山口直樹、 永井光弘 (神戸・弁護士)
【事案の概要】
Xは、 Yから昭和 58年3月に土地および建物 (以下 「本件建物」 という) を合計約 2700万円で買い受けたが、 本件建物にはさまざまな欠陥 (瑕疵) が存在し、 Xは建替金相当の修理費用を請求した。 1審では、 瑕疵は認められたものの約 140万円の修理費しか認められなかったため、 控訴したものである。
Xの請求の仕方は、 建築基準法、 同法施行令、 建設省告示および公庫仕様書 (本件建物は公庫融資物件である) の各規定を示し、 本件建物は上記各規定に違反しているから欠陥 (瑕疵) がある旨の主張を行った。 なお、 本件建物における主な瑕疵は以下のとおりである。
①建物基礎 本件建物基礎は、 鉄筋コンクリート基礎として施工されているが、 コンクリートは圧縮力に、 鉄筋は引張力に抵抗し、 さらに両者は付着によってずれを生じないように組み合わせて用いられるものであることから、 連続した鉄筋が存在することによって初めてその機能が発揮されるのであり、 不連続であるときは (一部分でも鉄筋が欠けていれば)、 他の部分で鉄筋が存在したとしてもその存在意義を持たない。 本件建物においてはコンクリート基礎フーチング部分に鉄筋が入っておらず、 建設省告示2の2、 建設省施行令 38条1項に違反している。
②耐力壁 告示第3の6においては、 「2階の耐力壁または2階もしくは3階の鉛直力を負担する壁の真下に耐力壁を設けない場合においては、 当該耐力壁または鉛直力を負担する壁の真下の床根太は、 構造耐力上有効に補強しなければならない」 と規定されているが、 本件建物においては2階の耐力壁の真下に1階耐力壁が設置されていない。 そして、 上記違反が存在する結果、 本件建物の2階部分がゆがみ、 2階押入に傾きが生じている。
③釘打ち 本件建物はいわゆる2×4住宅であるが、 2×4住宅においては釘打ちは非常に重要であるにもかかわらず、 所定の釘打ちに違反して施工がなされている箇所がある。
④外壁 本件建物外壁では、 所定の防火性能が充たされていない。
【裁判所の判断】
裁判所は、 控訴審において、 本件建物を補修するのに必要な建物の各部分毎の補修費を出すようにXに求めていた (基礎部分だけを補修するのであればいくらかかるのか等) ので、 Xはその旨の主張および立証もなし、 Xとしては建替費用全体は認容されなくとも、 一部の補修費用は認められると考えていた。 しかしながら、 裁判所は、 何ら根拠を示すことなく、 本件建物には、 施行令、 建設省告示等に違反する瑕疵はないとの判断を下し、 原告の請求を棄却した。
【本件判決の感想】
弁護士としては、 欠陥住宅訴訟において瑕疵 (欠陥) の判断基準として施行令や告示等に違反しているから瑕疵 (欠陥) であるとの主張をせざるを得ないが、 本件事案において裁判所は、 記録をきちんと読んで判決を書くのが面倒だと考えていたことは間違いないと思われる。 裁判所が本件建物は施行令、 建設省告示に違反していることが明らかであるにもかかわらず、 何ら根拠を示すことなく本件建物は施行令、 告示に違反していないとの判断を行っていることは、 弁護士として残念であることを通り越して裁判所の欠陥住宅に対する取り組み姿勢に悲観せざるを得ない。 以上
勝訴判決報告 (2)欠陥住宅で原告全面敗訴の不当判決
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