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北欧住宅事情調査団報告 鈴木 覚(宮城・弁護士)

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鈴木 覚(宮城・弁護士)
平成12年8月30日から9月10日まで、 オランダ、 デンマーク、 スウェーデンの北欧3カ国を訪問し、 北欧における陥住宅被害の現状、 住宅事情等を視察してきました。
メンバーは、 弁護士が岩城穣先生 (大阪)、 重村達郎 (大阪)、 吉岡和弘先生 (仙台)、 齋藤拓生先生 (大阪)、 私の5名で、 他に、 建築士の野口志乃さん (神戸)、 日本消費経済新聞社の吉田征政社長、 日本住宅会議の神崎房子さん、 京都府立大学の大学院生山根直生さんの合計9名でした。 視察行程の概要は次のとおりでした。
今回の視察旅行の内容をまとめてみますと、 次のとおりです。

まず、 各国の住宅の性能・完工・瑕疵保証に関する制度の比較してみますと、 概ね以下のとおりでした。
① オランダでは、 建築前あるいは建築過程においては、 日本と同様、 建築確認の制度があるが、 民間分野において建築材料の品質証明がある場合には基準に適合したものとみなされるという仕組みがとられている。
建築後については、 GIW (住宅保証機構) という民間の機関が、 瑕疵保証・完工保証に当たっている。 GIWは施主に保証書を発行する。 瑕疵保証については、 設備系統が2年間、 ペイントが1年間、 それ以外が6年間となっている。 購入者と施工業者間の紛争処理にも当たっている。
② デンマークでは、 建築工事に関して、 ABR89 (建築主とコンサルタントとの間に関する規定) とAB92 (建築主と建築業者との間に関する規定) という約款があり、 公共住宅 (政府支援の住宅) についてはこの約款によることが義務づけられており、 民間もこの約款によることが多い。
AB92では建築業者の瑕疵保証期間が5年間と定められている (それまでのデンマーク法では20年責任であったが、 短縮されたもの)。 そのため、 建築後1年目と5年目にコンサルタント及び建築業者が検査される。 さらに 「欠陥建築基金」 (新築及び再開発 (リノベーション) 建物の工事時に一定金額を負担し、 救済される保険会社のようなもの) により1年目と5年目に検査がされ、 検査報告書が建築主に送付され、 業者に対する補修請求の資料とされることになる。  
なお、 建築途中に関しては、 グラドサクス市では、 市の建築指導課において平均1~2回の現場検査を行っている。
③ スウェーデンでも住宅を新築あるいは改築する場合、 建築許可が必要である。 その許可は、 市にある住宅建築委員会が行う。 住宅庁では、 許可申請時に各建築委員会へのアドバイスや新政策に関する通達事項の伝達をしている。 その建築住宅委員会が許可をする対象として見るのは、 申請された家が周囲の環境に合っているか、 禁止された区域でないかという都市計画的な点を見るものであり、 技術的な点は含まれない。
他の国と変わっていることは、 安全に建築する責任が施主にあるという点である。 ほとんどの場合、 施主は、 技術的な面の知識はないため、 技術的な点を技術担当者 (品質管理責任者) に依頼する。 技術担当は、 建築家のときもあるし、 コンサルタントのこともあるし、 大工のこともある。 資格が必要であり、 その技術担当者が申請書を作成する。 施主が、 改築なり、 新築のクオリティを審査できる人を雇い、 チェックしなければならない。
もっとも、 5年前からは、 検査官という人による抜き打ち的な検査システムが確立している。 そして建て主が、 何らかの理由でいい加減な建て方をしていることが発覚した場合は、 建物の使用禁止をすることができる。
◇    ◇    ◇
次に各国の建築に関する紛争処理制度を比較してみますと、 次のとおりです。
① オランダでは、 GIW (住宅保証機構) という民間の機関において、 必要に応じて公平な立場の仲裁者と契約し、 年間約 600件の施主と施工業者との紛争解決に当たっている。
② デンマークでは、 紛争案件は、 8割が仲裁機関に持ち込まれ、 2割程度が裁判となっている。
デンマークの建築工事の大多数に用いられている契約約款AB92においては、 紛争が生じた場合に建設土木仲裁機関によって解決することが明記されている (同約款47条)。
デンマークのコペンハーゲンに所在する建設土木仲裁機関は、 このAB92に基づく建築のトラブルのみを対象としている。 同機関は、 独立採算性の中立的な機関であり、 同機関に仲裁を申し立てると、 仲裁委員が1人または複数指名され、 紛争解決に当たる。 仲裁委員は、 建築家、 構造エンジニア、 または法律家であり、 弁護士や裁判官が入ることもある。 通常、 申立から解決までは3~4週間から半年くらいであり、 専門家が入る場合でも平均3ヶ月から6ヶ月くらいである。 手続きとしては、 1人の仲裁委員が意見を伝えるだけの手続き、 技術分野の専門家が入る調停的な手続き、 仲裁判断になる手続きがある。  
◇    ◇    ◇
最後に、 各国の建築や欠陥住宅の問題意識の違いについてまとめてみました。
① オランダについてですが、 オランダ・アムステルダムの中心部は、 オランダに関するガイドブックで紹介されているとおりの、 歴史的に古いが北欧らしさを醸し出している町並みが続いている。 同行した野口建築士の指摘によると、 特徴的には、 間口が狭く、 奥行きの深い家々が互いに外壁を共有し合って街区のブロック単位毎に続いており、 日本の町屋構成と根本的に違うのは、 小規模住宅が軒並み4~5階建の中層住宅群であることと、 構造体が煉瓦組積造によるものが圧倒的であるという点だということであった。
築後数百年経過している建物もあちこちにあり、 また、 正面から見て明らかに傾いている (一瞬目の錯覚かと見間違うほどのもの) 建物もいくつか見られた。 しかし、 オランダという国は海抜より低い国であるためか地盤がもともと弱く、 建物を建築する際にも杭 (かつては木杭だったとのこと) を何本も打っているということであり、 建物の傾斜については欠陥という意識がないような印象であった。
② デンマークでは、 コペンハーゲンでは市街地内を視察や見学することがほとんどであった。 オランダと同様、 間口が狭く奥行きがある建物が多いが、 町並みとしてはオランダほど水路や川はなく、 宮殿がいたるところにあり、 市役所や博物館など大型の建築物が目立った。
欠陥建築基金においては、 OHPを用いて欠陥の事例 (ベランダに亀裂がある事例、 湿気が地下から居室内に上がってきている事例等) の説明を受け、 また、 仲裁制度が進んでいるという印象を受けた。
③ スウェーデンは、 他の国に比べ視察が一部に留まったが、 その限られた時間の中で、 世界遺産の町であるスウェーデンの住宅庁がある小都市カールスクローナを訪れ、 非常に意匠や景観的な面が重要視されていることを感じる。 また、 福祉面でも先進的であり、 住宅建築に当たっても障害者のため機能面からの配慮がなされる法制度もとられている。
◇    ◇    ◇
その他、 今回の北欧視察旅行では、 欠陥住宅の問題に関わる視察先に留まらず、 欠陥住宅問題の枠を越えて、 デザイン的に有名な建築 (シュレーダー邸など) や建築博物館を見学し、 また、 福祉の観点から、 高齢者住宅、 障害者職業訓練所や実際の障害者の住宅を見学させてもらうなど、 住宅や建築の積極的な面、 プラスの面を見学しました。
欠陥住宅問題では、 建築のマイナス面をクローズアップして見てしまう面がありますが、 住宅は、 欠陥がない住宅であることが最低限の前提として、 その上でさらに意匠面での美しさやすばらしさ、 居住者の機能面に配慮したものであることも重要な要素であることを感じさせられた旅行でした。


・8月30日  関西国際空港出発→オランダ アムステルダムへ
・8月31日    オランダ・ロッテルダムに移動
建築博物館見学、 GIW (住宅保証機構) 視察
オランダ・デンハーグに移動、 住宅・国土開発・環境省視察、       国際司法裁判所
・9月1日 オランダ・アムステルダム
アムステルダムの住宅プロジェクト見学
・9月2日 オランダ・ユトレヒト
シュレーダー邸見学、 デンマーク・コペンハーゲンに空路で移動
・9月3日 デンマーク・コペンハーゲン  市内を終日自由見学
・9月4日 デンマーク・コペンハーゲン
都市住宅省視察、 建築土木紛争処理機関視察
・9月5日 デンマーク・コペンハーゲン
グラドサックス高層住宅計画 (欠陥建築) 見学、 高齢者住宅見学、 グラドサックス市建築指導課視察
・9月6日 デンマーク・コペンハーゲン
欠陥住宅基金、 弁護士事務所 視察、 スウェーデンに電車で移動
・9月7日 スウェーデン・カールスクローナ
住宅保証機構視察、 スウェーデン住宅庁視察
・9月8日 スウェーデン・マルメ
障害者職業訓練所、 リックスビーゲン、 障害者住宅視察
・9月9日 デンマークへ移動 空路でオランダ・スキポール空港を経て日本へ
・9月10日 朝、 関西国際空港に到着

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