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新築の建売住宅でも実質的価値なし~代願建築士に不法行為責任認める(大阪地裁平成12年6月30日判決)

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嶋原 誠逸(大阪・弁護士)

大阪地方裁判所平成12年6月30日判決・平成8年 (ワ) 第 11511号

<相談までの経緯>
Aさんは、 平成8年2月、 (株)東住建から、 大阪府門真市にある鉄骨ラーメン構造3階 建ての建て売り住宅を土地代込みで 4380万円にて購入しました。
ところが、 実際に住み始めてみると、 1週間もたたないうちに1階駐車場から水が湧き出してきたり、 建物全体が揺れるように感じて気持ちが悪いといった不具合に次々と遭遇しました。
そこで、 Aさんは、 親戚で建築に詳しい人に建物を見てもらったところ、 小さな不具合だけでなく、 本件建物には所定の耐火性能がまったく備わっていないことが判明して、 ショックを受けました。
そのため、 さらに詳しい調査を一級建築士に依頼したところ、 一見して分かるほどの溶接不良であり、 構造上の安全性能も備わっていないことが判明し、 Aさんはさらなるショックを受けました。

<提訴へ>
本件建物の欠陥は、 構造上の安全性能、 耐火性能という建築物の根本に関わるものであり、 話し合いによる解決は当初から難航が予想されました。
そこで、 Aさんは、 損害賠償請求の訴訟を起こすこととし、 相手方には売主だけでなく、 建築確認申請書に監理者として記名捺印したにもかかわらず、 実際には一切の監理を行っていない代願建築士も加えて、 その監理を放棄した責任・名義貸し責任を問うこととしました。

<本訴の経過>
(株)東住建は、 本件建物を建築したのは関連会社のフジカワ興産(株)であり、 また鉄骨工事・溶接欠陥をしたのは下請であるとして、 (株)東住建から下請業者の武田建設(株)へ訴訟告知が行なわれました。 すると、 下請業者は孫請業者の(株)ヤマムラへ、 孫受業者はひ孫業者の(株)西田鉄工建設へ、 ひ孫業者はやしゃ孫業者の的場工業こと的場潔へと次々に訴訟告知を行い、 あからさまな責任転嫁が行なわれました。 現に、 下請側からは、 この程度の品質の鉄骨工事で良いと元請から言われたとか、 現状の施工でも法律に違反しないなどの主張が提出されました。
まさに、 本件建物は、 このような建設業界における重層的下請構造のなかで、 どんどん中間利益が搾取され、 品質に責任を負う者が曖昧となり、 低品質どころか、 人の生命に危害を及ぼしかねない程の建物となっていったのです。
また、 代願建築士からは、 本件建物についての監理を行うよう個別の依頼を受けていないなどのお決まりの反論が提出されました。

<裁判所の判断>
1 売買契約の当事者間に不法行為責任を認める
判決では、 本件建物に構造上の安全性能、 耐火性能が欠落していることを認定したうえ 「(株)東住建は、 Aに対し、 本件建物の瑕疵を告知しなかったばかりか、 『今人気の高い耐震性 鉄骨造り』 『より耐震性・耐火性に対しても追求された住まい造りです』 などと、 およそ事実に反する広告を頒布」 しており、 「瑕疵担保責任のみでは律しきれない責任がある」 として、 不法行為責任まで認めました。

2 代願建築士の責任
1) 建築士の義務-専門家責任、 設計・監理の業務独占責任
判決では、 建築士法1条、 2条6項、 18条3項を引用のうえ 「これらの 規定は、 単に当事者である建築士と監理者の関係を規律するにとどまるものではなく、 建築工事監理を適正ならしめることにより、 建築物の安全を確保し、 広く国民の生命、 健康、 財産を保護しようとしたものと解されるから、 建築主や建築士は、 当事者以外の第三者に対する関係においても、 義務を負っている」 として、 第三者に対する注意義務を肯定しました。
そして、 建築士に不法行為責任が成立することを肯定し、 判決自ら、 建築士は 「いわば、 製造物責任における製造者の補助的な立場にある」 と説明してくれています。
2) 代願建築士の責任
続けて、 判決では、 「代願」 建築士の責任について、 「建築士が…工事監理者の名義 を貸したような場合には」 「建築確認通知を騙し取ったといわれてもやむを得ないであろうし…工事監理者を置くべき建築主の義務の潜脱に手を貸したものである」 とし、 結局、 「名義を貸す行為は、 実際に工事監理業務を受任しながら、 建築主と意を通じて、 監理業務を怠る行為と比較しても、 ほぼ同様の違法性があり、 また、 違法建築への寄与の程度もさほど異ならない」 と断罪しました。

3 損害論
1) 本件建物の実質的価値
判決では、 売買契約という法形式に若干こだわったためか 「瑕疵の存在により原告が直接被る損害は、 本件建物の取壊し・再築費用ではなく、 Aさんが負担した代金額から、 売買契約締結時における本件建物の実質的価値を控除した残額」 としました。
しかし、 続けて 「本件建物の実質的価値について検討するに、 本件建物には、 構造上の安全性、 耐火性能という、 人の生命、 身体の安全にかかわる重要部分に瑕疵があることからすると、 到底居住に耐えないものであって、 実質的価値はない」 と判断し、 結局、 建替え費用と同額をAさんの損害とし、 その他の関連損害も加えて合計 2680万円を損害と認めました。
また、 判決では 「いかなる瑕疵がある建物であっても、 現実の市場においてなお取引の対象となると思われるが、 本件のように人の生命、 身体の安全にかかわる重要部分に瑕疵がある建物について、 実質的価値を認めるとすれば、 建築物に関する最低の基準を定めて国民の生命、 健康及び財産の保護を図ろうとした建築基準法の立法趣旨を無にする」 として、 事実上の利益論をも明確に排斥しています。
そして、 代願建築士についても、 売主と連帯して、 上記同額を支払うよう命じています。

<最後に>
本件は、 相手方が控訴したことから、 現在、 大阪高等裁判所にて係争中ですが、 以上の判示内容が欠陥住宅裁判の理論深化の一助になれば幸いです。
以 上

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