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勝訴判決報告   (2) 施工が公庫仕様と異なる場合に安全性の立証責任を業者側に負わせた事例(札幌地裁平成13年3月27日判決) 吉岡和弘(宮城・弁護士)

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吉岡 和弘(宮城・弁護士)
特筆すべき事項は以下の4点かと思います。
1 同判決は、 『業者の施工が公庫仕様と異なる場合、 実際の施工が公庫仕様と同等あるいはそれ以上の構造耐力上の安全性を有することを主張立証する責任は売主側にあると解するのが相当である。 ……そして、 適切な反証がなされない限り、 当該住宅が 「通常有すべき性状」 を欠いているという事実上の推定が働くというべきである』 と判示した点です。 立証責任を業者側に課したものとして意義がるかと思います。

2 次に、 本件は任意交渉の途中で業者が破産をしたため、 訴訟では取締役の第三者責任の規定 (商法266の3) の規定を用いて、 業者のみならず業者の取締役を被告に据えたところ、 判決では、 『被告Aは、 T社の代表取締役として同社の業務全般を統括して職務を執行する職責を負っている者であるところ、 前記認定事実に照らすとT社の代表取締役としての職務執行に重大なる過失があったと認められる』 と判示してくれました。 これからは、 資力に乏しい業者を被告にする場合、併せて取締役を被告に据えることで、 安易な破産申立や、 取締役の責任回避を未然に防ぐ効果があるかと思います。

3 三つ目として、 取締役であり一級建築士であったbに対し、 『T社事務所に所属する建築士らに対し、 工事監理の責任者を定めて適切な工事監理を行うことを命じ、 または、 自ら工事監理を行うことにより、 適切な施工の実施を確保する義務があるのにこれを怠った』 と判示して社内の建築士を統括する立場にあった一級建築士の取締役に責任を認めた点もまた特筆すべきことです。 取締役の第三者責任の規定 (商法266の3) と併せて主張することで、建築士の責任追及がより容易になるかと思います。

4 更に、 補修についての考え方として、 判決は、 『前記認定の瑕疵は構造耐力に直接影響を及ぼすものであるところ、 これらの瑕疵の正確な立証には破壊検査を要するが、 その全部を直接立証することは不可能であり本件のように、 瑕疵の多くが公庫仕様違反の施工に起因する場合は一部に瑕疵があることが証明されたことにより、 類似箇所に類似の瑕疵がある可能性が極めて高いと結論することには十分な合理性がある。 このような場合、 直接瑕疵の存在が立証された部分を修補しただけでは当該建物が通常有すべき性状を備えたといえる段階まで修補されたとはいえず、 さらに建物全体を解体して全体の構造を再点検する必要がある。 従って、 直接瑕疵が立証された部分のみの修理費用のみを単純に加算したのでは実際の損害額を反映しない。 結局、 瑕疵の補修に要する費用は新築代金相当額を上回るものと認めるのが相当である』 と判示しました。 どこまで欠陥事実を主張すれば足りるのかについて、 裁判所の考え方が示されている点で意義があるかと思います。
以上、 報告とします。

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