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欠陥住宅から見えたこと~被害防止のために

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黒田 七重(北海道・欠陥住宅を考える会)

《 「欠陥住宅を考える会」 の設立と経過》
当会の設立は1981年12月。 動機は、 新築した私宅のクレームの交渉が難航したこと、 被害救済の公的機関が皆無であったことからです。 被害者数人と知り合い、 まずは悪質業者の糾弾から始めることにしました。
運動の目標は
1 建築の被害者には、 欠陥の正確な把握 と、 自力解決のためのアドバイスや援助 によって、 解決への道を探る。
2 建築予定者には、 欠陥の事例を通して 住宅業界の実態を認識し、 建主としての 常識的知識を学んで賢い判断力を養い、  耐久性能に優れた住宅づくりに努める。
3 建築士・施工業者には、 専門家として の不断の努力と誇りをもって、 当会が目 指す高性能な住宅を建築し、 誠実で技術 の優れる業者に対しては協力を図る。
当会発足当時、 同業者の悪行の償いにと、 ボランティアで被害調査を申し出下さった建築士さんがおり、 そのご助力によって三年間程は、 被害者救済に奔走しました。 その後産学共同研究によって、 結露被害改善の工法が確率、 当会も建築予定者のための教育に運動を転換し、 現在に至っています。

《住宅の欠陥 (一部スライド利用)
・基礎・構造の関係
△不動沈下△基礎コンクリートの地中の 深さが凍結深度より浅く、 家の一部や塀 が凍上△屋根の積雪荷重で構造の柱が座 屈し壁がふくらんだ△木工事の不良
・室内が契約に反して寒い。 結露・カビ発 生
・排水管設備のずさん工事 (浴室・台所等)
最近発生している被害には、 台所流し台の床下配水管から、 垂れ流しとなって土に染みこんだ排水が腐敗し、 有害ガスが発生したもの。 床下防湿の不良工事に何らかの原因が加わり、 やはり汚染ガスが発生。
いずれも住人は自宅から避難。 1件は業者が買い取り他は交渉中。 なお私宅の欠陥と裁判については、 小著 「裁判官は建築を知らない!?」 に詳しいですが、 不同沈下の他に柱・小屋組み等の手抜き工事で、 地震の際には倒壊のおそれあり、 と建て替えの必要性を、 判決も認めました。 しかし現に居住しているのだから、 使用価値・交換価値が存在すること。 また民放634・635両条但し書きの主旨に照らして、 建て替えに要する費用のすべてを要求するのは妥当でない、 という理由で、 損害賠償請求額の約3分の1の額だけ認めるものでした。
不同沈下が大きく、 ゆがんだ屋根からの雨漏り、 窓からは雪が吹き込むというお宅がありましたが、 新居を捨てて借家に移るには、 通学・通園にローンの支払い更に家賃と、 容易ではありません。 この住宅は交渉の末、 建て替えていただきましたが…。
居住しているから、 とか家の形をしているから価値が存在する、 といえるものでしょうか。 建築関係法規は何のためでしょうか。 法治国家であるからこその司法。 法や世の常識を軽んじては、 司法の存在価値も軽くなります。

《欠陥住宅発生の原因①》
「住宅の品質確保促進法」 (「品確法」) が発表されるや、 建主にわかり易いのは10年保証。 早速消費者受けを狙ってか“品確法の先取り”と、 保証期間20年・30年を唱える業者が、 新聞記事を飾りました。
ある国で 「この住宅は何年位もちますか、 建物はメンテナンス次第で100年も200年ももたせるもの。 日本は建て替えが早いですね」 と。 大恥をかいたと住宅視察者の報告でした。
建物の寿命や価値は、 構造等の基本性能が確実なことと不断の心配りや手入れ。 保証期間の長さが建物の質を保証するものではないことに、 建主は目覚めてほしいものです。 雨露や寒さを凌ぐだけなら、 仮設住宅でも20年位容易でしょうし、 新築住宅に重大な欠陥があったとしても、 欠陥に気づかず天災にも遭わなければ、 素人の悲しさ、 “知らぬが仏”のまま住み続けられるのも、 住宅です。
この目まぐるしい世情、 大企業とて明日の命は不明。 20年保証の前に人の財産づくりに対する真摯な誠意と技術能力こそが、 本物の保証です。
よく欠陥住宅発生の主な原因は、 設計・施工一貫の建築システムが問題なのだ、 という意見が幅を利かせています。 今私はれっきとした建築士事務所に対して、 設計と監理の欠陥を指摘、 補修工事の交渉中ですが、 施工業者と相談しながら造ったと、 恥ずかし気もなく弁解し、 業者もまたあ、 うんの協力態勢です。
建築士事務所の多くは、 建築業者の下請け業務で経営を維持しているのだ、 とか肝心の強度よりデザイン志向が強いとか、 建主にとっては芳しくない噂も耳に入ります。
勿論技術能力・責任感共に優れた方もいらっしゃいますが、 欠陥住宅問題は別格。 被害調査は時間がかかって割に合わず、 もしかの裁判の鑑定書作成は面倒、 証言も避けたい。 そして折角の証言に不信を募らせる被害者もまた少なくない (期待過多なのか?) のです。
どうも現状では、 建築士事務所との設計・工事監理委託契約が、 欠陥防止の確証とはならず、 資格上の一般論のようにも思われます。 要は建築士資格も人次第ということでしょうか。

《欠陥住宅発生の原因②》
“欠陥住宅110番”発動のおかげで、 マスコミも頻繁に被害状況を取り上げ、 建主に注意を促していますが、 発生原因やその後の経過についてまでは言及しません。
住居は、 人間が人間らしく暮らすための基盤だからこそ、 人権なのだといわれる所以ですが、 文明国群の中で国民の住宅に欠陥が多発しているのは、 わが国だけとか。
わが国の憲法では、 社会福祉・社会保障義務の中に、 国民の生存権としての文化的生活権を認め、 財産権を保障しています。 建築基準法がこれを受けていることは、 第一条の目的に明らかです。
ところが、 政府が住宅建築を推進した主目的は、 外圧をかわすための内需拡大や景気浮揚など、 経済政策の手段に利用したことは衆知の事実です。 さらには建築業界との馴れ合い政治の申し子として、 利に敏く職業倫理に乏しい業者が跋こ蔓延したのは必然の理。 欠陥住宅の増発もまた必然でした。
政治の都合で、 融資拡大や利下げの餌で、 持家願望を煽動し利用するのは、 国民の人権を軽んずる以外の何ものでもなく、 その故にこそ、 長年に亘って被害者を放置してきた、 最大の理由ではなかったでしょうか。
欠陥住宅発生の根本原因に蓋をしたまま、 一見恰好の良い 「品確法」 が施行されたとしても、 その実効に疑わしさは拭いきれません。

《欠陥住宅発生の未然防止には (私見)》
1 建築依頼側の、 自己責任等の意識改革が必要ですが、 これは教育以外にはムリ。
2 司法の方々には、 裁判における厳しい判決、 あるいは正義感をもって糺していただくことだけが、 詐欺に等しい手抜きやずさん工事の横行を防ぐために、 唯一実効性ある期待できることです。
3 すべての住宅建築に対する行政の確認業務の強化 (設計図書の精査) と、 造り手側から純粋独立し、 技術能力に優れたものに特別の権威を附与する検査員制度は、 欠陥工事防止には必要不可欠。 はかない希望です。

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