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勝つための鑑定書づくり 木津田 秀雄(大阪・建築士)

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木津田 秀雄(大阪・建築士)

今回岡山大会での発表のタイトルは 「勝つための鑑定書づくり」 でしたが、 実はこれまで裁判で勝訴判決を得たことがありません。 しかし木造3階建てを始め10例近い和解による補修工事や買い取りなどを行ってきています。 その経験に基づき、 特に依頼者と施工者、 売り主との交渉の進めかたなどについて、 私が建築の専門家としてどのように関わっているのかについてお話しします。
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まず欠陥住宅のおさらいになりますが、 欠陥住宅の発生には主に3つの要因があると考えています。 一つは 「造り手が無知である」 ということです。 始めから悪いことだと解かってながら欠陥部分を造ってしまうと言うより、 知らないからとんでもないことができると言った類です。 木造3階建てには構造計算が必要であるとか、 筋交いや金物の取り付け方を理解していないとか、 コンクリートや配筋の基本を理解していないなどの知識不足に加え、 自分が行ったことが単純に法律や基準を守っていないということだけではなく、 実際に地震が来たときにどうなるのかをイメージできる想像力に欠けるというところです。 次には 「監理者の不在」 です。 これはこの会でお話しするまでもないでしょう。
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最後に 「建築主の無知」 があげられます。 実は、 建て売りをしている不動産会社も建築主の一人なんです。 不動産関係の仕事をしてはいますが、 建築技術については素人です。 そこからの発注で働く工務店としては、 監理者もいなければ、 素人相手に好き放題に手抜きをしているかもしれません。 きちんと仕事をしているだろうと思っていても、 実はいいかげんな仕事をされていて、 それを何も知らずに販売していたというケースもあります。 ある事件では、 売り主と工務店に依頼者の自宅に来てもらったのですが、 売り主である不動産会社の社長が 「なんちゅう事をやってくれてるんや!すぐにちゃんと直さんかい」 と工務店に怒鳴っていました。 このような場合は、 ある意味で売り主の不動産会社も被害者ですから、 売り主と一緒になって施工者の責任を追及するように感じることすらあります。
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当然のことながら、 一般の消費者が建築主になる場合に、 監理者を選定せずに施工してしまっている例なども、 ある意味 「建築主が無知であった」 とも言えると思います。 (現在の社会情勢では厳しい意見かもしれませんが) 施工者との話し合いの場では、 間違いを認めさせると共に、 きちんと補修を行うことが 「施工者の努め」 だと理解させることが必要です。
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依頼者から調査や相談の依頼があった場合、 胡桃設計で特に気をつけている事をお話ししておきましょう。 まず、 契約の内容を充分に確認します。 裁判などになって 「この建物は契約の目的物ではないから、 本来の目的物に補修しろ」 と言う場合の 「本来の目的物」 をきちんと整理しておくことが大切です。 建築基準法に合致していることは当たり前ですが、 例えば公庫の仕様についてなどの内容確認も大切です。
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この時点で 「確認通知書」 や 「検査済証」 などの資料が手に入っていない場合があります。 その場合には依頼者から 「本を読むとこのような書類は、 建物所有者が持つべきと書いてあるが、 まだもらっていないので送って欲しい」 と売り主や施工者に請求すると、 トラブルが表面化していない時点では、 わりと容易に送ってくるものです。 その際に 「これこれの欠陥があるが、 対処方法を提示せよ。 また確認通知書も提示せよ」 という内容で相手に伝えると、 相手が頑なになり、 うまくすれば入手できた資料まで入手できないようになります。
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施工者の中には、 「確かに始めは公庫仕様として売り始めたが、 実際には公庫仕様になっていないし、 購入者もそれを十分理解しているからその分は値引きしている」 など後になってまったく違ったことを言いだす場合が多々あります。 このような事を言わさないためにも、 十分な資料が無い時点ではトラブルを表面化させる前に 「建て付けが悪いような気がするが、 この建物は公庫仕様に間違いないですね」 などと書面を書いてもらい、 「今後のこともあるので、 書面で回答して欲しい」 と連絡しておきます。 そうすると、 この時点ではトラブルが表面化していないので、 施工者がわざわざ 「実はきちんとできていません」 とは答えるはずはなく、 売買の条件どおりに 「お売りした物件は、 公庫仕様に間違いありません」 との返答を受けることができます。
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このような書面を持っていれば、 きちんと調査を行った後に 「公庫仕様ということで購入したが、 その通りになっていなかった。」 と連絡した場合にでも 「そんな約束はなかった」 などということは言えなくなります。 建て売り住宅など間取り図以外に 「契約の目的物」 を示す詳しい図面や仕様書などが無い場合には、 まず何を契約したのかを明らかにする資料をできるだけ収集しておくべきです。 特に 「確認通知書」 などがあれば、 筋交いの位置や種類、 法的な制限などが明記されているため、 調査でもその図面をベースにできるため、 非常に有用な資料になります。
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資料がそろった段階で、 依頼者に再度次のような手紙を書いてもらいます。 「公庫仕様どおりとのお話しでしたが、 心配になったので建築士に調査を依頼したところ、 以下の様な点に不備があるとのことです。 どのように対処していただけるのか書面で回答が欲しいのですが…」 そうすると、 指摘された問題点が 「契約の内容になるのかどうか」 という入口論をクリアして、 まずどのような補修が必要かという話からスタートすることができます。
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胡桃設計では、 数万円の予備調査だけでこのような段階まで進めます。 それは本調査を行うための費用負担を考えてのことです。 我々は仕事で調査を行いますので、 掛かった時間に見合う費用が必要になるわけですが、 依頼者は 「自分の家がどのくらい悪いか」 を知るためだけに数十万円 (場合によっては百万単位のお金) を支払うわけです。 施工者や売り主が補修をする気があるのか無いのか、 また知って欠陥工事を行っているのか、 たまたまの瑕疵なのか、 なども分からないうちに、 調査費用負担をどんどん依頼者に負わせるということは避けておきたいのです。 その数十万円をすべて補修費用に回した場合を考えると、 先行きを見定めずに本調査に入ることはリスクが高すぎます。
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まず施工者や売り主に問題点を指摘しておき 「具体的にどのような補修が必要か提示して欲しい」 と話しておきます。 依頼者側に専門家がついていることを強調してくことで、 まともな補修案を出さなければどうも解決にならないと意識させておくことが大切です。 ここでは依頼者から我々が補修設計を受けたのと同じ程度の補修案が出るまで 「これでは建築基準法を守った建物にならない」 「公庫の仕様とは異なる」 「契約の内容と違う」 などと 「NO」 を言い続けなくてはなりません。
そのうち 「そんなにうちの作った補修内容に文句があるなら、 こう補修してくれという内容を出して欲しい」 と言うことになります。 そうなれば 「被害者側で補修設計を行ってもよいが、 当然費用がかかる。 このようなことになる原因はそちらが作ったのだから、 その費用はそちらで出して欲しい」 ということになり、 相手方の費用で補修設計を行うことも可能になります。 この場合の費用はかならず、 相手方→依頼者→胡桃設計としてもらいます。 そうでないと、 誰の為に補修設計をしているのかという部分が曖昧になってしまう恐れがあります。
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岡山大会では、 吉岡弁護士から 「業者の補修案に乗って解決するのはどうだろうか」 との意見をいただきました。 先に80%でも補修ができればとの話をしたので、 十分な補修ではないのに妥協してはどうかとのご心配だと思いますが、 実際には我々が依頼者サイドで提示する補修内容にまで、 補修方法などを引き上げて初めて和解をするという考え方で進めています。 相手のやりたい補修方法を考えさせるというより、 こちらの費用を使わずに目標とする補修内容を相手方の費用で作り上げる手法として考えていただければと思います。
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補修設計の他、 地盤の問題が予想される場合に相手が 「地盤は悪くない」 と主張した場合に 「であれば、 一度調査をして欲しい」 と言い相手の費用で地盤調査を行なったこともあります。 最終的には補修計画の合意が得られ無い場合にでも、 資料としては使えるため、 その作成費用を依頼者が負担せずに調査が進められるというメリットはあります。
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最後に補修工事を行う際には必ず 「監理者」 を付ける必要があります。 せっかくの補修工事に手抜きがあっては意味がありませんし、 建築基準法の主旨からも必要だと思います。 ただその費用をどちらが負担するかはケースバイケースであり、 建築主 (買い主) の責任として依頼者に負担してもらうこともあります。


岡山大会においてスライドで紹介した車庫部分に使用できる 「壁倍率2・5倍のアーチ型集成材」 が記載されている文献: (財) 大阪建築防災センター発行 「木造住宅の簡便耐震改修マニュアル」 問い合わせ先06-6943-7253
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