仮差押えが奏功し建替え費用相当額で調停成立 大阪地裁平成15年9月16日調停成立 |
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弁護士 田中 厚(大阪) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
Ⅳ コメント 1 和解結果分析 解除を前提とする請求での和解はできなかったが、土地・建物を保持したまま、取り壊し建て替え費用に相当する2500万円の金額を獲得することができた。 2 主張・立証上・和解交渉上の工夫 依頼者に経済的余裕が全くないため、できるだけ低コストで効果のある訴訟活動を行うよう工夫した。法律扶助、訴訟救助の活用(弁護士費用23万円、提訴 時の訴訟印紙代なし)。私的鑑定は、本人が既に建築士に23万円で依頼して作成していた。ネット所属建築士ではなく、欠陥住宅調査鑑定の専門ではないの で、どの建築基準法令に違反するのか明記されておらず、私から要望して明らかにしてもらった。相手方の補修方法の問題点も上記建築士からは的確な助言が得 られなかったが、私が自分で考えた反論が功を奏した。技術的な面で費用をかけられないので、提訴後、建築専門部の調停に回すことに同意した(建築士調停委 員による事案の正確な理解と妥当な調停案を期待)。 相手方の対応は、訴訟外で300万円の提示、訴訟後調停段階で1000万円。私は、2000万円以下での和解には応じられない旨主張。裁判所も被告の補 修方法は妥当とは考えられないと考え説得してくれたようで、2000万円を分割というところまで譲歩してきた。ところが、今度は原告本人が全く資金的余裕 がないので最低でも2500万円獲得しないと建て替えられない旨主張するので、その旨説明した和解についての意見書を裁判所と相手方に提出。相手方は最終 的には2500万円を3回分割との回答であった。原告本人は2500万円でも、建て替えができるかどうか不安になり、更に増額を要求するも、これ以上の要 求は、相手方も裁判所もこれまでの経過から受け容れず意見調整に苦労した。結局調停時に2500万円を一括で支払いを受ける条件で原告を説得したが、被告 は資金繰りを理由に3回分割は譲らなかった。 この交渉の経過で、私は、勝訴の見込みはあるが6000万円もの請求金額の回収は非常に困難であるので、和解を考えた方がよい旨、原告に説得していた。 原告は納得せず、被告の自社物件の売り出しを示す広告を持参してきた。そこで、6月16日、当該物件の仮差押えの申立をしたが、扶助協会が500万円しか 担保金を援助しないことが判明し、対象物件が1億9000万円(但し1億円の抵当付き)であったため、裁判所は、この担保金では差押えはできない、とのこ とであった(担保金は対象物件の20%必要)。そこで、本人に親戚からの借り入れで更に500万円を用意させ、合計1000万円の担保金で、対象物件の建 物だけについて、6月30日に仮差押え決定を得た。しかしこのような資金繰りをしていたため、決定まで時間がかかってしまい、決定の6日前の6月24日に 売却によって名義変更がなされていたことが判明し、仮差押えは空振りに終わり、取り下げざるを得なかった。 しかし、これであきらめず、7月28日に、原告が探してきた被告の他の売り物件(売り出し価格6480万円、3600万円の抵当付き)に再度仮差押えを かけたところ、今度は8月1日に決定を得て、8月4日に無事仮差押えの登記がなされた。原告もこの経過に満足して、2500万円を一括で支払ってもらえる なら和解に応じる旨了解した。 被告は和解協議の最中での仮差押えに怒り和解協議の決裂を一旦口にしたが、結局、当方の和解案に全面的に応じ、仮差押えを取り下げると引き換えに 2500万円を支払う(具体的な手順は、被告が被告代理人弁護士の預り金口座に2500万円を入金し、それを確認して当方は仮差押えを取り下げる。仮差押 え取り下げ後速やかに被告は2500万円を原告代理人の預り金口座に送金する。送金しない場合にはペナルティとして500万円を別途支払う)ことを内容と する調停が9月16日に成立し、同日仮差押えが取り下げられ、翌日2500万円が入金された。 |
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(欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第11号〔2004年4月28日発行〕より) |
勝訴判決・和解の報告[6]仮差押えが奏効し建替え費用相当額で調停成立 田中 厚(大阪・弁護士)
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