本文へ


勝訴判決の報告   (5) 相殺は慎重に(プレハブ勝訴事例)(神戸地方裁判所洲本支部平成14年4月26日判決 (確定)) 松重君予(兵庫・弁護士)、永井光弘(兵庫・弁護士)

トップ > 欠陥住宅に関する情報 > ふぉあ・すまいる > 勝訴判決の報告   (5) 相殺は慎重に(プレハブ勝訴事例)(神戸地方裁判所洲本支部平成14年4月26日判決 (確定)) 松重君予(兵庫・弁護士)、永井光弘(兵庫・弁護士)

松重君予(兵庫・弁護士)、永井光弘(兵庫・弁護士)

1. 建物プロフィール
軽量鉄骨系プレハブ2階建居宅 (旧建築基準法38条大臣認定建物)
依頼者は、 建物の受領を拒否し、 平成7年10月頃から7年弱もの間争った。
当職 (永井) は、 平成1年段階から参加しており, 裁判官は永井が知っているだけでも3回交替している。 やっかいなことに建物自体は見た目に普通に建っており、 前任の裁判官からは、 当方主張につき全く理解を得られず鑑定も無いまま和解を強く勧告されているような状態だった。

2. 相手方・請求の内容
内容は多岐にわたるので、 下の図を見てください。




3. 判決の結論
A 請負代金請求について、 Xに認容した③損害賠償請求 (1366万) と引き換えにXは請負代金額 (3238万) を支払え。
B Y1Y2Y3は、 連帯して、 Y1Y2がXから3238万の支払 (遅損無し) を受けるのと引き換えに、 金1366万 (一部認容) 及びH7・10・27からの年5分の遅損を支払え
C Y1Y2は、 連帯して金200万円及びH8・12・12からの年5分の遅延損害金を支払え
D なお、 建物収去請求 (①約款による解除、 ②債務不履行解除、 ③民635による解除) は否定。

4. 判決の意義
(1) プレハブ住宅 (旧法38条大臣認定建物) につき、 「大臣認定図書」 にてらして瑕疵を認定した点
(A)。
大臣認定建物についても、 「大臣認定図書」 及び 「マニュアル」 (大臣認定図書をより詳細にした施工者の内部資料であるマニュアル) に照らし、 瑕疵を認定した。
主たる点は、 基礎幅、 基礎配筋の大臣認定図書・マニュアル違反認定 (地盤改良の必要性を認定)、屋根の施工、 雨仕舞いの施工の大臣図書・マニュアル違反を認定した (他にも細かい点多数)。
「大臣認定図書」 等さえ入手すれば、 通常の欠陥住宅訴訟と同じ構造である。
(2) 監理放棄建築士の連帯責任認容した点 (B)
特に、 建築士の責任を認める判示中で (大臣認定建物の) 構造安全性は、 個別の大臣認定図書の通りに施行がなされてはじめて確保される。 仮にも大臣認定図書と相違した施工がなされるならば、 その相違した施工について再度大臣認定を取得しない限りは、 当該建物の構造安全性は保証の根拠を欠いてしまう』 としたうえで、 施工監理の必要性を 『一般の建築基準法の適用を受ける建物より格段に高い。』 と明言している。 大臣認定建物の本質を踏まえた判示である。
(3) 請負代金被告の場合の教訓 (A, B)
請負代金請求被告の場合、 欠陥が発見されたからといって、 すぐに相殺の意思表示をするのは愚の骨頂である。 請負における請負代金請求と修補に代わる損害賠償との関係は、 全額につき原則同時履行であり (最判平9・2・14判時1598―64)、 また、 相殺した場合は差額につき相殺した時から遅延損害金がつく (最判平9・7・15民集51巻6号2581頁。 前記判例の調査官判例解説に記載)。
本ケースで言えば、 請負代金請求を受けた直後に相殺の意思表示をしてしまっていたならば、 差額1873万円 (3238-1365) に、 平成7年頃から年14・6%の遅延損害金をくらったおそれがある (ざっと1900万!)。
したがって、 修補に代わる損害賠償金額が読み切れない場合には、 絶対に相殺の意思表示などすべきではない (全額について同時履行の利益をキープすべき)。 そのまま結審しても引き換え給付判決になるだけだから痛くない。
本判決では、 瑕疵の重大性に鑑み施工者側の履行の提供が認められなかったので、 施工者側のみに引渡時からの遅延損害金がつくといった思わぬおまけまで付いた (これだけで、 ざっと2000万円程得したことになる)。

5. 終わりに
いろいろ盛りだくさんの判決で、 本当はもっと触れるべき点がある。
例えば、 ①プレハブの部材の値段がよく分からないから苦し紛れに主張したユニット単価が採用された点、 ②文書提出命令についてとるべき態度、 ③地盤改良工事のやり方 (ジャッキアップが認められず薬液注入工法)、 ④慰謝料について 「請負人の不完全履行により目的建築に瑕疵が生じた場合、 通常その損害は財産的損害にとどまるから、 賠償の範囲も財産的損害のみに限定されるものというべきであるが、 例外的に財産的損害の賠償だけでは償い得ないような精神的苦痛を被り、 かつ請負人においてこれを予見し、 又は予見し得べき場合は、 慰謝料の賠償も認められる余地がある」 として、 一般の裁判例よりも更に限定したと思われる点、 などである。
消費者のための欠陥住宅判例第2集に間に合わなかったので、 第3集が出るときにもう少しきちんとした解説をしたい (その頃には細かいことはすっかり忘れている?かも知れないが・・・)。

ふぉあ・すまいる
ふぉあ・すまいる新着
新着情報
2021.04.15
消費者のための欠陥住宅判例[第8集]─住宅・宅地被害の根絶へ向けて─
2021.03.04
第49回仙台大会開催のご案内(2021/03/20)
2020.11.27
第48回奈良大会開催のご案内(2020/11/28)
2019.11.05
第47回神戸大会開催のご案内(2019/12/07-12/08)
2019.07.02
【令和元年7月6日(土)】「欠陥住宅110番」開催のご案内