートを発注すべきところ, 何ら配慮することなく特に呼び強度を指定せずにコンクリートを発注し, その結果, 呼び強度180キログラムのコンクリートが納入, 施工された点を問題にしたものである。
これに対し, 業者からは, 施主の都合による解除であるから, 施主は業者の損害を賠償しなければならないとして, 得べかりし利益の損害賠償を求めて反訴を提起していた。

3 判決では, ①の点について 「本件布基礎は, その幅が120ミリメートル未満となる部分が少なくとも32か所存在し, その最小幅は110ミリメートルであった」 と認定し, 「本件基礎工事は, 本件布基礎の幅に関し, 公庫基準に違反する瑕疵があるというべきである」 と判断したものの, ②の点については, 「最後に検査が行われた平成12年3月27日の時点で, 本件布基礎から採取された8本の供試体がいずれも公庫基準の設計基準強度180キログラムを上回っている以上, 本件布基礎全体が同基準を下回っているものと推定することはできず, 他に本件コンクリートの圧縮強度が同基準を下回っていることを認めるに足りる証拠はない。」 とされた。
その上で, 「本件契約条項16条2項3号にいう契約の目的を達成することができないときとは, ア被告の債務不履行に基づく瑕疵が重大であってその修補が不可能である場合, または, イ瑕疵の修補が可能であっても被告がそれを拒絶している場合を意味すると解すべきである。
そして, 請負契約は, 契約の相手方の個性に着目せず, 目的物の一回的給付のみを目的とする売買契約とは異なり, 注文者が請負人の技量を信頼して請負人に目的物の完成を委ね, 請負人はかかる信頼を受けて, 契約に定められた一定の期間内にこれを完成して注文者に引き渡すことを目的とする契約であって, 注文者の真意に沿う目的物を完成するためには相互の十分な意思疎通が不可欠であることはいうまでもないから, 請負人が瑕疵の存在を争って, 瑕疵が修補されない間に, 相互の信頼関係が完全に損なわれたような場合には, もはや瑕疵を修補して契約の目的を達成することはできないというべきであって, このような事情があるときは, 瑕疵の修補を拒絶した場合に当たると解すべきである。」 と判示し, 本件施主からの解除は瑕疵の修補が可能であっても業者が拒絶している場合に当たり, 「本件請負契約は, 被告の債務不履行により契約の目的を達成することができないことが認められる」 とし, 上記契約条項に基づく解除として有効であるとした。 その結果, 基礎コンクリートの撤去, 施主からの既払い金の返還及び損害賠償を認め (もっとも施主のその後の行動等から損害賠償を5割減額した), 他方で業者からの損害賠償の反訴を棄却した。

4 民法641条 (無理由解除) によれば, 請負人は仕事が完成しない間はいつでも請負契約の解除ができるとされているが, この場合には, 業者に生じた損害を賠償しなければならないと規定されており, この業者の損害には, 業者が当該請負契約で得られたであろう利益を含むと解釈されている。 しかし, この民法641条ではなく債務不履行 (工事が完成した後は瑕疵担保責任となる) による解除であれば, 業者に対しかかる損害賠償をする必要がないばかりか, 施主側に損害が生じていればその損害賠償も求めうる。
したがって, 施工途中に施主が請負契約を解除する場合には, このような無理由解除なのか, 業者の債務不履行による解除なのかが争われることとなる。
工事施工途中に施主が瑕疵を発見したとしても, その瑕疵の補修が可能であり, 業者が瑕疵を補修するのであれば, 直ちに債務不履行に当たるものではなく, 業者の債務不履行と言えるためには, おそらく, 上記事案の契約条項にある 「契約の目的を達成することができないとき」 と同様の事由が必要になってくると思われる。 本件判決は, 契約の目的が達成できないときについて, 「ア被告の債務不履行に基づく瑕疵が重大であってその修補が不可能である場合, または, イ瑕疵の修補が可能であっても被告がそれを拒絶している場合を意味すると解すべき」 とし, 後者イについてさらに, 「請負人が瑕疵の存在を争って, 瑕疵が修補されない間に, 相互の信頼関係が完全に損なわれたような場合には」 業者が拒絶している場合に当たるとしたものであり, 同種の事案において参考になると思われる。

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