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勝訴判決・和解の報告[1]土地の瑕疵を理由とした契約解除を認めた事例(釧路地裁帯広支部平成15年3月31日判決) 河合敏男(東京・弁護士)

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土地の瑕疵を理由とした契約解除を認めた事例
釧路地裁帯広支部平成15年3月31日判決
弁護士 河合敏男(東京)

水はけの著しい悪い地盤であり,また公道に接していない土地上の建売住宅について契約解除を認めた事案
1 事件の概要
本件は、被告が分譲開発して建築し売却した約20棟の建売り住宅について、原告が居住の目的を達することができないとして売買契約を解除し売買代金及びその他の損害賠償を求めた事案です。欠陥は、大きいところは次の2つです。
① 本件開発地は、元釣り堀があったところを埋め立てて造成した土地で、水はけが悪く融雪時期や多量の降水時に敷地及び周辺私道に水が上がってきて、建物は床下浸水する。
② 原告らは、本件各建物敷地の前面が公道に接しているとの説明を受けて(重要事項説明書にも公道に接すると明記)購入したが、実際は被告個人所有の私道 に接しているだけで公道には接していない。そのため公道に至るまでの道路(私道)につき町による公的除雪作業を受けられない。

2 訴訟の経緯
被告は、水はけが悪いことについては、各戸の浸透桝を繋いで、浸透能力の大きい集合桝へと導いて処理させる補修を行った結果、解消されたと主張しまし た。公道に接していないことについては、町と交渉し将来公道化される余地があること、確かに重要事項説明書に公道に接するとの間違った記載はあるが、公道 に接することは契約の内容とはなっていない、などと反論しました。

3 判決
裁判所は、「居住用土地建物としての目的を達することは不可能である」として、土地建物の売買契約解除を認める判決を下しました。判決理由は、①本件道 路が公道であることについて、被告会社の担当者が虚偽の説明をし、実際、本件道路が公道でないことにより除雪に関する不都合も生じているとして、法的な瑕 疵を認め、②物的瑕疵については、「本件各建物が居住用の土地建物であることに鑑みれば、通常の生活雑排水や汚水を不都合なく処理できることは、当然備え るべき基本的性能であるというべきであり、災害時は別としても、融雪時には毎年のように冠水・浸水するというのも、住宅地として不適切であることは明白で ある。毎年一定時期に水が上がってきたり、日常的に排水があふれて悪臭や衛生上の問題を惹起するような状態が、建売住宅を購入した買主が甘受すべきものと は到底認められないものであり、居住用土地建物としての目的を達することは不可能であることは多言を要しないものである」と述べています。
本件は、土地建物の建売住宅の事案であるため、欠陥住宅問題として取り上げましたが、本件の主要な争点も判決理由の重点も、建物よりもむしろ土地自体の 瑕疵というべき事案です。これまで、土地の瑕疵ということは、十分に論じられてきませんでしたが、土地の瑕疵という概念は理論上も実際上も問題となり得る のだということを再認識した事件でした。契約解除ができるための条件は「居住目的を達することができない」という要件が必要ですが、その一事例として参考 になると思います。

(欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第11号〔2004年4月28日発行〕より)
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