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品確法と21世紀の住宅政策及び各地域ネット・全国ネットの今後の活動について 重村達郎(大阪・弁護士)

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重村 達郎(大阪・弁護士)
品確法の制定・施行は、 政府による持家対策に後押しされた旺盛な新規住宅需要を前提にスクラップ・アンド・ビルドを繰り返してきた我が国の住宅建設について、 住宅を良質な社会資本としてストックする方向に大きく転換させる契機となるものであった。
そして、 これは、 建築基準法の性能規定化との連動、 欠陥住宅問題でクローズアップされた建物の構造上の安全性への関心の高まり、 新建材、 塗料等に起因するシックハウス症候群の多発と健康住宅への志向、 中古住宅の解体に伴う膨大な産業廃棄物の発生とその処理ー環境問題への対処など、 今日の住宅をめぐる諸問題の解決の要請を背景とするものでもあった。
かくして、 建築・住宅行政も、 従来のように生産者側-建築業界中心の発想ではなく、 住宅を購入し、 又はそこに居住する生活者、 消費者保護に軸足を置いたものにならざるをえなくなったのである。
これをうけて、 21世紀の住宅政策とでもいうべきものが、 来年度予算に向けた概算要求を通しても具現化してきたようである。
その柱は、 都市再生-都心への回帰と高齢者社会への対応、 中古住宅の流通促進と売買市場の整備、 老朽マンション対策といったところであろうか。 住宅を良質な社会資本としてストックし、 衣食住の中で相対的に一番遅れた我が国の劣悪な住環境を抜本的に改善していくためには、 これら緊急の諸課題を有機的に結合した形で施策に反映させることが求められている。 たとえば、 中古マンションについていえば、 まず廉価な費用で耐震診断ができるように人的体制・アクセスも含めて整備し、 建替にあたって障害になる法の不備を是正するとともに、 高齢者・障害者にも配慮した耐震改修・建替にするよう割増融資・補助によるインセンティブをとること、 またそうした修補履歴情報を登録-整備し、 中古マンションの売買情報の中に組み込んで、 住宅性能の観点から正当に資産価値を評価していくためのシステムをつくること、 一方でライフスタイルの変化に合わせた居住空間の広い家族向け賃貸住宅の大量の提供と高齢になっても賃借できるよう社会的条件の整備にむけて、 金融・税制面での優遇や都市再開発事業ともリンクしてすすめること、 といった具合である。 しかしその根本となる土地問題がネックになっていて、 言うは易く、 行うは難しという状況である。
これに対し、 各地域ネットや全国ネットの活動は、 欠陥住宅被害の個別救済からその予防へ、 更には良質な住環境の形成に向けた啓発活動、 街づくりへとその問題意識と志向性は有しつつも、 2周遅れのランナーの観がある。
時折、 事情をよく知らない人から、 「欠陥住宅問題は金になるでしょう」 と言われることがある (実態は会員諸氏がよく体験されているとおり、 労多くして…であるが)。 しかし、 もとより、 私たちは、 欠陥住宅被害がビジネスとなるような状況を望んでいるわけではない。 運動の中心を担う者達こそが常に時代の先を読み、 運動のあるべき方向を具体化していくこと、 そのために従来の活動内容・スタイル・人的関係も含めて転換・刷新していくことが是非とも必要である。 まだまだ欠陥住宅被害の個別救済さえも十分なしきれておらず、 そのための諸課題に引き続きねばり強く取り組まざるをえないのが現状ではあるが、 欠陥住宅全国ネット結成の原点からすれば、 自己否定ではないけれども、 欠陥住宅OOネットという名称自体を返上できることが新たな出発点であるし、 またそうしなければならない時期に来つつあると思う。

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