1995年1月に起きた阪神淡路大震災は、 甚大な人的・物的被害を発生させ、 住宅の構造上の安全性欠如はもはや放置することはできず、 欠陥住宅被害の根絶が急務であることをわれわれに改めて認識させました。
そのような状況のなかで、 当協議会は、 欠陥住宅被害の根絶を願う弁護士、 建築士、 研究者、 一般市民が結集して、 1996年12月、 被災地神戸で結成されました。
設立以後、 年間2、 3回のペースで全国各地で大会を開催し、 今回の北九州市における大会は第10回となります。 当協議会の会員には、 欠陥住宅問題に取り組んできた建築士、 弁護士が多数おり、 これまでの大会においても鑑定書の書き方、 鑑定調査の方法、 鑑定依頼の仕方などのテーマを繰り返し取り上げて、 議論を深めてきました。
ところで、 2000年に入って、 東京地裁や大阪地裁では、 欠陥住宅訴訟においては裁判所鑑定を重視する方向で議論がなされ、 その結果が判例雑誌にも掲載されています。
しかしながら、 当協議会内では、 裁判所鑑定の必要性は否定しないものの、 鑑定に過大に依存することは裁判所の職責を放棄するものであり、 とりわけ、 当該事案についての十分な調査を行ったうえで、 鑑定判断の基準を明確にした私的鑑定がなされている場合にまで裁判鑑定を行うことは、 屋上屋を架すものであって無駄な費用と時間を費やすものであるという強い批判があります。
当協議会は、 このような観点に立ちつつ、 今後の鑑定のあり方及び鑑定人選任のあり方について、 下記のとおり意見を表明するとともに、 更なる検討を要請するものです。
記
1 鑑定人候補者名簿を作成するにあたっては、 きちんとしたルールを確立すること。 とりわけ、 鑑定人の中立性確保のために、 建設業者から独立した建築士を名簿に搭載するとが必要不可欠であること。
2 鑑定人候補者名簿への搭載にあたっては、 建設業者から雇用されている建築士も加入できることになっている建築士団体には、 推薦依頼をすべきではないこと。
3 鑑定人候補者となった者に対しては、 裁判所と弁護士会が共同で研修会を実施し、特に判断基準の確立に努めるべきであること。
4 鑑定を依頼する際の鑑定費用について、 裁判所としての基準を確立すること。 その際には、 当該訴訟の係争金額と十分にバランスのとれたものになるよう配慮す べきこと。
5 欠陥住宅訴訟については、 全件を建築士の関与した調停に回すという考え方が一部で提唱されているが、 当事者双方の主張の隔たりが著しいケースにはふさわしくなく、 裁判所の判断回避との批判には十分に留意すべきであること。
6 建築士に訴訟の早期の段階から関与させて争点整理を進めるべきであるとの考え方が一部で提唱されているが、 結局は関与させる建築士に問題があれば当事者双方の不信を増幅させるだけであるから、 建設業者から独立した建築士を名簿に搭載するルールの確立を先行させるべきであること。
2000年11月25日
欠陥住宅被害全国連絡協議会 第10回大会参加者一同
第10回北九州大会アピール 「裁判所における鑑定及び鑑定人選任のあり方について」
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