トップ > 欠陥住宅に関する情報 > ふぉあ・すまいる > 勝訴判決・和解の報告[3]控訴審で一審認容元金を上回る金額で和解 田中 厚(大阪・弁護士)
控訴審で一審認容元金を上回る金額で和解 大阪高裁平成15年6月16日和解 |
弁護士 田中 厚(大阪) |
Ⅰ 事件の表示(通称事件名:生駒M邸事件) |
和解日 |
平成15年6月16日 |
事件番号 |
大阪高裁平成14年(ネ)第2251号 |
裁判官 |
井垣敏生、神山隆一、加藤智樹 |
代理人 |
岩城穣、田中厚 |
Ⅱ 事案の概要 |
建物概要 |
所在 |
奈良県生駒市 |
構造 |
木造スレート葺(枠組壁工法)2階建 |
規模 |
敷地206㎡、延床面積162㎡ |
備考 |
傾斜地を造成業者が宅地造成後、別の建築業者が地盤改良工事を施工したうえ建設 |
入手経緯 |
契約 |
昭和62年11月14日 請負契約 |
引渡 |
昭和63年4月30日 |
代金 |
建物請負代金は2500万円、土地造成請負代金は1550万円 |
備考 |
敷地については、原告は父が所有していた土地を相続。造成は父の代に行われた。 |
相談(不具合現象) |
建物の不同沈下。亀裂等の損傷。 |
Ⅲ 主張と和解の結果 |
争点 (相手方の反論も) |
第1審判決報告参照 |
欠陥 |
第1審判決報告参照 |
損害 |
合計 |
2800/2727+遅延損害金(1435) (和解額/請求額) |
代金 |
別紙「和解について」参照 |
補修費用 |
同上 |
転居費用 |
同上 |
仮住費用 |
同上 |
慰謝料 |
同上 |
調査鑑定費 |
同上 |
弁護士費用 |
同上 |
その他 |
同上 |
責任主体と法律構成 |
売主 |
請負契約のため売主はいない |
施工業者 |
不法行為責任(和解金1400) |
建築士 |
もともと被告とせず |
その他 |
土地造成業者も不法行為責任(共同不法行為)(和解金1400) |
Ⅳ コメント 1 和解結果分析 1審勝訴元金1903万円+平成6年(被害を認識した時点)からの遅延損害金888万円にほぼ等しい金額(合計2800万円)の和解金を獲得できた。こ れによって原告は、建替工事費用2055万円、弁護士費用、建築士費用などの訴訟関係費用のほかに慰謝料65万円を確保することができた。 2 主張・立証上・和解交渉上の工夫 造成請負業者と、建物建築請負業者の2者を共同不法行為として被告としたことが、被告同士が責任追及をしあう展開となり、訴訟進行上、有利に働いた。 1審判決には仮執行宣言が付されていたため、被告両者は1700万円ずつ供託して執行停止決定をとった。控訴審で勝訴した場合には供託金を差し押さえればよいので現実の回収の心配はなくなった。 1審段階では徹底的に争ってきた建物請負業者が、控訴審では一転して和解に積極的となり、最後は、当方、裁判所の3者で、控訴審段階で裁判所の再鑑定を申請し和解を渋る造成業者を説得して、1審勝訴元金を上回る和解を獲得できた。 別紙のとおりの文書(下段参照)で、希望する和解金額の根拠を示して、裁判所と相手方らを説得した。 1審の判決直前の和解協議では、2000万円程度の和解案が裁判所から出されたが、和解金額がやや低いため、和解に応じず思い切って判決をもらい、控訴したことが、よりよい結果をもたらした。
(別紙) 和解について 結論 1審原告は、遅延損害金も含めて金2800万円以上での和解を希望します。 理由 原判決の認定した元金1903万9558円に、昭和63年4月30日から平成15年5月31日までの遅延損害金1435万9000円を加えると、 3339万8558円となります(但し1審被告三和建設は昭和62年2月10日からですので約100万円増額されます)。これが双方控訴棄却で終わった場 合に1審原告が獲得する金額となります(支払日が5月31日から先に延びますと、更に1年につき5分の金利約95万が加算されます)。 1審原告の建物は和解後直ちに補修しなければなりませんが、補修費用、転居費用、仮住まい費用として2055万円を要する見込みです(控訴人訴状、控訴理由書参照、原判決はこれを不当に減額しています)。 これに、1審原告が、本件訴訟で要した実費(訴訟印紙代等、弁護士費用、建築士鑑定費用)約680万円を加えると、2735万円となり、2800万円を 受領しても、長年の精神的苦痛に対する慰謝料として手元に残るのは、わずか65万円となります。仮に2700万円の和解金では、慰謝料分はなく赤字となり ます。 以上により、1審原告が和解条件として譲れるぎりぎりの線は、2800万円となります。 なお、遅延損害金の起算点を、1審原告が被害を確認した平成6年(法的には不法行為日すなわち原判決が認定したように欠陥擁壁・住宅を引き渡した昭和 62年2月10日・昭和63年4月30日ですが)として、原判決の元金を基準とすると、平成15年5月31日の時点で、元金と併せて2792万円となりま す。 |
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(欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第11号〔2004年4月28日発行〕より) |