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勝訴判決の紹介と獲得のポイント   (3) 建売住宅の売主・名義貸建築士の責任認定」(松山地裁西条支部平成14年9月27日判決) 加瀬野忠吉 (岡山・弁護士)

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弁護士 加瀬野 忠吉(岡山)

1 判決の概要
建売住宅につき、 不等沈下による建物の傾き・損傷が生じている事案で、 建物の売主と名義貸建築士に2311万7656円の損害賠償を請求したところ、 裁判所は、 売主と建築士は、 各自金2256万7656円を支払えとの判決を言い渡した。

2 判決内容
(1) 本件土地・建物売買契約の性質
平成2年夏頃以降、 不動産業者である被告 (被告①) と原告との間で建物の間取の協議がなされ、 平成2年11月30日、 売買に関して覚書が締結され、 その後、 被告②が、 本件建物の建築主として建築確認申請を行い、 平成3年12月に建物完成後売買契約が締結されている。
裁判所は、 本件土地建物の契約の内容は、 「原告が希望する間取り及び内装を備えた建物を、 被告①が主体的に注文者となって請負契約を締結するなど、 本件建物が社会通念上通常有すべき性状を有する建物として完成するよう必要なことを行い、 完成された本件土地建物を原告に対して引き渡すという内容の契約であったと見るのが相当である」 とした。
また、 裁判所は、 本件建物は、 原告の希望する間取りで建築されているので、 その意味で請負的要素があることは否定できず、 請負人の瑕疵担保責任の規定が適用されるとした。

(2) 本件土地建物の売主 (被告①) の責任
本件建物については、 建築基準法上1級建築士等による設計及び監理が義務づけられているにもかかわらず、 建築確認申請手続を建築士 (被告②) に依頼しただけで、 本件建物の設計及び工事監理を依頼していないから、 売主としての注意義務違反があるとして、 被告①につき不法行為責任を認める。

(3) 建築士 (被告②) の責任
被告②は、 被告①から、 建築確認申請手続の依頼を受けただけであったが、 建築確認申請書類の設計者及び工事監理者欄にその氏名を記載していた。 裁判所は、 被告②が建築確認申請にあたり設計者及び工事監理者として自己の名義を貸したものと認め、 そのような名義貸行為は、 実際に設計業務ないし監理業務を受任しながら、 設計業務ないし工事監理業務を怠る行為と比較してもほぼ同様の違法性があり、 また、 違法建築への寄与の程度もあまり異ならないとして、 被告②の不法行為責任を認めた。

(4) 消滅時効の成立
被告①に対する瑕疵担保責任については、 請負の瑕疵担保責任の規定の適用があるとして消滅時効の成立を認めたが、 不法行為については、 民法724条の 「加害者」 を知ったといえるためには、 単純にその者を知っているというだけでなく、 少なくとも、 不法行為責任を負う根拠となるその者の行為を知っていなければならないと解するのが相当とし、 原告は、 本件訴訟提起後に不法行為責任を負う根拠となる被告らの行為を知ったことになるとして、 消滅時効の成立を認めなかった。

(5) 損害
修補費用、 調査費用及び弁護士費用は満額を認めた。 仮住居費用・転居費用は、 立証がないとして認めなかったが、 慰謝料として考慮するとし、 慰謝料は、 請求額200万円に対し250万円を認めた。

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