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第15回札幌大会の報告と総括 石川和弘 (北海道・弁護士)

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第15回札幌大会の報告と総括
石川和弘 (北海道・弁護士)

1、 本年5月31日、 6月1日の2日間にわたり、 第15回大会が札幌において開催されました。
大会が盛況に終わり、 今後の課題も明確になったものと考えます。 開催地の事務局長として、 皆様に御礼申し上げます。

2、 大会に先立ち、 欠陥住宅北海道ネットの設立総会が行われました。
原始メンバーは弁護士4名、 建築士3名の合計7名と少人数ではありますが、 北海道地区における欠陥住宅被害者にとっての大きな窓口となるようメンバーの意志の確認がなされました。
従前、 北海道ネット準備会として行ってきた勉強会の継続のほか、 相談・受任体制の確立や、 道内の札幌以外の地域の人材の確保が当面の課題となります。   

3、 大会参加人数は120名と事前の予想を超えました。 これは、 当地の一般参加者 (当日申込) の人数が多かったためで、 一般の方のシックハウス問題への関心の高さを表しているものと考えられます。
シックハウス被害については、 大阪と札幌の被害者から報告がなされ、 いわゆる 「欠陥住宅被害」 という概念を超える被害の深刻さ、 悲惨さを理解することとなりました。
中島弁護士 (大阪) の基調報告と房川弁護士 (札幌) の敗訴判決の報告では、 法的な問題点が指摘され、 病像そのもの、 因果関係、 予見可能性等についての立証のハードルの高さが説明されました。
木津田秀雄建築士 (関西ネット) の報告は、 「シックハウスをつくらない建築士としての役割」 であり、 シックハウスについての基本的知識を提供してくれました。 資料添付の 「シックハウス対応年表」 は、 今後、 国を被告とした訴訟 提起の場合には、 その知見論の主張に大いに役立つものと思われます。
田坂圭子氏 (全国消費生活相談員協会・理事) の報告は、 溶出部位非破壊特定法という田坂氏自身が考案した遊離ホルムアルデヒド溶出量の検査方法についての説明であり、 合板に布を一定時間張り付け、 この布を資料として溶出量の検査を行うというシンプルな実験方法であって、 且つ、 実験に要する費用も廉価な素晴らしいものでした。
討論の後、 シックハウス被害の救済を求めるアピールが採択されましたが、 その内容は、 シックハウス被害者救済における法律、 医療、 建築などの幅広い専門家の連携の必要性が強調されたものとなりました。
ちなみに、 私自身は、 大会の後に小沢典仁建築士から連絡を受け、 「北海道アトピー環境研究会」 の存在を知りました。 この研究会は、 1998年8月に設 立された団体で、 医師班 (医師4名、 皮膚科、 アレルギー科、 小児科)、 ダニ・カビ・化学物質班 (2名、 うち1名は道立衛生研究所所属)、 建築士 (4名) で 構成され、 今までに調査した24の症例につき、 2000年 (症例1~13) と2003年2月 (症例14~24) の2回に分けて、 冊子を発行している実績のあるグループです。
症例ごとに、 医師班がその症状等を、 ダニ・カビ・化学物質班が菌やVOC濃度を、 建築班が建材や換気等の調査を行っており、 調査の方法も定型化されているように思われ、 経験の豊富さがうかがわれます。
北海道ネットとしては、 今後、 この研究会との連携が必要と考えております。

4、 1日目は、 以上のシックハウス問題のほか、 弁護士費用の敗訴者負担についてのアピール等の採択、 地域ネットの活動報告がなされて終了しました。
2日目は、 まず、 平山建治建築士 (仙台) が 「勝つための鑑定書づくり」 と題して、 補修内容・補修額についての絵を多用した鑑定書の必要性の説明がなされました。 欠陥住宅訴訟においては、 どうしても瑕疵の主張・立証に重点が置かれがちであり、 その反面、 補修内容・補修額についての立証が手薄になりがちですが、 後者についても裁判官に分かり易い鑑定書を証拠として提出する必要があるとの指摘がなされました。
その後、 下村憲一氏 (JIA北海道支部長) から建築士制度の動向、 主として建築士の新たな資格制度についての説明、 斉藤拓生弁護士 (仙台) から 「住宅紛争処理の実務」 (判例タイムス社) の問題点、 鈴木覚弁護士 (仙台) から勝訴判決報告がなされました。

5、 最後に事務局から、 ①補修に関する鑑定書の作り方、 ②シックハウス問題への対応、 ③和解事例集の発行について提案がなされ、 今後、 これらの課題について具体的に詰めていく必要があることが確認されました。

6、 以上のとおり、 充実した大会となり、 今後の課題も明確になりました。
北海道ネットとしては、 次回の長野大会までに何らかの成果をあげてご報告させて頂きたいと考えております。     以上
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