弁護士 江野 栄(秋田) |
(株)秋田県木造住宅は、 首都圏における秋田杉の販売拡大を図るため、 秋田県や地元銀行らが共同出資して設立した第三セクターです。 その第三セクターが、 首都圏で土地を買い漁って宅地造成をし、 建売住宅を販売するなど不動産開発業者まがいのことに手を染めるようになりましたが、 遅れてきた者の常で、 宅地にするには不適な土地をつかまされるなどして、 結局、 経営が悪化し、 悪質な手抜き工事をするようになってしまいました。 同社が、 史上稀にみるほどの、 酷い欠陥住宅被害を多数生み出したことは、 マスコミにより繰り返し報道されているとおりです。 同社及び子会社(株)秋住は、 1998年2月に破産宣告を受け、 倒産しましたが、 出資者であるとともに実質的に経営を支配していた秋田県らは責任をとろうとはしませんでした。 しかし、 同社らが秋田県の信用を最大限に利用して大々的に広告宣伝してきており、 それを信じて住宅を購入してしまった被害者にしてみれば、 そのような秋田県らの態度には納得のできるものではありませんでした。 そこで 17棟の住宅を購入した被害者らが立ち上がり、 同年8月, 秋田県及び銀行並びに第三セクターの役員らを被告として欠陥住宅の被害につき総額7億円余りの損害賠償請求訴訟を秋田地方裁判所に提起しました (弁護団は, 団長吉岡和弘、 狩野節子、 私の3名)。 本件訴訟は、 形式的には出資者に過ぎない自治体等の責任を問うため、 ①商法 23条の名板貸責任、 ②共同不法行為、 ③法人格否認の法理など様々な主張を行い、 その立証のため優に背丈を越える証拠を提出する困難なものでしたが、 提訴から約3年半を経てようやく、 本年3月に総額2億 450万円の支払を受ける和解をするに至りました。 法律構成の難しさを思えば、 本件和解は実質勝訴の成果を挙げたと評価して差し支えないように思えます。 しかし、 糸賀さんの報告にもあるように、 本件訴訟で最高裁を通じて(株)日本建築学会から推薦された鑑定人らにより実施された鑑定は、 補修方法の選択や補修費用の積算の点で業者寄りと評価せざるを得ないもので、 建築関係訴訟委員会による鑑定人推薦システムの問題点が浮き彫りになったと言えます。 この点は、 岡山大会の報告レジュメに詳しく述べましたが、 建築ジャーナル8月号 22頁にも、 ほぼ同様の内容で再掲されておりますので、 興味のある方はご覧になってください。 |
秋田県木住訴訟の和解について 秋田県木住訴訟和解報告 江野 栄(秋田・弁護士)
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