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欠陥マンション補修交渉の現実 萩尾利雄(兵庫・建築士)・永井光弘(兵庫・弁護士)

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萩尾利雄(兵庫・建築士)、永井光弘(兵庫・弁護士)

1. はじめに
管理組合が長年にわたり交渉したうえで事業主側と決裂し、 その時点で交渉依頼をうけた場合はとてもシンドイ。 このような場合に、 どのようにして事業主や施工業者と交渉していくことが最終的解決への早道だろうか。
神戸ネットの経験 (4、 5件程度であるが) から学んだことを以下に述べていきたい。

2. マンション交渉の問題点の分析
マンションの集会に行っていろいろ事情聴取すると、 「次元」 (法的問題か、 建築技術的問題か) や、 「段階」 (Aが決まらなければBが決まらないというもの) を異にする様々な不満が、 混沌としたまま住民から事業主にぶつけられていることが多い。
これに対し、 事業主も全く放置し対応しないか、 あるいは、 確たる方針も持たないで場当たり的に対応してお茶を濁している。
更に、 管理組合や住民と事業主との間は、 長い不毛な交渉の果てに 「不信感」 しか残っていない。 住民側から言うと 「事業主には誠意がない」、 事業主側から言うと 「どこまで要望に応じて補修したら解決できるのか先が見えない。 無茶な要求をされている」 ということになる。
住民側にたって 「早期の解決」 を目指すにはどのように交渉を組み立てたらいいのだろうか (例えば瑕疵が雨漏りのような場合、 長引けば長引くほど住民側にダメージが大きい)。
ひとつの方法論として、 なぜ住民-事業者の交渉がデッドロックに至ったかを分析してみることが早道だ。 これを取り除けば、 交渉を詰まらせた原因が解消するからだ。
とりあえず、 詰まりの要因を概観してみる。
① 早期に双方が納得できる形での徹底的な瑕疵調査に欠けていた。
業者側によるおざなりな調査と補修を受入れたため、 補修後に再度欠陥現象が発現した事例が多い (雨漏り等)。 それなりの瑕疵調査を事業主がしていても住民側の参加が欠けていたため調査結果自体が住民に信用されない状況も招いている。
② 補修工事の完璧性の証明を求めることは必要か
住民側としては、 欠陥のない状態を前提に購入したので、 欠陥のない完璧な状態にもどす補修計画が示されて当たり前との感情がある。 しかし、 20年、 30年先まで見越して補修計画が100%完璧と事業者が証明することはなかなか困難だ。 ここで、 「99%では足りない、 100%証明せよ」 という原理的主張に固執するのは良いことだろうか?
補修計画が、 ネット建築士の目から見て、 99%でやむを得ない (技術的・物理的に100%は不可能) のであるならば、 そこでの足らずは、 「保証」 や 「補償」 交渉内容に委ねることにしても仕方がないのではないか?
③ 破壊調査や瑕疵補修工事を 「保証」 「補償」 交渉決着まで着工させないのはいかがか。
住民側の気持ちとして、 「保証」 「補償」 まで含めた誠意ある対応を見てから、 工事着工を希望する傾向が顕著だ。 しかし、 冷静に考えてみれば、 調査や工事をしてみなければ 「保証」 「補償」 が決まらないこともある。 特に、 破壊調査受入をしなければ、 補修内容の正当性は確認すらできない。 ここで、 住民と事業者両すくみになってしまう。 全部が全部ではないと思うが、 瑕疵補修工事交渉と 「保証」 「補償」 交渉を分離して議論を行う必要があることが多い。
④ 具体的な議論を行っているか。
住民側の気持ちとしては、 補修工事による騒音や迷惑は耐え難い。 しかし、 これを強調しすぎて、 そんなうっとうしそうな工事 (例、 躯体にドリルやはつり工事) をするなら高額の補償をよこせというのもどうか?想像だけではどんどん膨らんでいくばかりだ。
いったん、 ドリルを使用のうえ実験してそれでも耐えれないかアンケートを採り、 どうしても×という人について個別に工事期間中の宿替えを考えた方が生産的な場合がある。
⑤ 一度合意に達したことが後にくつがえり、 手戻りになっていないか。
合意に達したときの前提にもよるが、 デッドロックの場合往々にしてからやり直しというような状態になっている。 住民側からは前提が異なる (補修合意をした前提と異なる瑕疵実態が明らかになった) からやむを得ないという主張になるし、 事業者からは計画的な工事が不可能という主張となる。
瑕疵実態の把握も含め、 意思決定の前提として最低限どんな資料が必要かを意識し、 そのうえで、 各段階ごとにきちんと総会の議決を得ておくことが望ましい。 無理な補修工事は議決を得る前提である総会資料すら作れないだろうし、 また逆に、 リーズナブルな決議であれば後に反対者がでてもこれにより対応できる。
思いつくままにデッドロックの要因を挙げてみた。 では、 どのように交渉を進めることが良いのか、 次にたたき台を示してみたいと思う。 なお、 幸いなことに、 今までのところ、 住民側と同様、 相手方事業主等も途方に暮れている場合が多く、 合理的な道筋を提示すれば、 事業主からも協力を得て進めていけることが多い。

3. マンション交渉の原則 (ほんの暫定版)
① 継続交渉に耐える受け皿を用意する。
ネット側 ⇒ 受任費用の明確化 (顧問料形式 OR 個別積み上げ形式)
管理組合側⇒ 委任についての決議、 特別委員会の設置
事業主側 ⇒ 交渉主体・責任の明確化
② 手戻りを絶対に生じさせない。
* 後に交渉の進行を根底から覆す事態を招くくらいなら、 時間が少しかかっても当初   に詰めた議論をする方が、 まし。
* 前後関係があるものについては、 その点を意識して議論を混乱させない (例えば、工事中補償は工程・工事方法が決まらねば具体的な議論はできない)
1) 本調査 調査項目の選定、 調査方法の合意、 調査費用負担の確認 (足場を要するなどして莫大な調査費が必要となる場合あり、 事業主に負担を求めるのが原則)
調査結果の事業主による報告会
2) 補修方法 補修方法についての事業主による報告会、 疑問点の質疑 (書面で)
3) 補修工事前 補修工事についての工程表・安全対策の確認
補修工事についての補償 (Ex.足場による日照制限、 騒音 )の確認
補修工事についての工事監理 (NET) 及び費用負担の確認
4) 総会 共用部分の大規模な補修になることが多いので17条(3/4)が安全
* なお、 補償を決めておかねば17条2項の 「同意」 の問題。
5) 補修工事 工事監理を経て報告集会
6) 補償・保証交渉
・補償 弁護士費用・建築士費用 (除く本調査・工事監理) の負担
専有部分関連/解決金の交渉 (実害分・慰謝料・資産価値等)
・保証 長期保証の問題 (→4.)
③ 具体的な議論を行う (アンケートや実験の活用)
例えば、 ②段階で、 一部からクラック等の訴えが出た場合、 とりあえず全戸アンケート等を実施する (本調査の要否、 調査箇所の絞り込み)。 補修段階で追加補修が次々  出てくるよりはまし。
例えば、 ②2) 段階で、 「現実に工事が可能か」 とか 「はつり工事がうるさくて工事期間居住できない」 等の質疑が出た場合、 抽象的に議論しても意味無し。
⇒ 施工業者にほんの一部やらせてみる (実験)。 その結果で判断 (アンケート)。
④ 瑕疵補修と補償・保証の分離して議論を行う
・補修工事前に一括して合意できれば良いのだが、 現実にはなかなか困難。
* ほとんどの事例で、 この点が自主交渉の決裂の原因。
・瑕疵補修工事 (Ex.雨漏り等) は早急に施工させる必要ある。
・曲がりなりにも瑕疵補修工事が達成できれば、 相互にある種の信頼感醸成される。
★ なお、 この点について、 補修工事前は 「補償保証を調停で誠実に話し合う」 としていた業者 (新井組です) が、 補修工事後は約束を反古にした例を経験した。 少なくとも、 補修工事前の総会決議の段階で、 中間的な念書をとるという 「保険」は必要かも知れない。

4. 課題
以上は現場で右往左往しながら考えてきたほんの雑感に過ぎない。 あんまり自信もない。
その上、 上記では取り上げなかった、 多くの問題も課題として残っている。
① 訴訟提起への壁が交渉の幅を狭くしている。
損害賠償請求について管理組合の原告適格が裁判上認められないので、 交渉が尽きれば訴訟という通常の手段が極端に使いにくい。 これが業者側から足元を見られる要素となっていることは厳然たる事実である。
② 超長期保証の問題
マンション交渉での 「保証」 問題は、 理論的には1)単純な保証の問題と、 2)瑕疵補修により長期修繕費用が増加する場合への対応、 に区別できる。
1)について、 馬鹿な事業者は 「我が社が存続する限り保証します」 等と口走ることがあるが、 例えば50年の超長期保証は学説的に困難である (通説では10年が限界。品確法20年反対解釈)。 こんな示談書で将来有効性を争われないだろうか。
2)について、 10年の長期修繕ごとに補修させ、 その度保証を取り付け更新するということにすれば前記問題をクリアできる。 しかし、 事業者側がそのような超長期拘束を望まないことが多く、 金銭的一括解決の意向が意外に強い。 この場合、 長期修繕増加分の金額評価 (建設単価は玉虫色) や何回分かの修繕費用を前倒しで支払うため中間利息控除等の問題が生じる。 (以上)
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