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欠陥住宅被害全国連絡協議会の活動報告 事務局長 吉岡和弘(宮城・弁護士)

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第1 欠陥住宅被害全国連絡協議会の設立に至る経緯
1995 (平成7) 年1月17日5時46分、 兵庫県南部に発生したいわゆる阪神大震災は、 死者5420人、 全壊家屋8万4421戸、 半壊家屋7万5388戸、 一部破損4万2397戸という被害を発生させた (平成6年度消防白書)。 警察発表では、 死者の89%が倒壊家屋等による圧死と報告された。 にもかかわらず、 建築界からは期待した程には建物の安全性に対する議論、 とりわけ倒壊建物が所定の安全性を備えない手抜き・欠陥住宅ではなかったのかという視点からの追及の声はあがらなかった。 そうした中、 日本弁護士連合会消費者問題対策委員会 (当時の委員長・木村達也弁護士) が同委員会内に土地・住宅部会を創設し、 96年3月14日に欠陥住宅被害110番を開催したところ702件もの相談が寄せられ欠陥住宅被害に悩む人達が建築士や弁護士らの協力が得られず泣き寝入りしている実態が浮き彫りにされた。 また、 同年5月18日にはシンポジウム 『欠陥住宅被害を考える』 (パネラーには澤田和也弁護士、 千代田区・加藤哲夫氏、 明大・中村安幸先生、 上野勝代・京都府立大教授) を開催したり、 欠陥住宅被害の根絶に向けての米国のインスペクター制度 (中間検査制度) を視察したり、 建築基準方改正問題に消費者の立場から立法低減等を行うなど活発な活動を行った。 しかし、 建築士や学者、 弁護士らが被害者と手を結んで全国的な被害救済ネットワークを作っていくには日弁連という枠内で様々な制約や限界もあり、 この際、 欠陥住宅問題に関心のある方々に呼びかけ、 全国的な連絡会を作り、 日弁連とは事実上車の両輪の如く活動しあう組織が必要ではないかとの声が強まった。
そこで、 早速、 同委員会の弁護士有志130な、 学者20名、 建築士19名が呼びかけ人となり、 全国協議会の設立の呼びかけを行い、 96年12月14日、 阪神大震災の傷跡も生々しい神戸で欠陥住宅被害全国連絡協議会は産声をあげるに至った。

第2 欠陥住宅被害全国連絡協議会の活動内容
96年12月14日に開催された第1回大会 (神戸) では、 第1部として、 協議会の結成記念シンポジウム 「欠陥住宅被害を救済するために」 を行った。
まず、 建築家の伊藤學先生からは 「欠陥住宅問題の現状と今後の課題」 と題して、 欠陥住宅被害の発生要因、 被害救済のポイント等の講演を、 河合敏男弁護士からは 「欠陥住宅紛争処理のマニュアル」 と題して、 弁護士として被害救済に取り組む際のノウハウ等の講演を、 建築家の鳥巣次郎、 村岡信 先生には 「欠陥住宅調査と鑑定の具体的方法」 と題して、 建築家としてどのような視点で欠陥を暴き裁判官に判りやすく説明する鑑定書を作るべきかについての講演をそれぞれ頂いた。
次に第2部では全国協議会の規約、 役員、 活動方針を討論し、 代表幹事には永年消費者の立場から住宅問題の研究にあたってこられた上野勝代・京都府立大教授に無理を承知で就任を依頼し、 吉岡事務局長らに役員を専任して全国協議会は活動を開始しはじめた。

97年3月29~30日に開催された第2回大会 (仙台) では、 開催に先立ち、 プレシンポ 『欠陥住宅調査鑑定の頼み方・頼まれ方』 と題して澤田和也弁護士と鳥巣次郎一級建築士が初心者向けに欠陥住宅被害の救済の手法を判りやすく講演願った。
その後、 木村達也弁護士と川添佳洋子一級建築士が司会者となり、 田中峯子弁護士と大川照夫一級建築士に欠陥事例研究1 「鉄筋コンクリート」 を、 斎藤拓生弁護士と平本重徳一級建築士に欠陥事例研究2 「在来軸組工法」 をそれぞれ報告願った。 翌日は建築基準法改正問題について全員で意見交換を行った。 出席者は80名であった。

97年7月5~6日に開催された第3回大会 (福岡) では 『安全な住宅に居住する権利の確立を目指して』 をテーマに、 明治大・中村幸安先生から 「あなたの家は大丈夫?住宅安全のチェックポイント」 と題する講演を頂いた。
その後、 幸田雅弘弁護士の蓑原信樹一級建築士から 「設計変更による欠陥の発生」 と題する報告を、 山上知裕弁護士から 「四会連合約款の問題点」 と題する講演をそれぞれ頂いた。 また、 建築基準法の改正問題についての討議が行われた。 この大会は140名もの参加者を得て盛況に終わった。

第4回大会 (東京) は、 日弁連主・建築基準法改正シンポの前日の97年11月28~29日に開催された。 建築基準法の改正問題につき、 意見書を作成すべく議論がなされた。
その後、 成城大・本田純一教授にはドイツにおける住宅関係法の講演を頂いた。
また、 大阪弁護士会の秋山弁護士が阪神大震災で倒壊した建物につき画期的な勝訴判決をとられたことからその報告をお願いした。
翌日、 河合弁護士と稲石建築士から事例不お国を頂いた。
また、 岩城弁護士から 「関西ネット」 の発足に至るノウハウの報告を頂いた。

98年4月25~26日に開催された第5回大会 (京都) では、 大会に先立って欠陥住宅京都ネットの設立総会が行われ、 その後、 大会では平野憲司建築士から 「木造3階建住宅問題」、 吹上晴彦建築士から 「シック這うし症侯群」、 鈴木覚弁護士から 「欠陥住宅被害の判例研究」、 斎藤拓生弁護士から 「日弁連・イギリス・ドイツの住宅法制視察報告」、 木村孝弁護士から 「欠陥住宅被害救済の手法」 についての事例報告を受けた後、 横尾義貫先生 (日本建築学会名誉会員・元会長・京都大学名誉教授) から 「木造住宅の諸問題」 の講演を頂いた。
その後、 京都ネットの計らいで木造住宅の建築現場視察ミニ・ツアーが行われ、 大変充実した大会となった。

98年11月14~15日に開催された第6回大会 (和歌山) もまた、 大会に先立ち、 欠陥住宅和歌山ネットの設立総会が行われ、 その後、 「住宅性能表示保証法案」 についてのパネルディスカッションを行った (パネラーは伊藤學・島津民男・斎藤拓生の各氏)。
その後、 畑中潤弁護士から日弁連第3回目の欠陥住宅110番の結果報告、 各地のネットの報告、 岩城穣弁護士から 「監理放棄建築士問題」 で建設省が懲戒処分を行ったことなどについての報告、 澤田和也弁護士から 「名義貸し建築士に損害賠償責任を認めた判決報告」、 藤島茂夫一級建築士から 「鉄筋コンクリート等、 中高層建物の欠陥を見抜く」 と題する講演を頂いた。

そして、 99年5月29~30日には第7回大会が広島市で行われることになっている。 建基方改正後の政省令制定等の動きや建築物の安全性の実現にむけて堺市の建築行政の取り組みに学ぶなど盛り沢山の企画が予定されている。

第3 今後の活動について
全国協議会が発足して2年半が経過した。 この間、 前述したとおり、 様々な活動を行い、 関西、 京都、 和歌山、 北海道・東北に各ネットワーク組織が作られたほか、 今後も各地でネットワークが作られようとしている。 こうした全国協議会の活動は、 欠陥住宅被害に悩む方々の駆け込み寺になるとともに、 欠陥住宅問題の世論を喚起することに大きく寄与したものと考えている。 今後、 益々、 協議会の役割が重視されるものと予想される。

私たちは、 更に一層、欠陥住宅被害の予防と救済に取り組み、消費者が汽笛で安全な住宅を取得できる社会環境を実現すべく、理論的研究を深めるとともに、被害の予防と救済に向けて様々な活動の展開が望まれている。

(欠陥住宅全国ネット機関紙「ふぉあ・すまいる」第1号〔1999年5月20日発行〕より)

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