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勝訴判決・和解の報告[2]契約不適合部分を瑕疵と判断した事例(長野地裁松本支部平成15年9月29日判決) 河合敏男(東京・弁護士)

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契約不適合部分は瑕疵と判断した事例
長野地裁松本支部平成15年9月29日判決
弁護士 河合敏男(東京)

基礎の施工不良や、図面どおりに施工されていない瑕疵等につき損害賠償を認めた事案
1 事件の概要
本件は、木造2階建て注文住宅(延べ130m2)の事案です。注文者Yは、建築士の資格のない者に、そうとは知らずに設計依頼し、その設計者の紹介の工 務店X1に建築を依頼しました。ところが、契約後の着工が遅れたばかりか、建築中職人全員が他の現場に行ってしまったり、労働基準監督署の立ち入りを受け るなどによって、現場を1ヶ月以上も放置されること等が何度もあり、施工も遅れて建築を依頼してから完成まで1年2ヶ月を要しました。また、ゴミ、廃材、 釘などが敷地内に散乱したままであったり、隣地にゴミを投げ込む、職人が近隣物置内の物を盗むなど、でたらめな管理状況でした。完成建物は、①基礎の欠陥 (基礎と土台がずれている。捨てコン無し。底盤の幅と厚みの不足)、②図面どおり施工されてない(庇がない、窓の位置や大きさが違う。柱の太さが小さいな ど)、③数々の杜撰施工(床の不陸、建て付け不良等、意匠仕上げに関する瑕疵)が多数あり、また、最終金の請求書も、根拠のない増工事分が入っていたり、 減工事分が引かれていないなど、極めて杜撰でありました。
X1はYに対し、残金及び追加工事代金(合計1671万円)請求の訴訟を提起し、Yは同工事代金について相殺するとともに、X1及びその代表者兼監理者 X2に対し、工事遅延による損害金と建物瑕疵による損害賠償金の相殺後の残金として合計1891万円の支払いを求めて反訴を提起しました。

2 訴訟の経緯
X1は、基礎の瑕疵について、基礎と土台がずれていても、構造計算上、耐力的に問題ない、基礎が薄くても、構造計算上、強度は十分である、基礎底盤を打 つときに、セメントペーストが割り栗石(砕石)に染み出すことによって、その部分がコンクリート状になるため、かぶり厚さが確保されたと同じ状態となる、 などと反論しました。契約と異なる施工については、Yの了解を得て施工したものと主張しました。

3 判決
裁判所は、X1の残代金請求を棄却し、反訴については、X1及びX2に対して、連帯して1116万5739円の支払いを命ずる判決を下しました。
本判決の特徴は、欠陥の判断基準についてY側の主張を全面的に採用し、判決理由の冒頭で判断基準を明確に述べていることです。以下、その部分を引用します。
「①契約の内容に適合しない部分があるときは、これを瑕疵として、その補修または損害賠償の責任を負う。②建築基準関係法令に適合した住宅を建築すること も契約内容になっているというべきである。③また、住宅金融公庫の融資を受けたものであることが認められ、これらの事実によれば、公庫仕様に従うことも契 約の内容になっていたものと認められる。④更に、住宅工事において、日本工業規格、日本農林規格、日本建築学会の設計基準または標準工事仕様書 (JASS)、公庫仕様等確立された権威ある建築団体による標準的技術基準に適合しない場合にも、注文者がこれらの技術基準に達しない建物の建築物を希望 するとは考えられないので、その建築物に瑕疵があるものと認められる。」

(欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第11号〔2004年4月28日発行〕より)
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