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幹事長の独り言(6) ─素人のど自慢─ 吉岡和弘(宮城・弁護士)

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幹事長の独り言(6) ―素人のど自慢―

「NHKの『素人のど自慢』が大好きだ」というと、「なんであんなクサイ番組が好きなの」とか、「昼飯時の聞き流し番組だ」などとけげんそうな顔をされる。しかし、私は、この番組だけはいつも正座し集中して視聴している。
なんといっても、登場する素人の歌い手の嬉々とした表情がいい。人生を刻み込んだ皺がいい。その一挙手一投足を見ていると、歌い手の住む地方の風景や生活の匂いが伝わってくる。
「鐘」を鳴らす絶妙なタイミングがまたいい。「鐘」のタイミングをはずせば会場にぎこちない空気が流れるが、絶妙のタイミングで「鐘」が鳴ると、会場 からは爆笑や拍手、歌い手の個性溢れるアクションが引き出せる。どこで「鐘」を鳴らすかは歌い手の歌唱力だけではなく、歌い手の挙動、観客の関心度などを 総合して決めていることがわかる。
「鐘」の判断基準が幾通りも用意されているのもまたいい。プロを思わせる歌い手には厳しく、高齢者にはとても甘く優しい。一つ目の「鐘」を鳴らした後 に二つ目の「鐘」を鳴らすまでのわずかな間合いもいい。「鐘」を打つ者の歌い手に対する思いやりが伝わってくるからだ。
そして、最後にプロの歌手2人が登場する。会場は静まりかえる。そして歌が終わったとき、私は観客の拍手をする手の位置に注目する。感動した観客はほ ぼ間違いなく胸から顔の高さで小刻みに拍手を送るものだ。私はこの手の位置に感動を覚える。プロとしての実力をまざまざと見せつけるからだ。素人の歌唱力 にも唸らせるものがあるが、それとははるかに「段違い平行棒」、プロの磨き抜かれた歌唱力で「どうだ!」と言わんばかりにミエを切って唄い終るあの瞬間を 見せつけられるとき、私は、いつも、法廷での自分の姿を思い浮かべる。傍聴席にいる「観客」が膝元の低い位置で、私に、緩慢な、お義理の拍手をしているよ うな気がしてならないからだ。

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