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勝訴判決報告   (1) 名義貸し監理放棄建築士の不法行為責任を認めた高裁判決(大阪高裁平成13年11月7日判決) 田中厚(大阪・弁護士)

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田中 厚(大阪・弁護士)

1 事案の概要と1審判決
原告は、 3160万円で購入した土地付一戸建木造3階建住宅が建築基準法の定める構造基準を満たしていない旨の指摘を堺市から受け、 更に建築士に調査を依頼した結果、 建築基準法令が定める最低限の構造耐力や耐火・防火性能を欠いているという欠陥が判明したので、 大阪地方裁判所に提訴した。
原告の訴訟代理人を務めた私は、 瑕疵担保責任による売買契約の解除を前提として、 販売会社に対して売買代金相当額の返還及び信頼利益の賠償合計4153万円を請求するとともに、 販売会社の代表者、 施工業者、 建築士 (建築確認申請において監理者として届出をしておきながら何らの工事監理を行わなかった) らに対しても、 同額の損害賠償を請求した。 そして解除が認められない場合に備えて、 予備的請求として、 上記各被告に対して、 取り壊し建て替え費用相当額等2903万円も請求した。
1審判決 (大阪地判平12・9・27) は、 販売会社及び販売会社の代表者に対する主位的請求をほぼ認容し、 代金相当額その他の損害を併せて合計3974万円の支払を命じたが、 建築士と施工業者の不法行為責任については、 単なる契約法上の利益が侵害されたに過ぎず、 詐欺行為などがあった等特段の事情がない限り、 不法行為が成立する余地はない、 として主位的請求及び予備的請求のいずれも棄却した (詳細は本誌2001年4月25日号18頁参照)。

2 本件高裁判決
双方大阪高裁に控訴し、 私は、 建築士の不法行為責任を認めるべきであるとする立命館大学松本克美教授の判例評釈 (ジュリスト1192号216頁、 立命館法学271、 272号) を提出するとともに、 原告勝訴判例 (大坂地裁平12・6・30、 同地裁12・10・20)、 一部勝訴判例 (大阪高裁12・8・30、 全損害の1割のみ認容) を提出するなどした。
平成13年11月7日高裁判決が出された。 販売会社とその代表者に対しては1審判決をほぼ維持し、 主的請求のうち3924万円 (売買代金プラス付随的な損害) を認容した。 建築士と施工業者については、 売買契約の締結に関与していないことを理由に、 売買代金相当額の損害賠償を求める主位的請求は排斥したものの、 同人らに対する予備的請求については、 「建築基準法は、 国民の生命、 健康及び財産の保護を図るため、 建築物の構造等に関する最低基準を定め、 この基準に違反する建築物が建築されないようにするため・・・・建築主に一定の資格を有する建築士を工事監理者として選任させてその工事の監理をさせることとし (法5条の4第2項)、 しかも、 これを実効あるものとするため、 工事監理者となった建築士の氏名を建築確認申請書に記載しなければならないものとし」 ている趣旨に鑑み、 不法行為の成立を認め、 2588万円 (取り壊し建て替え費用プラス付随的な損害) を認容する逆転勝訴判決であった。

3 本高裁判決の意義
名義貸建築士の不法行為責任については地裁段階では肯定判例と否定判例が拮抗し解釈が二分されていたところ、 本件高裁判決は取り壊し建て替え費用相当額全額の損害賠償を命じた高裁レベルでは初めての判断と思われる。 建築士の名義貸による監理放棄をなくし、 欠陥住宅を撲滅するために、 今後この方向で判例解釈が統一されることを期待する。         以 上

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