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勝訴判決の報告   (4) 溶接不良で勝てる(回収できるかは別)(神戸地方裁判所平成13年11月30日判決) 永井光弘(兵庫・弁護士)、津久井 進(兵庫・弁護士)

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永井光弘(兵庫・弁護士)、津久井 進(兵庫・弁護士)

神戸地方裁判所平成13年11月30日判決 (消費者のための欠陥住宅判例第2集/№20 に掲載)

1. 建物プロフィール
鉄骨4階建て (延べ床面積180・90㎡/1階は店舗、 2~4階はワンルーム)、 請負代金は金4400万円。 契約日平成8年6月8日 (引渡日同9年5月)。 提訴は同10年7月。

2. 請求の内容と判決の結論
(本訴) 請負人と監理建築士は連帯して5831万3500円支払え
(反訴) 原告は請負人に対し326万0460円 (請負残代金追加工事代金) を支払え
これに対し、 判決は, 「請負人は、 原告に対し金4800万及びこれに対する遅延損害金を支払え」 として建て替え前提の損害賠償を認容した (ただ、 原告も請負残代金満額の認容をくらった)。 なお、 監理放棄建築士に対する請求は棄却された。

3. 瑕疵の概要
この事件の建物は悪い鉄骨造の典型で, ①1階鉄骨柱が契約書より実際の施工が細い②設計図書に指示されたダイヤフラムは施工されていない③溶接では完全溶け込み溶接ができていない、 というものだった。 ④は構造強度に影響せずとして瑕疵の認定がされなかったが、 ②③は裁判所鑑定が調査した全ての箇所にわたり不施工が確認され、 結論として 「現場補修は不可能で取り壊し建て替えやむなし」 との判断となった。

4. 勝因
ひとえに裁判所の鑑定結果が良かったからだと思う。 一般的に言っても、 鉄骨造ケースの瑕疵については、 鋼構造に関するさまざまな規定があるおかげで、 構造安全性の不足=崩壊の危険が立証しやすい傾向にあるようだ。 少なくとも、 超音波探傷試験により溶接の程度はかなり客観的に立証できるし、 費用的にもそんなに高くはない。 また、 設計図書に外ダイヤフラムの施工が指示されているのに実物では外ダイヤがない場合、 施工業者は必ずと言っていいほど 「内ダイヤフラム」 は施工してあると主張する(見えないのを良いことに)。 しかし、 現実に内ダイヤが施工されていることはほとんど無い。 調べれば一発で判ることである。

5. その他
実はこの事件は、 訴えを提起し22回の期日を重ねた前任弁護士から判決の半年程前に引継いたものである。 当職らは、 交渉から数えて3代目の弁護士で、 法律扶助の事件だった。
当職らが引き継いだ時点では既に裁判所による (良い) 鑑定が出ており、 当職らは, 証人尋問で、 建築士・本人の尋問3期日を行い、 最終準備書面を提出しただけだから、 本来は当職らの手柄とは言い難い (正木靖子先生本当にありがとうございます)。
ただ、 結構悲しい後日談がある。 一審判決後、 請負人代理人から総額5000万円 (頭金500万その後毎月50万程度分割) の和解の申し出 (この段階では関連会社の支援で支払可能とのことだった) があったにも関わらず、 依頼者がこれを蹴って確定させず、 なんと当方から控訴した (当職らの延べ15時間の説得=馬鹿なことはやめなさい、 は実らなかった)。
しかも、 控訴審第1回期日の2日前に請負人に対する破産宣告決定が出された。 滞納公租公課が破産財団の10倍という状況で、 平成14年夏頃, 請負人に対する控訴は泣く泣く取り下げ。 相被告である建築士に対しては、 100万円の支払を受け和解、 控訴取り下げ、 そのお金の一部は原告の自己破産申立費用に使われた。
欠陥住宅勝訴判決のその後の末路は、 ・・・ほんの少し淋しい (当職の懐も寂しい)。
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