藤島茂夫(東京・建築士) |
1. 建築基準法と地震について 通常、 欠陥建物について調査を行い、 報告書を提出すると、 司法に携わっている弁護士及び判事から、 この建物に欠陥があることは解るが、 それではどの位の地震で倒れるか?と聞かれることがよくあります。 最初の頃は、 答えに困って回答出来ずにいましたが、 建築基準法が昭和56年に大幅改正されたとき、 講習会で使用された参考書資料 (耐震構造の設計-構造計算のすすめ方・7-:日本建築学会関東支部編) で説明されていましたので、 この資料を建築基準法第1条の安全性における最低基準に結び付けています。 説明概要 「中小の地震 (震度階5程度) でもひび割れも起こさないこと、 大地震 (震度階6以上) の地震がきても倒壊をさせないこと、 すなわち、 人命を損なう被害を避けることを目的にしている」 ( 参考資料と表現を少し変えています。) 2. 建築基準法と公庫仕様について 平成12年に建築基準法が改正され、 施行令及び国土交通省告示でかなり具体的に金物等について基準化されました。 しかし、 それ以前に建てられた建物で公庫融資の適用を受けていないものに対して、 判断に困ることがありますが、 平成7年の阪神淡路震災により急遽、 当時の建設省から通達がでて、 その中に木造建築の金物及び仕口について、 公庫仕様を参考にして施工することが規定されました。 よって、 公庫仕様と違う場合、 金物等の使用が適正でない箇所は建築基準法違反と断定出来るものと考えられます。 通達 建築物の構造耐力上の安全確保に係る借置について 平成7年5月31日 住指発第176号 3. 建築基準法と溶接欠陥について 鉄骨造の部材相互の接合部について、 現在は溶接が主流になっています。 しかし、 溶接部の欠陥についての評価がなく、 ただ良くないとしか表現できずにいましたが、 資料 (建築物の構造規定-建築基準法施行令第3章の解説と運用-1997年版:日本建築センター編) の説明ではかなり明確に、 「溶接欠陥は耐震設計の基本 (前記1資料と考えられる=私見) を満足させることができない、 そして粘りのない建物となり突然倒壊 (地震等により) する危険がある」 と説明しています。 又、 告示 (平成6年9月2日、 建設省告示1907号) では地域による施工精度及び規格品の入手難等を考慮して、 設計時に許容応力度を低くして (10%低減) 構造計算を行うことを認めているが、 そのことと溶接欠陥を混同しないことも説明しています。 「欠陥を持つ溶接部については耐力を単に低減すればよいということにはならない」 上記については施工者側からの説明に、 本件建物には安全率があるので支障がない、 とか保有耐力計算書を作成して反論してくる場合がありますが、 その再反論説明に上記資料を使用すると有効かと思います。 4. 建築基準法とコンクリートのひび割れについて 鉄筋コンクリートのひび割れについては、 いつも苦戦しているとおもいます。 それは、 コンクリートのひび割れを指摘すると、 業者側からの回答は、 ひび割れは、 乾燥収縮により生じたもので避けられない。 と云ってきます。 しかし、 その回答 (説明) に対しては次のような説明が有効であると思います。 1) ひび割れは変形 (歪み) であること。 建築基準法施行令第36条 「建築物の構造耐力上主要な部分には、 使用上の支障となる変形又は振動が生じないような剛性及び瞬間的破壊が生じないような靭性をもたすべきものとする。」 2) 乾燥収縮ひび割れは養生不良によること。 建築基準法施行令第75条 「コンクリートは打込み中及び打込み後5日間は、 コンクリートの温度が2度を下らないようにし、 かつ、 乾燥、 振動等によってコンクリートの凝結及び硬化が妨げられないように養生をしなければならない。 …」 3) コンクリートは湿潤状態においては乾燥収縮はない。 特に、 水中では乾燥収縮は起きない (クリープも同じ)。 故に乾燥によるひび割れは発生しない。 専門書には既に多数記載されています。 更に、 乾燥収縮はコンクリート打込み後13週間 (約3ヶ月) でピークに達する。 故に、 建物が仕上げ工事に入っている時点では乾燥収縮の現象はあるはずです。 そして、 2ないし3年で終わるはずです。 尚、 その後はクリープによる現象となります。 上記の説明にJASS5 (建築工事標準仕様書-日本建築学会) の書面を引用して反論が可能と考えられます。 尚、 相手側は施行令75条ではなく、 第76条を正当な理由として、 コンクリートの強度が基準に達したので、 型枠を外したと必ず説明してきます。 しかし、 75条 (養生) とは別の事項ですので要注意です。 5. 基礎と地盤 建築基準法施行令第38条 1) 建築物の基礎は、 建築物に作用する荷重及び外力を安全に地盤に伝えかつ、 地盤の沈下又は変形に対して構造耐力上安全なものとしなければならない。 2) 建築物には、 異なる構造方法による基礎を併用してはならない。 3) 建築物の基礎は、 建築物の構造、 形態及び地盤の状況を考慮して建設大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならない。 この場合において、 高さ13m又は延べ床面積3000■を超える建築物で、 当該建築物に作用する荷重が最下階の床面積1■につき100kN (10t/■) を超えるものにあっては、 基礎の底部 (基礎杭) を良好な地盤に達することとしなければならない 4) ~6) 省略 建設省告示は地盤の許容支持力と基礎の種類をつぎのように規定している。 平成12年建設省告示1347号第1第1項 地盤の許容応力度 基礎構造の種類 1) fe<20 基礎ぐい 2) 20≦fe<30 基礎ぐい又は ベタ基礎 3) 30≦fe 基礎ぐい、 ベタ 基礎又布基礎 尚、 独立基礎については構造計算により安全性を確認する。 ここで注意しなければならないのは、 支持力では沈下は判断できない。 故に、 沈下に対しては、 土質試験により間隙比等のデーターを確定する必要があります。 この点については今回の告示では、 基準化されていません。 6. 木造の軸組 耐力壁の配置 建築基準法施行令第46条1 1. 構造耐力上主要な部分である壁、 柱及び横架材を木造とした建築物にあっては、 すべての方向の水平力に対して安全であるように、 各階の張間方向及びけた方向に、 それぞれ壁を設け又は筋かいを入れた軸組を釣合い良く配置しなければならない。 告示 木造建築物の軸組の設置の基準を定める件 (平成12年建設省告示第1352号) 建築基準法施行令第46条第4項に規定する木造建築物においては、 次に定める基準に従って軸組を設置しなければならない。 ただし、 令82条の3第二号に定めるところにより構造計算を行い、 各階につき、 張間方向及びけた方向の偏心率が0・3以下であることを確認した場合においては、 この限りではない。 一. 各階につき、 建築物の張間方向にあってはけた方向の、 けた方向にあっては、 張間方向の両端からそれぞれの1/4の部分 (以下側端部分という) について、 令第46条第4項の表1の数値に側端部分の軸組の長さを乗じた数値の和 (存在壁量) 及び同項の表2の数値に側端部分の面積 (略) を求めること。 この場合において、 階数については、 建築物全体の階数にかかわらず、 側端部分ごとに独立して計算するものとする。 二以下は省略。 今回の改正で新しい基準は建物の外周部を側端部として位置付け、 軸組が片寄らないように規定したことです。 7. 継手・仕口 施行令第47条 (構造耐力上主要な部分である継手又は仕口) 木造の継手及び仕口の構造方法を定める件 平成12年5月31日 建告第1460号 建築基準法施行令47条第1項の規定に基づき、 木造の継手及び仕口の構造方法を次のように定める。 施行令47条に規定する木造の継手及び仕口の構造方法は、 次の定めるところによらなければならない。 ただし、 …構造計算によって構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、 この限りではない。 即ち、 金物の使用及び工法が具体的に明示されました。 この項目及び木構造についての説明は、 2001年1月号の雑誌 「建築知識」 が参考になります。 8, 床下の防湿 建築基準法第36条、 施行令第22条 概要 居室の床の高さを45㎝以上とし、 壁の長さ5m以下ごとに、 300㎝の大きさの床下換気口を設けること。 但し、 床の構造が建設大臣 (現国土交通) が認定したものについては仕様に適合しなくてもよい。 旧法は具体的な規定がなく、 問題が多発していたが、 新法では防湿性能は大臣認定と限定されました。 以上 |
建築基準法と告示及び他の基準 藤島茂夫(東京・建築士)
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