勝つためのシックハウス訴状作成法 ~シックハウス部会からの報告~ |
弁護士 中島宏治(大阪) |
1 はじめに 欠陥住宅全国ネットがシックハウス問題に本格的に取り組み始めたのは、2003年に入ってからである。同年5月に開催された札幌大会(第15回)において、シックハウスを中心テーマとして取り上げ、基調報告等の現状分析がなされた。 同年11月に開催された長野大会(第16回)では、より一歩つっこんで、シックハウス問題において「勝つための訴状作成法」「勝つための鑑定書づくり」の検討がなされた。本稿は、そのうち「勝つための訴状作成法」に関する報告である。 2 訴状構成案 長野大会においては、シックハウス訴状ひな形をコピーして配布した。弁護士は、ひな形があれば急に仕事がはかどる人たちである。もちろん、改善すべき点は多数あると思われる。今後の検討をふまえて、より精度の高い訴状ひな形を作成していきたい。 今回は、紙面の関係上全文を載せることができない。構成案だけを示し、次章の論点整理のところでポイントについて触れていきたい。 (シックハウス訴状構成案) 第1 事案の概要 第2 当事者 第3 シックハウス問題について 1 シックハウス症候群とは 2 シックハウスの社会問題化 3 具体例 第4 ホルムアルデヒド等の規制について 1 シックハウス症候群とホルムアルデヒド 2 ホルムアルデヒドに関する規制等の流れ 3 厚生省の指針値 4 その他の指針等 5 建築基準法の改正 第5 本件建物におけるシックハウス問題 1 本件建物の建築概要 2 原告の入居状況 3 シックハウス問題の発覚および交渉経緯 4 室内空気測定結果 5 北里研究所病院による検査結果 6 室内空気汚染の原因 第6 本件建物の欠陥ないし瑕疵 1 「瑕疵」「欠陥」の定義と本件建物の欠陥 2 厚生省指針値違反 3 設計施工ガイドライン違反 4 住団連指針違反 第7 被告の責任 1 瑕疵担保責任 2 債務不履行責任 3 不法行為責任 第8 損害について 1 シックハウス被害による損害とは 2 損害項目 1)補修費用 2)仮住まい費用 3)引越費用 4)調査費用等 5)特別対策費等 6)欠陥に基づく慰藉料 7)医療費等 8)交通費等 9)休業損害等 10)健康被害慰藉料 11)弁護士費用 3 損害論まとめ 第9 結語 3 論点整理 (1) 被害論 被害論は、被害者がシックハウス症候群あるいは化学物質過敏症に罹患しているのかという形で争点とされる。現段階では、北里研究所病院の診断書ないし検査所見によって立証しているケースが多い。 (2) 因果関係論 因果関係論は、被害の原因が住宅以外にあるのではないかという形で争点とされる。 (3) 責任論 責任論は、被害者がシックハウス症候群あるいは化学物質過敏症に罹患することを予見し、結果を回避できたかどうかという形で争点とされる。 結果回避可能性については、予見可能性が認められればさほど責任をみとめるに支障はないだろう。予見可能性に関しては、平成9年6月にホルムアルデヒド に関するガイドラインが設定された時期、遅くとも平成10年3月に設計施工ガイドラインが出された時期には、化学物質過敏症あるいはシックハウス症候群が 発生することが十分予見できたと言えるのではないかと考えるが、裁判例でこの点の明確な認定がなされるに至っていない。 4 今後の課題 被害論、因果関係論については、ある程度到達点が見えてきた。今後は、責任論でどこまで勝負できるかが問題である。欠陥住宅全国ネットでも、今後情報を集約し、主張レベル、立証レベルでの議論を深めたい。 |
(欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第11号〔2004年4月28日発行〕より) |
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